★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇若き日のベロフ&コラールによるブラームス:ピアノ連弾曲集

2022-11-21 10:19:23 | 器楽曲(ピアノ)


ブラームス:ワルツ集 op.39
       愛の歌 op.52a
      シューマンの主題による変奏曲 op.23

ピアノ:ミッシェル・ベロフ
    ジャン=フィリップ・コラール

録音:1979年4月12日~13日/12月20日、フランス、パリ

LP:東芝EMI EAC‐90042

 これは、2人のフランスの名ピアニストが、若き頃にブラームスのピアノ連弾曲を録音した珍しいLPレコードである。つまり、ブラームスのピアノ連弾曲自体そう頻繁に演奏される曲ではない上、フランス音楽を得意の2人のピアニストがブラームスを弾くという、二重の意味で珍しいのである。結論からいうと、ブラームスの重厚さが、フランス人の2人のピアニストの演奏によって、新たな魅力を発散し、心躍るような楽しいLPレコードが出来上がった。「ワルツ集」と「愛の歌」の2曲は、ブラームスにも、こんな快活で屈託のない音楽があったことを再認識させられる作品。ミッシェル・ベロフ(1950年生まれ)は、フランス出身のピアニストで、特にメシアンなどフランス音楽に卓越した演奏を聴かせる。1966年、パリ音楽院を首席で卒業し、翌年パリでデビューリサイタルを開く。1967年第1回「オリヴィエ・メシアン国際コンクール」で優勝し、一躍世界の注目を浴びた。一方、ジャン=フィリップ・コラール(1948年生まれ)は、フラン出身の近代フランス音楽を得意とするピアニスト。パリ国立高等音楽院に異例の若さで入学を許可され、16歳の時、満場一致でパリ・コンセルバトワール最優秀賞を受け、その後も「ロン・ティボー国際音楽コンクール」でのグランプリなど、数々の国際的な賞に輝いている。2003年には、フランスの最高勲章であるレジオン・ドヌール騎士章を受勲している。1曲目の「ワルツ集」は、1865年にウィーンで書き上げられた。当時、ウィーンではワルツブームが湧き起っており、ブラームスも大いに関心を示したと言われており、作品となって完成したのがこのワルツ集なのである。第15曲目の曲は、一般に“ブラームスのワルツ”として知られている曲。2曲目の「愛の歌」は、ピアノ連弾と4部合唱の「愛の歌」の合唱部分だけを削除した曲だが、ピアノ連弾だけで演奏しても、立派に通用する。さすがはブラームスといったところ。最後の3曲目の「シューマンの主題による変奏曲」は、シューマンが「シューベルトとメンデルスゾーンの霊が現れ、遺して行った楽想」をもとに変奏曲を書き始めたが、結局完成には至らなかったといういわくつきの曲。シューマンの死から5年余りが経過した1861年にブラームスは、その遺志を受け継ぐかのようにこの曲想を取り上げ、主題と10の変奏曲として完成させた。これら3曲を弾く2人のピアノ連弾の音質は、実に暖かみのあるもので、LPレコードの良さを再認識させられる。(LPC)


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