文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

きゃくほんかのセリフ!

2019-04-18 09:00:00 | 書評:小説(その他)
きゃくほんかのセリフ! (ガガガ文庫)
ますもとたくや
小学館

 この作品の主人公は、竹田雲太という売れない脚本家。ネットでは「クソ脚本」の罵声が溢れる。ある日彼の前に門松佐江という小学生の少女が現れる。佐江は雲太の亡くなった親友・門松近雄の妹だった。彼女は雲太に兄が投資してた金を返せという。なんとその額100億円。

 雲太は「メルヘン探偵の事件簿」(略して「メル探」)の脚本を書くことになるのだが、これがなかなか大変。この本の縦糸は、主人公の雲太が様々なトラブルにめげずに、脚本を完成させるところ。そして横糸は、脚本というものがどうやってできるのかというものだろう。

 それにしても、多くの人間が横槍を入れてくるものだ。いろんな人間が好きなことを言ってくる。プロデューサー、原作者、監督、スポンサーなどが好きなことを言ってくるが、脚本家はそれに対応しないといけない。結果、「もう原作の原型無くなってない?」(p192の佐江のセリフ)ということになってしまう。よくドラマなどで原作とかなり変わっていることもあるが、こういう大人の事情があるのかと納得。

 こんな人とは絶対に付き合いたくないと思ったのは、プロデューサーの辻骨黒道と原作小説の出版社の編集者である朝比奈瞳。前者は悪名高い極道プロデューサーで、脚本の二次使用料欲しさにあくどいことばかりしている。今回も何かを企んでいるようだ。後者は原作者のゴリゴリの信者。原作を聖典のごとく崇拝し、わずかな変更も許さない。それが原作者と相談した上ならいいのだが、脚本を読みもせずに、独断でダメ出しをやってしまう。

 ところで、佐江はなんとも行動力のある小学生だ。おそらく彼女は雲太に亡き兄を見ていたのだろう。そして雲太も佐江に救われる。雲太の方でも、佐江に親友の面影を見出したに違いない。著者も脚本家のようだが、噺の方はおそらく多少の誇張はあるにしても(実際この通りだとしたらちょっと怖い)、どのように脚本がつくられるのか、作品が再放送されたりしたような場合には、脚本家には二次使用料が入ることなどが分かってとっても興味深く読むことができた。

☆☆☆☆

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 風立ちぬ | トップ | リーダーの「やってはいけない」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

書評:小説(その他)」カテゴリの最新記事