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「奇妙な動物の話」

2021-05-23 | 読書
 
小心者なのに怖い本が好きで読んできた。 子供の頃に読んで、今でも思い出すたびに背筋が寒くなるのは、「猿の手」と御伽婢子の「牡丹燈籠」だ。
あの時も1989年出版のこの本を読んだのかもしれない、表紙は三本足の八咫烏(たぶん)のようで顔は耳が尖った狐だった。以後八咫烏もちょっと怖い。
 

コレコレと読んでみた。

名作「猿の手」については、題名が上がっていたり、引用されたりしていたので今では怖さもほどほどに薄まってきた。円朝作の「牡丹燈籠」は最近ドラマを見たがアレンジが過ぎたのかストーリーの陰になって恐怖感は薄れていた。

かもめ通信さん主催のコミュニティー文学部生物係に気がついて、「犬」か「猫」かと考えた時、題名のように動物が色々出るこの本を思い出した。犬も猫もいなくて「猿の手」があった!ということで(;^_^A

これも児童書かと思うくらい読みやすい。訳も相応にシンプルにしているのかと「青空文庫」を開いて比べてみたが内容について表現は違っても変わりなくて、かえって現代文のこちらがよかった。

いつものように雰囲気だけでもちょっと。

*ポー「黒猫」
気の優しい動物好きの男が豹変する。それも酒を飲んでは残酷に変身して、という、今時の理性を失うほど「キレる」男の象徴のような、心理描写にすぐれた話。ポーらしい。最後のシーンに戦慄する。

*マリアット「狼人間」
農奴の父が人を殺し、子供を連れて森に逃げ込んだ。呪われた森だった。そこで暮らしていた三人兄妹は、馬で通りかかった娘と父が結婚し、恐怖の生活が始まる。

*宮沢賢治「よだかの星」
醜い「よだか」は「たか」という名前のために虐められる。名前を変えろと迫られるのも悲しい。心優しい「よだか」は口に跳び込む虫を食べているが虫だってかわいそうで辛い。泣きながら空に昇り、力尽きて星になった。夜の風景描写も美しい。

*ジェイコブス 「猿の手」
三つの願いをかなえるという猿の手の話。
一度願いが叶いお金を得たので、手の呪いを信じて事故死した息子を呼び戻す願いをかけるが。

*キプリング「けものの印」
猿の神の像を汚した。その像の後ろから白い男が現れ抱きつかれた後で、胸に斑点が現れた。男は獣のようになってしまった。みんなでまた現れた白い男を捕まえて打ち据えると。

*フォルヌレ「草むらのダイアモンド」
蛍の幻想的な光が効果的。ホタルが光る小屋で逢っていた男が草むらで死んでいた。それを見た女も死んだ、二人の命が灯のように淡く儚く消えていった。

*エーヴァース「クモ」
向かい合った窓から見える女に惹かれていく男の心が徐々に死に近づいていく。これは曰くのあるホテルで、先に住んだ男たちが次々に死んだ謎を解こうと住んでみた男の話。カーテン越しに見える向かいの女に操られる様子が現実的で、究極の恐ろしい最後のシーンが印象的。

*森鴎外「蛇」
森鴎外が?怪談を書こうとしたのか偶然そうなったのか、よくわからないけれど、蛇嫌いなので、想像するだけで気味が悪い。
旧家の若婦人は気がふれた。仏壇の位牌の上にとぐろを巻いている蛇を見て、亡くなった姑をいじめた呪いかとおもったのだ。旧家に世話になってこんな話を聞いた。まだ蛇がいるという。新人類(?)の客は棒を持ってきて蛇を捕まえ、若婦人には精神科の医者を呼ぶように言った。

古い人間関係がつくりだした因習も絡めた鴎外の珍しい作品。こういうものを書いたことも知らなかったが、ほかにもあるのだろうか出典はない。

と調べたらなんと
『蛇』は鴎外の妻と母親、つまり嫁姑の不和を描いた『半日』の続編と言われている。森家の嫁姑の不和はよく知られたところで、家長たる鴎外は大いに頭を悩ませていたことだろう。


ということで「青空文庫」でも読める有名な作品だった(;^_^
 
 

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