![]() | 1964年の東京オリンピック開催を情熱で実現した人 フレッド和田勇 (世のため人のため絵本シリーズ1) |
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出版文化社 |
「世のため人のため絵本シリーズ」の第1巻となる「1964年の東京オリンピック開催を情熱で実現した人 フレッド和田勇」(松岡節/文 さかいしん/絵:出版文化社)。
若い人は、東京オリンピックと言えば、2020年に開催予定のものを思い浮かべるだろう。しかし、ある年代以上の者になると、1964年に開催された東京オリンピックを懐かしく思い出すものと思う。
男子体操、レスリングや柔道、そして女子バレーなどでの日本勢の活躍。外国勢も、裸足のアベベのマラソンでの力走、女子体操のチャフラフスカの華麗な演技などは、多くの人の感動を呼んだ。しかし、この東京オリンピック開催の裏で、一人の日系アメリカ人の活躍があったことはあまり知られていないのではないか。
その人の名は、フレッド和田勇。実業家として成功をおさめたが、家が貧しくて、4歳から9歳まで、和歌山の祖父母の家に預けられたり、太平洋戦争が始まったために、厳しい生活を強いられたりと、大変な苦労も経験している。
彼は、日本のために、世界各国を巡り、オリンピック招致に尽力した。1964年の東京オリンピックは、和田さんがいなければ幻に終わったかもしれないのだ。まだまだ日本がそれほど豊かではなかった時代。東京オリンピックの開催は、多くの人に夢と希望を与えた。
通常、和田さんのような人は、伝記では、なかなか取り上げられないだろう。しかし、小さいうちに、このような、世のため人のために働いた人がいたことを知ることは、子供たちの心を豊かにするためには有益に違いない。現代のように、世の中がギスギスしてる時代にこそ、本書のようなものが求められるのではないだろうか。
また、本書は、絵本ではあるが、文章の方もしっかりしており、使用されている語彙の数も割と多い。絵本でありがちなように、本来漢字で書くべきものを、無理やりにひらがなで記述したりというようなことはもされていないが、漢字には、最初に出て来たときに、ふりがなが振ってあったりするので、何度も読んでいけば、知らず知らずのうちに語彙が増えることも期待できるだろう。一人で読むのなら、小学校中学年くらいが良いと思うが、低学年でも、お父さんお母さんといっしょに読めば大丈夫だろう。
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