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「追想五断章」  米澤穂信  集英社文庫

2014-08-01 | 読書

題名が気にいって買ってきた。漢字五文字と言うのは「純情小曲集」とか「五言絶句」の名文とか沢山有るが、レトロな感じもするし、今風のゲームのタイトルにしても収まりがいいようで、落ち着く。

以前旅先のホテルで見た有料の映画で「インシテミル」と言うのが面白かったので作者の名前は知っていた。
少し遠くに行くと、地方局のニュースなどを見て、眠れないと映画を見るのが楽しみになっている。

と言って原作を読んでみる暇もないままで、やはり何か引っかかっていたのかこの本を買ってきた。



解説を読んでこれは、リドルストーリーという形式だと知った。結末がない物語と言う意味らしい。その中で東野圭吾の「どちらかが彼女を殺した」が上がっていたが、そういえば最後の変わった話だったと思い出した。なんだか消化不良になりそうな感じだったが、そういう形式のものだったのか。それで結末はどうなるの?と言うコメントも見たことがある。
読後感は余りよくなかったので、なんとも言い切れないが、この「追想五断章」は面白かった。

結末はある、真相も分かる。でも作者が書き残した最後の部分は読者が推測してもいい仕組みになっている。作者の意図通りに収まるのが当然だが、途中で自分なりに遊んでみるのも面白い。


両親と娘の三人家族である、裕福な家に生まれた父は放蕩の末、女優の妻を貰い,娘も連れて海外を転々として暮らしていた。スイスに逗留中に、ベルギーのアントワープを訪れた。その時滞在していたホテルで妻が首をつって死んだ。その時古い拳銃を持っていてその弾が妻の腕をかすっていた。
自殺か、殺人か、当時は大事件として報道され、夫に疑いがかかった。しかし起訴はされず、22年前に帰国して、松本でひっそりと暮らしはじめた。そして。

娘は手紙を見て、亡くなった父親が小説を書いていたことを知る。
帰国して二年後に、父が書いたはじめての小説が同人誌に発表されていた。筆名が叶黒白といい小説は五編あったことがわかる。
手がかりがあった。娘は発表された同人誌「壷天」を探して古書店に来る。
応対した店員にいきさつを話して、残りの小説捜索を依頼する。店員は一作見つかると10万を出すという娘の言葉もあって探すことを約束するが、いつどこにどういう名前で発表されたのか皆目見当がつかない。

暗中模索、紆余曲折の末5編の小説は見つかるが、どれも結末の部分が抜けていた。
ところが彼が逼塞して過ごした家の文箱に、五編分が一行ずつ書かれた5枚の紙が入っていた。

娘は事件当時4歳だった。ぼんやりした記憶しか残っていない出来事を知りたいと思った。ついに見つかった小説から、事件の輪郭や、当時の父の思いに気づく。

そうそう、でちょっと思ったのだが、お父さんは白黒つけるために小説を書いた、それはいいけど、じゃそれを知った娘はって思う(ネタバレじゃないつもりだけど)

と言う事なのだが、父親の書いた小説と言うのが実によく出来ていて面白い、結末が知りたくてじりじりするが、最後の一行は文箱の中にある。

これは読んでみなければ分からない、娘と店員の小説探しもあって二重に楽しめる。余り長い話ではないが巧緻をきわめたと言うと言いすぎだろうか。

少し暗い蔭のある悲しい出来事も深みがある。





 積読の解消で、何冊も読んだが、4.5冊は50ページほどで止めてしまった。自分の本なので期限がないし、気になればいつでも読めると思うので、面白くて読みきれるものから先に読みたいと思って。
積読は場所を変えて又積読になった。

 中に、意味もなく人名や地名に読みにくい難しい漢字を使ったものがある。
 地方名などは、今でも歴史がある読みの難しいものも多く有るのは事実、謂れなどを聞くと興味深く新しい名前は味気ない気もするけれど、架空の土地によく知っている文字を、わざわざ馴染みのない読みにしてルビを振っているのはなぜだろう。
 作者がモデルを類推されるのを嫌ったのなのだろうか、それならもっと関わりのない名前や場所を選んで欲しい。人名もそう変わった姓も少ないと思うが、なかなか手ごわい名前の脇役がいる。

 外国の優れたものなら、カタカナが読みにくくても頑張って読むけれど、現代小説で古い漢字の羅列は、わぁ~~っとなってついに読むのを止めたくなる(夏だから?頭爆発してしまうから?)
 こんな、漢字くらいで躓かないほど面白い本に出会いたいとは思うが おほ。





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