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「愛に似たもの」 唯川恵 集英社文庫

2015-02-26 | 読書



先に読んだ本が年代的にしっくりしなかったので、これはどうだろうと選んできた。
唯川恵さんという作家について知らなかったが直木賞や柴田錬三郎賞を受けている。実力があって読み外れないだろう。
初めて読む作家は好みにあってほしいと祈るような気持ちと、少しの好奇心が道連れで、読んできた。
女の気持ちをテーマにした8編の短編だった。どれも女(に限った事はないが)の心の奥底の思いだ。どうしようもない日常に蝕まれていったり、気がついていても引き返さない思いが詰まっている、真実に近ければ近いほど、距離を置いて、静視しないでいれば(結婚生活はそのような部分も多いので)出来ないことでもないだろうと言う程度で読んだ。


真珠の雫
男運のない母は、二度目には整った顔立ちの男を選んで、サチはそれを受け継いで生まれた。次の男は保険金のいくばくかの母の金を目当てにして近づき、金がなくなったので消えた、その娘(妹)は不器量だったが、サチがやっと持った店で手伝わせていた。そして気にも留めないほどに見下していた妹にしてやられた。

つまずく
離婚してもフラワーアレンジメントで食べていけた。懇意にしていた花屋の店員が配達の折には、細々した男仕事をこなしてくれたので重宝して可愛がっていた。彼に恋人ができたのも気にならなかったので祝福した。だが彼に頼みたい仕事もまだあったのに、周りの女たちの興味本位の噂が広がった。

ロールモデル
少女の頃から何でも良く出来た友人が居た。理美は憧れをこめてなんでも藍子に尋ねて従ってきた。結婚も子供も。
藍子の夫が亡くなった、藍子がこんな不幸に合うなんて……。
やっと理美が自立し始めたのは優越感か。そのごの理美の変化が怖い。

選択
選択を間違えた。優秀で非の打ち所のない私が……、夫の選択を間違えて、今では実家のものを当てにしたりしている。友人たちより不幸になってしまった。かっての恋人の方が良かった。
女の男を看板にしたプライドは身を滅ぼす。

教訓
とり得もない、目立ちもしない、別に結婚願望もない、だがまわりが婚約だの結婚だ、妊娠だ、子供が出来たと言って来る、フト考えた、祝うだけの人生か。全てを取り戻すのだ!
今付き合っている男と是が非にも結婚したい、経験を生かして、男とは何度か付き合ったがなぜか破局に至ってきた。そのときに言われた言葉を教訓にした。こまごまと、あれもこれも。
遠まわしでは埒があかないと思った今度の男はついに言った「ごめん、ほうっておいてくれ。うんざりだ」

約束
編集プロダクションに勤めて居る幾子は、友人の葉月に得意先の機関紙の表紙のためにイラストを頼んだら、評判がいい。だが葉月は余命宣告を受けて入院してしまった。「頑張る」といって書き続けている。
葉月の夫は何もかも幾子とぴったり会う理想的な男だ。葉月がなくなりその夫と結婚したが、約束どおり葉月の書いた絵を見ることになった。

ライムがしみる
久し振りに馴染みのバーに行った。ママは相変わらず気さくで身の上話などをした。
私は猫好きの男とは別れた。
最近ママの機嫌よく猫の子を抱いてきた。男が出来たらしい。

帰郷
母を見舞いに帰郷した。いい思い出のない故郷、離れるために、母のように生きないために、顔を変えた。自己啓発セミナーにのめりこみ、今はその会の会長の愛人になっている。希望通り母とは違った生き方だ、結婚などはしない。
夫の横暴に耐え、親を介護し、今は入院している母。しかし母のところにはいつも誰かが付き添っている、これは幸せなんだろうか

解説は 
あ!「わたし」のことが書いてある……。

と言う出だしなのだが、読後感はこれと全く違った。
「愛」のようなもの と言う安易な題名も好きににならなかった。ようなものだったらこれはなんだろう。もちろん恋愛小説とはいえないし愛に溢れてもいない。
ちょっとした女の日常、勝手な生き方の典型を切り取っただけと言う感じだった。
「愛」や「恋」について話せばこういうものではなくなるに違いない。
 残念だった。
もう一冊、「雨心中」を買ってきたが、実力を知るには受賞作が良かったのか、決めかねている。


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