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文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:歌枕殺人事件

2016-05-01 09:19:08 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
歌枕殺人事件 (角川文庫)
クリエーター情報なし
KADOKAWA / 角川書店

・歌枕殺人事件

 この作品は、「歌枕」をモチーフにした、浅見光彦シリーズの一冊である。

 本作のヒロインは、朝倉理恵。浅見家恒例のカルタ会に来ていた東京都の「カルタの女王」だ。父が、3年前に多賀城市にある歌枕の地、「末の松山」で毒殺されている。歌枕を訪ねるのが趣味だった彼の手帳には、「白波、松山を越ゆ」という謎の言葉が残されていた。理恵と一緒に「末の松山」の調査を始めた光彦は、12年前にやはり歌枕を訪ねていた若い女性が、有耶無耶の関で殺害された事件に行き当たる。

 光彦は、かなり理恵のことが、気になっているようだ。彼女が、浜田という大学の助手に接近していることを、かなりやきもきして見ている。ちょっとした喧嘩のような感じにもなるのだが、その挙句が「女は分からない」(p254)である(笑)。

 ところで、事件のほうだが、光彦はかなり核心には迫っているのだが、やはり最後のところで間違えている。今回の解決方法も、いつもの光彦流だ。しかし、「末の松山」に関する異伝をうまく使い、最後に色々な伏線を回収しながらのどんでん返しというのはなかなか面白い。このシリーズは「旅情ミステリ-」とも言われているが、この作品にも旅情がたっぷり盛り込まれている。

 短歌をする人でミステリー好きなら必読の書だろう。歌枕について詳しく書かれているうえ、それをモチーフにしてうまくミステリーを作り上げているのだから。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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