文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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半七捕物帳 61 吉良の脇指

2021-12-05 12:23:58 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 

 江戸時代の煤掃きは12月13日と決まっており、これは江戸城の煤掃きがこの日に行われたことか習慣になったらしい。この次の日の14日が赤穂浪士が吉良邸に押し入った日である。

 その吉良上野介が使っていた脇差。これがかたき打ちに使われたというのが、今回半七老人の語る話だ。半七老人に言わせると、

「それが又おもしろい。吉良の脇指がかたき討ちに使われたんですからね。物事はさかさまになるもので、かたきを討たれた吉良の脇指が、今度はかたき討ちのお役に立つ。どうも不思議の因縁ですね。」


ということらしい。

 今回の話は、五百石取りの旗本福田左京に起こった事件である。笹川という仕出し屋を兼ねた魚屋の娘お関は、ここに妾奉公に出ていたが、本妻が無くなったため、今ではお関が本妻同様になっているという。

 それだけなら特に事件でもなんでもないのだが、この福田家の主で旗本の左京が、お関と共に、中間の伝蔵という男に殺された。それも左京の枕元にあった、吉良の脇差を使ってだ。伝蔵は女中のお熊と密通をしており、本来は両者ともクビになるのだが、伝蔵は小才覚があるということで残されたらしい。

 実は福田左京は養子で、本家は隣にある高木という旗本。呆れたことに伝蔵、子の高木の家にやってきて、主殺しが表向きになれば、福田の家はとり潰されると恐喝しようとしたのだ。この他にも、ずうずうしくも昔馴染みを強請ろうとする。そして、お熊が奉公して道具屋の遠州屋才兵衛が殺される。もちろん伝蔵の犯行だ。

 そして、伝蔵に鉄槌を下すのが、お関の弟の鶴吉で、姉のかたきを討つために使われたのが、曰くのある吉良の脇差というわけである。しかし、伝蔵のクズっぷりもここまでいくと見事なものだ。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

コメント
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