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文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:幕が上がる

2016-03-24 07:57:55 | 書評:小説(その他)
幕が上がる (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社

・平田オリザ

 劇作家、演出家として有名な平田オリザ氏だが、小説としてはこの作品が処女作だ。昨年、本広克之監督、ももクロ主演で映画化もされているので、そちらの方でご存知の方も多いだろう。一言でいえば、高校演劇にかける生徒たちの青春の記録とでもいうのだろうか。

 語り手は、地区大会も突破できない弱小演劇部の部長になった、高橋さおりという女子高生。高校演劇は、まず地区大会があり、次に県大会、ブロック大会と続き最後に全国大会が行われる。だから当初の演劇部の目標は「地区大会突破、県大会出場!」。

 ところが新たに演劇部の副顧問となった元大学演劇の女王・吉岡先生に<「何だ、小っちゃいな、目標」「行こうよ、全国大会」>(p35)と言われたことがきっかけで、演劇部の面々は大きな目標に向かって歩み始める。

 最初は弱小演劇部だったが、演劇部の皆が少しづつ成長しながら、自分たちの演劇を作り上げ、ステップを一段一段登っていく姿が生き生きと描かれている。そしてそれがそのまま、どのようにして演劇を作り上げていくのかという過程がわかるようにもなっているのだ。青春小説ながら、演劇のテキストとしても読めるのである。この辺りはいかにもこの道に精通している作者らしいといえよう。

 また、本作を読むと、高校の演劇部というものがどのような活動をしているか、演劇大会の仕組みがどうなっているのかが分かって興味深い。

☆☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。
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