文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

リーダーの「やってはいけない」

2019-04-18 11:01:01 | 書評:ビジネス
リーダーの「やってはいけない」
吉田幸弘
PHP研究所

 本書は、リーダーを、「できないリーダー」と「できるリーダー」に分けて、「仕事の進め方」、「部下育成」、「しごとの任せ方」、「コミュニケーション」、「叱り方・ほめ方」、「会議・面談」、「休み方」の観点から、こういうことはやってはいけない、できるリーダーならこうするということを述べたものである。

 「はじめに」の部分にこのようなことが書いてある。
 「丁寧に計画を立てる」
 「チームでミスゼロを目指す」
 「いつでも相談してくれ、と部下に言う」
 実はこれらは、「できないリーダーの共通点」だそうだ。そんなバカなと思う人は、本書を読んでみることを勧めたい。おそらく殆どの人はこれらに納得するものと思う。

 特に賛成したいのは、人材育成に関する部分だ。「人事のスキルマップに基づき育成する」ことはやってはいけず、できるリーダーは「部下と一緒に独自のスキルマップを考える」というものである。大体が人事というところは他部門の仕事を理解なんかしておらず、どうせろくなものは作れない。特に技術関係の部署だととてもそんな能力はないだろう。たぶんそのスキルマップの元ネタは他部門から集めたもので、現在では古新聞になっているかもしれない。そんなスキルマップに基づいて人材育成なんかできる訳はないのだ。

 ちょっと気になった部分がある。できない部下を冷遇するとできる部下まで辞めていく。しかし、あまりできない部下に時間をかけすぎるのも問題であり、実はできる部下ほど内心ではリーダーの指導を求めているとして、次のような例を挙げている。できる部下が相次いで退職したときのこと、その中で一番できるS君が、退職の際に「少しは私のことも見てほしかった」と言ったそうだ。(p123)「お前は子供か!?」と思ってしまう。きっと中途半端にできる部下だったのだろう。私など、評価さえきちんとしてくれたら、後は放っておかれたほうがいいというタイプだが、人間にはいろいろなタイプがいるのでそれに応じた対応をしないといけないということか。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

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きゃくほんかのセリフ!

2019-04-18 09:00:00 | 書評:小説(その他)
きゃくほんかのセリフ! (ガガガ文庫)
ますもとたくや
小学館

 この作品の主人公は、竹田雲太という売れない脚本家。ネットでは「クソ脚本」の罵声が溢れる。ある日彼の前に門松佐江という小学生の少女が現れる。佐江は雲太の亡くなった親友・門松近雄の妹だった。彼女は雲太に兄が投資してた金を返せという。なんとその額100億円。

 雲太は「メルヘン探偵の事件簿」(略して「メル探」)の脚本を書くことになるのだが、これがなかなか大変。この本の縦糸は、主人公の雲太が様々なトラブルにめげずに、脚本を完成させるところ。そして横糸は、脚本というものがどうやってできるのかというものだろう。

 それにしても、多くの人間が横槍を入れてくるものだ。いろんな人間が好きなことを言ってくる。プロデューサー、原作者、監督、スポンサーなどが好きなことを言ってくるが、脚本家はそれに対応しないといけない。結果、「もう原作の原型無くなってない?」(p192の佐江のセリフ)ということになってしまう。よくドラマなどで原作とかなり変わっていることもあるが、こういう大人の事情があるのかと納得。

 こんな人とは絶対に付き合いたくないと思ったのは、プロデューサーの辻骨黒道と原作小説の出版社の編集者である朝比奈瞳。前者は悪名高い極道プロデューサーで、脚本の二次使用料欲しさにあくどいことばかりしている。今回も何かを企んでいるようだ。後者は原作者のゴリゴリの信者。原作を聖典のごとく崇拝し、わずかな変更も許さない。それが原作者と相談した上ならいいのだが、脚本を読みもせずに、独断でダメ出しをやってしまう。

 ところで、佐江はなんとも行動力のある小学生だ。おそらく彼女は雲太に亡き兄を見ていたのだろう。そして雲太も佐江に救われる。雲太の方でも、佐江に親友の面影を見出したに違いない。著者も脚本家のようだが、噺の方はおそらく多少の誇張はあるにしても(実際この通りだとしたらちょっと怖い)、どのように脚本がつくられるのか、作品が再放送されたりしたような場合には、脚本家には二次使用料が入ることなどが分かってとっても興味深く読むことができた。

☆☆☆☆

 

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