空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

予言の島 澤村伊智 KADOKAWA

2022-09-06 | 読書
 
オカルトか、超常現象か、怨霊の仕業か。 悲惨な出来事が閉ざされた島で起きる。恐怖条件がそろっていて期待したが次第に興味が薄れるような結果だった。カドブン夏フェア2022
一度全国を席巻したオカルトブームは、地下鉄サリン事件の後自粛ムードに入った。だがじわじわと火が付きまた予言者に人気が出て、占いや心霊スポットに関心が湧いてきた。
そのころ、22年前には心霊タレントも出てくるようになった。

テレビクルーが預言者の宇都木幽子を伴って、曰くのある瀬戸内の小島に来た。だが幽子は体調を崩し、不気味な予言を残して島を去って二年後に亡くなった。


兵庫在住の友人たち三人で旅行に出ることになった。高校時代の同級生だが、東京にいた秀才の宗作が退職して戻ってきた。死のうとしているところに父親が駆け付けて助け出したそうだ。親心は深い。なんとなく感じた第六感で間に合った。超常現象っぽい雰囲気で始まる。
岬春生は風来坊だが、ちょうど戻ってきて、宗作歓迎の計画は任せろと言った。地元にいる淳は勿論賛成。
春生が選んだ島はかつての流刑地で、ヒキタという男が無残な姿になって山に駆け上って死んだと言われている。大小の山から成りヒキタの怨霊がこもる疋田山には登るなと言われている。

島に渡ってみると明日は人が死ぬ日だと幽子が予言したということで宿を断られる。そこに、よそ者で民宿を開いている男が泊めてくれるという。
幽子の孫という小柄な女性と派手な女と妙に過保護な親子も同宿する。派手な女は幽子を崇拝していて予言は当たると信じ切っていて占い師になっていた。

ただ明日が6人が死ぬと予言された日だった
折悪しく台風の進路が四国から瀬戸内海に当たり、島に着いた頃から風雨が強まってきた。

春夫が出て行ったまま帰らない。淳が探しに行くと海に浮かんで死んでいた。橘という駐在も頭を殴られて死んでいた。
どこの家も戸をぴったり占めて閉じこもり誰も出てこない。
古畑という老人が奇声を上げていた。そばに意識不明の宗作が倒れていた。
彼を宿に連れて帰る。
予言通り次々に死んでいく。
だが幽子の孫は予言を否定して疋田山に登る。淳も後を追っていく。

風が吹き上げてきて人々は山の上の避難小屋に逃げ込む、村人がひしめいていて、伝承は実現する、ヒキタの怨霊が来ると怯えている。

河を渡って山に避難しようとした老人二人が奇妙な死に方をした。これで四人。

村で最後の生徒だった、今では風貌も老いさらばえた古畑は小学校で縊れて死んだ。
これで5人。

やはり幽子の預言は正しいのか、6人目は?


だが古畑を追って来た孫は予言を解説していう。祖母は偽物だった。予言も信じられない。


伝承や祟りなどが伝えられてきた島、古くからある民間伝承だった、そこへ幽子が来て予言を残して死んでしまった。
今その予言が実現に起きている、と怯えている。
流人の話もヒキタの無惨な死にざまも現実なのだ。


ホラーや神秘体験はいつかは死ぬという「死」を背負った人間の(恐怖)心理をうまく乗せて、まだ見ることのない死後の世界を体験させたり、予感させたり、死人と会話させたりする。
現実にはあり得ないような出来事や実現したかのような予言で、信じこませたり恐怖させたりする。
ありえないと言い切ることができない不思議な出来事や力に、学問として科学的な専門知識を持っていても惑わされてしまうこともある。

ひとは自分が「どこからきてどこへ行くのか」と問うことで思考回路に迷いこんでしまうこともおおい、すべては見ても聞いても恐怖なのかもしれない。

だがこの作品を読んでいて、非現実な世界に誘いこもうとする作為に疲れた。作品として時系列や表現に少し距離があり過ぎ、たとえ話にしても、それが今、我に返った読者は信じられるのか。

伝承があったとしても恐怖の元は今、行われている現代の暮らしの中から生まれていることの方が多い、多くは科学的に解明されていることも多い。伝承はひとびとの暮らしや風景の中に郷愁と共に埋もれようとしている。
 
 
結論が余りに現代と距離があり、文化の交流のない老人ばかりの島にしてもただ自然を相手に長い時間を無駄にして愚かだ。

そうそう締めは、作者の思惑は効果的で、びっくり、読み直してみるかな。
 

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