杉下は瀬戸内の小さな島から進学のために東京に出て、ボロアパートに住んでいる。たまたまとなりに作家希望の西崎が居た。台風が来て床上浸水のため世話になった二階の部屋に、安藤が住んでいた。
暫くぶりに島に帰省して同窓会に出た。そこで成瀬に出会う。彼はアパート近くのレストランでアルバイトをしていた。
殺人事件が起きるのだがそれも「N」がつく野口夫妻が死ぬ。
主要な人物の名前には姓か名に「N」が付いているので、「N」のためにというタイトルは、誰が誰のために行動したかという、読み方が最終的な課題になっている。
杉下と安藤は清掃会社でアルバイトをしていたが、その会社はスキューバダイビングの資格を取らせてくれるというので、二人で申し込んだ。安藤は就職活動中でそれが大きなスキルになると思った。
資格を取り、仲間と出かけた石垣島で野口夫妻と出会い、偶然に将棋好きの杉下と安藤は、野口氏と趣味が合う。帰ってからも自宅に招かれるようになった。安藤は希望通り大手商社の内定を受けたが、そこに野口氏が居て、希望の部署に推してもらった。
野口夫妻宅で妻が刺刺され夫が撲殺された、そこに西崎が居合わせ、撲殺犯として逮捕された。彼も自分からそれを認めた。
野口夫人が夫からの暴力で逃げることも出来ず、外から取り付けたチェーンで閉じ込められていた。顔見知りになった杉下、西崎は幼馴染の成瀬を加えて布人を救出する計画を立てた、が失敗、婦人と付き合いがあった西崎が逮捕され10年の実刑を受けた。
警察の事情聴取で行動を述べた。犯行時の行動はつじつまが合って、全員が開放された。
そして10年後。杉下は余命わずかと宣告されて療養中だった。
それぞれ、の真実がここで明らかになる。一人ずつの過去、野口夫人救出計画の際の4人の動き。
表立った計画的な行動は、警察で述べた。だがその裏に、お互いの真実が隠されていた。
湊さんの作品は、「告白」をまず読んだが、本屋大賞と知っても、自分とは合わない作家だと決め付けていた。
今回広告や批評でもうう一度と思って読んでみたら面白かった。
技術的なストーリー展開がいい。ます表向きの話で切り抜けた警察聴取。野口夫妻の家庭事情と、職場が同じだった安藤の立場。急遽計画にい加わった成瀬。
10年後に明らかになるそれぞれの気持ちが、「N」というイニシャルだけで、想い合う悲しみが迫ってきた。
湊さんをもう少し読んでみたい気持ちにさせる、良く出来た作品だった。
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