シベリウス:交響曲第4番
トゥオネラの白鳥
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
イングリッシュホルン:ゲルハルト・シュテンプニク(トゥオネラの白鳥)
録音:1965年5月12日、18日~21日(交響曲第4番)、1965年9月18日~21日(トゥオネラの白鳥)、ベルリン、イエス・キリスト教会
LP:ポリドール SE 7911
これはカラヤンが、シベリウスの最高傑作と言われる交響曲第4番と、人気の高い「トゥオネラの白鳥」を収録したLPレコードである。録音会場は、カラヤンお気に入りのベルリンのイエス・キリスト教会で行われた。私は、初めてシベリウスの全7曲の交響曲を聴く場合、次の順番で聴くといいのではと考えている。それは、第2番→第1番→第6番→第5番→第7番→第3番→第4番の順である。つまり、シベリウスの交響曲を一度も聴いたことのない人が、いきなり第4番を聴くと「一体この曲はなんなのだ」という感想を持つ可能が高いためだ。この交響曲でシベリウスがとった手法は、それまでのどの作曲家もとったことのない手法であり、旋律をを放棄したようにも聴こえ、楽器の使い方もすべてが簡潔となり、凝縮され、最初から最後まで余分な音符は一つもないといった印象を受ける。これによって、聴きざわりは良くないが、人生の厳しさや不可思議さがこの交響曲から聴き取れるのである。記録によるとカラヤンは、このシベリウス:交響曲第4番を5日間も掛けて録音したのだ。それだけに、一音一音が徹底的に浄化され、ひときわ研ぎ澄まされた演奏内容となっている。そして、カラヤンの得意なダイナミックな表現手法を存分に取り入れることによって、独自性も併せ持たせることに成功したと言えるだろう。カラヤンは、ブルックナーの交響曲を指揮する時のような、スケールを大きく取り、雄大な自然を連想させるような起伏のある演奏を聴かせる。この辺は、他の指揮者には真似ができない、カラヤンが思い描く独自の世界ををつくりだしているといえよう。そして、カラヤンがシベリウスの魂と一対一で対決しているような、壮絶な演奏が延々と繰り広げられる。一方、「トゥオネラの白鳥」は、4つの交響詩からなる組曲「レンミンカイネン」の第2曲目に当たる曲で、しばしば単独でも演奏される。「レンミンカイネン組曲」は、「カレワラ」の第12章から第15章にかけての物語に基づいている。若い戦士の主人公レンミンカイネンは、ポホヨラの国を支配する女魔法使いの娘への求婚に赴き、娘の母から3つの課題を与えられる。そこで、彼は2つまでの課題は克服するが、3つ目の課題(トゥオネラ川を泳ぐ白鳥を射るという課題)に挑戦中に殺される。しかし最後は母の呪文によって蘇生し、家に連れ戻される、という物語だ。ここでのカラヤンの指揮は、柔軟さを存分に採り入れ、美しいイングリッシュホルンの音色を十全に引き立てている。(LPC)
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