シューベルト:交響曲第8番「未完成」
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
指揮:ウィルヘルム・フルトヴェングラー
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(シューベルト)
ベルリン・フィルハーモニック管弦楽団(メンデルスゾーン)
ヴァイオリン:ユーディ・メニューイン
発売:1967年
LP:東芝EMI ANGEL RECORDS AA‐8173B
このLPレコードは、ウィルヘルム・フルトヴェングラーの指揮、ユーディ・メニューインのヴァイオリン独奏、それにオーケストラは、ウィーン・フィルとベルリン・フィルという、千両役者が揃った正に“夢の饗宴”と言っていい録音だ。フルトヴェングラー(1886年―1954年)は、当時のクラシック音楽界の頂点に君臨し、指揮者の神様的存在であった。フルトヴェングラーが練習会場に姿を現すと同時に、それまで鳴っていたオーケストラの音が一瞬に変わるとまで言われたほどのカリスマ性の高い名指揮者であった。単に、オーケストラの音を技術的に高めるだけではなく、その音楽が本来持っている音楽性を汲み取り、それをオーケストラに伝え、表現させるというプロセスを踏むことによって、他の指揮者が誰もなしえなかった高い精神性をオーケストラ演奏にもたらしたのであった。第二次大戦後は、戦前のナチスとの関係などが災いし、一時不遇の時代を過ごしたが、死後、フルトヴェングラーが残した録音は、宝物のように扱われ、今でも愛聴されている。ヴァイオリンのユーディ・メニューイン(1916年―1999年)は、アメリカの出身で、後にイギリスに帰化した名ヴァイオリニスト。その深い精神性(坐禅やヨーガにも傾倒した)を持ったヴァイオリンの演奏スタイルは、高貴な香りと同時に、その背景にある一本筋の通った音楽性は、当時、多くの聴衆から愛され、日本でも多くのファンを有していた。シューベルト:交響曲第8番「未完成」は、これが本当の「未完成」だと思わせる、強い説得性のある演奏内容に仕上がっている。けっして表面的なメロディーの甘美さを追うのでなく、シューベルトが到達した、ある意味での彼岸の境地にまでフルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルの演奏は高まりをみせる。もうこれは“「未完成」演奏の決定盤”といっていいほど内容が充実しており、「音楽は単に技術的なものだけでない」とする、フルトヴェングラーのみが成し得る奇跡的録音と言っても過言なかろう。一方、メニューインの弾くメンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲は、こんなピュアなヴァイオリン演奏は、滅多に聴くことはできないと思わせるほどの精神性の高まりに、聴いているだけで緊張感が自ずと高まる。その音楽性は、伴奏するフルトヴェングラー指揮ウィーンと同質だけに、両者の共演したこの録音は、これも“メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲演奏の決定盤”と言ってもいい。(LPC)
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