文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

孤道

2021-12-09 08:27:38 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 本書は、内田さんが毎日新聞に連載していたものだが、執筆途中で脳梗塞で倒れて休載を余儀なくされ、執筆継続が困難になったため、解決編を公募したという作品である。残念ながら、内田さんはその後83歳で亡くなられたのは、ファンの一人として残念な限りである。

 さて、本書の内容だが、熊野古道にある牛馬童子が首を切られた事件に端を発する。そして首は行方不明。この事件は2008年に実際に会った事件だ。このように内田さんは、本当にあった事件をストーリーに絡めて展開していく。但し、この作品では、その事件以後の2回目と言う設定である。

 牛馬童子と言うのは、熊野古道の中辺路にある50cmくらいの石像で、花山法皇の旅姿を模したものといわれている。作られたのが明治時代だそうだから、歴史的な価値はあまりない。しかし、姿がかわいらしいので人気スポットになっているという。

 そして、田辺には、浅見の後輩の鳥羽映祐が大毎新聞田辺通信部特派員として赴任していた。その鳥羽が普段世話になっているのが田辺市役所の鈴木真代。その夫の義弘が大阪の八軒家で殺される。八軒家は、熊野古道の起点となるところだった。鈴木家は、昔の大地主だった。しかし、浅見が鳥羽に対して先輩風を付加しているような感じがするのが面白い。

 この鈴木というのも、熊野三山にゆかりのある名字らしい。俗に「佐藤、鈴木はなんとやら」というが、高校までは廻りにどちらの名字の人もいなかった。大学になってやっと、鈴木と言う名字と巡り合えたくらいである。

 それはさておき、解決編を公募した位だから、この巻は問題提起編という性質が強い。この巻で登場した真の継体天皇陵とされる今城塚古墳。京都大学の地震観測所を設置する際に見つかった藤原鎌足の墓とみられる阿武山古墳と、それを巡る地震観測所と考古学研究室との争いなど、色々と種は巻かれているようだけど、解決編でどのように纏められるのか楽しみ。

 

 

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