文理両道

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書評:パンドラの鳥籠 毒草師

2016-08-03 20:40:24 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
パンドラの鳥籠: 毒草師 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

・高田崇史

 QEDシリーズのスピンオフ作品として始まった「毒草師」シリーズもこれが3作目。主役はもちろん、毒草師・御名形史紋だが、語り手はこれまでのシリーズ作品と同様に、マンションで彼の隣の部屋に住んでいる、西田真規という医薬品業界向けの出版社「ファーマ・メディカ」の編集部員だ。そしてこの巻では、前作に登場した、毒に対して耐性のある解毒斎体質を持つ神凪百合が、御名形の助手として、いっしょに行動している。

 今回御名形は、京都に住む美貌の女医・星川涼花から、2年前に丹後半島で行方不明となった叔父についての調査を行うことになる。そこには「魔女の鳥籠」と呼ばれる廃墟となった洋館があり、辺りでは不気味な首なし殺人事件が起こっていた。

 ところで、東西の開けてはいけないものを挙げるとすれば、パンドラの箱と浦島太郎の玉手箱だろう。タイトルのパンドラはもちろんギリシア神話に出てくるこのパンドラの箱から来ているのだが、実際に本作の話の中心となっているのは、浦島太郎伝説のほうだ。この浦島太郎伝説、ただのおとぎ話かと思っていたが、これだけ奥が深いものだったとは意外だった。

 なんと浦島太郎の元となる話は、記紀や丹後国風土記にも載っているような古いものだという。この浦島伝説が、神功皇后と武内宿禰の話に結び付き、羽衣伝説や織姫、彦星の話などに繋がって、推古天皇と蘇我氏の話にまで発展していく。

 相変わらず蘊蓄は凄いが、結局玉手箱ならぬ玉匣の中身にどれだけの重要性があるのかよく分からなかった。また、御名形が、担ぎ出された理由も結末からは弱い気がする。論理的な謎解きよりは、事件の異常さと、蘊蓄の凄さがめだっている感じだ。でもあの蘊蓄が読みたくて、次の巻も買っちゃうんだろうなあ。

☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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