モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番/第5番「トルコ風」
ヴァイオリン:ヴォルフガング・シュナイダーハン
指揮:ハンス・シュミット=イッセルシュテット
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(第4番)
北ドイツ放送交響楽団(第5番)
LP:ポリドール KI 7306
このLPレコードは、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番と第5番を、ウィーンの名ヴァイオリニストであったヴォルフガング・シュナイダーハン(1915年―2002年)が演奏した録音である。モーツァルトは、ヴァイオリン協奏曲の作曲を若い時に集中し、以後、死に至るまでヴァイオリン協奏曲は作曲せず、ピアノ協奏曲を作曲することになる。ピアノ協奏曲の質の高さと量の多さを考えると、後年になってからもヴァイオリン協奏曲にも執着して欲しかったようにも思えてくる。ヴァイオリン協奏曲第1番~第5番は、ザルツブルクで作曲されたので一般に“ザルツブルク協奏曲”と言われている。第4番は、ハイドンの弟であるミハエル・ハイドンの影響を受けた曲と言われ、内容に深みがある曲というより、気楽に楽しく聴くのに相応しい曲となっている。そのためか専門家の評価は芳しいものではないが、そう肩肘張って聴かなくていいじゃないの、という考え方もあろう。何かむしゃくしゃした気持ちの時に、この第4番を聴くと気分がすかっとするから不思議だ。だから、一般に名曲と評価されている第5番に劣らず、私にとっては大好きな曲となのだ。シュナイダーハンは、そのことをよく理解しているかようにように、優雅にさらっと演奏する。普通だとそのような演奏は一度聴くと飽きるが、シュナイダーハンの場合は、一味違う。何か宮殿の中で舞踏が行われているかのような雰囲気を醸し出しており、さらに、いつもなら無骨な指揮ぶりが特徴のハンス・シュミット=イッセルシュテット(1900年―1973年)も、この時ばかりは、オシャレな指揮に終止しているのは、なんとなく微笑ましい。第5番は、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の中でも傑作とされる曲。シュナイダーハンもイッセルシュテットも、第4番の優雅さとは打って変わり、ピリッとした感覚で弾き進む。ただこの第5番も、フランス風の洒落た趣が濃厚な曲想は、第4番とあまり変わることはないが、より一層モーツァルトらしさが込められた曲ということが出来よう。第3楽章にトルコ行進曲風のリズムが出てくるため、「トルコ風」と呼ばれる。シュナイダーハンは、ウィーンで生まれ、ウィーンでヴァイオリンを学んだ生粋のウィーン子の名ヴァイオリニスト。1937年からウィーン・フィルのコンサートマスターを務め、1949年以降、ソリストとして活躍した。(LPC)