大学課程 発電水力 | |
クリエーター情報なし | |
オーム社 |
・瀬古新助、高居富一、伊藤謙一
水力発電所と言えば、完全に電気工学の範疇のように思えるが、もう一つ関連した工学関係の大きな分野がある。土木工学だ。水力発電所を一度でも見学した人は気づくと思うが、水力発電は、ダムをはじめとした多くの土木技術の集大成でもあるのだ。
本書は、多くの類書のように、電気工学的な視点からではなく、土木工学的な視点から水力発電について解説したもので、3人の執筆者は、全て土木工学の専門家である。
本書は、ダム式、ダム水路式、水路式、揚水式などの様々な水力発電方式の解説、河川流量の測定から始まる水力発電所の計画、水力発電所に付属する様々な土木設備を主体としながらも、水車、発電機などの電気、機械設備に至るまでの水力発電所を構成するすべての設備が一通り分かるようになっている。また、最終章では、水力発電以外の発電方式についても簡単に触れられているが、水力の専門家も常識的に知っておきたいような基本的なことに絞られているので、詳しく知りたい方は、それぞれの分野の専門書を読むと良いだろう。
少し古い本だが、水力発電技術は細かい部分での改良はあるものの基本的には枯れた技術である。一度作れば、おそらく50年以上は使うようになるだろうから、決して本書の内容が現実の設備から外れたようなものではない。この分野に興味がある人、仕事で水力に関わっている人は、一度目を通しておいても損はないだろう。ただし、土木的な視点から書かれたものなので、近年最も技術的な進展が著しい、制御に関することは書かれていないので念のため。
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※初出は「風竜胆の書評」です。