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文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:非線形科学

2018-01-05 10:17:08 | 書評:学術教養(科学・工学)
非線形科学 (集英社新書 408G)
クリエーター情報なし
集英社

・蔵本由紀

 我々の世界は非線形なるもので溢れている。ここで線形とは、入力が倍になれば出力も倍になるようなシステムであるが、自然の本質は非線形なのである。

 例えばバネを考えてみよう。普通使われるような範囲内では、加えた力に比例してバネは伸びる。この範囲ではバネは線形である。

 しかし、どこまでも線形という訳ではない。引っ張り続ければ、あるところで、弾性が無くなり伸び切ってしまうか、ちぎれてしまう。当然この状態ではバネは非線形であることになってしまう。

 ところが、この非線形の世界が意外に豊潤であることが分かって来た。これを研究するのが非線形科学である。本書はそのような非線形科学の一端を紹介する入門書である。

 非線形なことが原因で現れる代表的なものにカオス現象がある。カオス現象とは、決定論的な方程式でありながら、その解が、ほんのわずかな初期値の違いから、予測不能な挙動を行うようなものである。

 例えば、気象学者のローレンツは、次のような簡単な方程式にもカオスが潜むことを発見した。

 dX/dt=-σX+σY
 dY/dt=-XZ+rX-Y
 dZ/dt=XY-bZ

 この他本書には、化学反応が振動するベルーソフ・ジャボチンスキー反応(BZ反応)、振動子間の同期現象などが紹介され、アトラクタなどのカオス研究にとって重要な概念が示される。

 物理学を志す人は、先端科学である素粒子論などを目指すのも悪くはないが、身の回りにはまだまだこのような興味深い現象が眠っていることも覚えておかなくてはならないだろう。姉妹編である下記の本と併せて読みたい。

非線形科学 同期する世界 (集英社新書)
クリエーター情報なし
集英社


☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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