チャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」
指揮:マイケル・ティルソン・トーマス
管弦楽:ボストン交響楽団
録音:1970年3月、ボストン、シンフォニー・ホール
LP:ポリドール(グラモフォンレコード) MGW5155
チャイコフスキーは、最初の管弦楽曲である序曲が好評であったため、交響曲を書くことを思い立ち、師のアントン・ルービンシュタインとニコラウス・ザレンバに指導を仰ぎ、交響曲第1番「冬の日の幻想」を完成させた。チャイコフスキー自身、この曲を生涯愛していたという。伝統的な4楽章からなるこの交響曲は、第1楽章と第2楽章だけに「冬の旅の夢想」と「陰気な土地、薄暗い土地」という副題が付けられているが、どのような意味であるのかは明らかにはなってはいないが、ロシアの寒い冬の大地を暗示するようでもある。この曲は、そう度々演奏されることはないが、その後のチャイコフスキーの交響曲の要素が素材のまま曲の中に凝縮されているようでもあり、一度聴くと、後になって気になる交響曲であることには間違いない。全4楽章を通して豊かで美しいメロディーが散りばめられており、聴きやすい構成となっている。この曲には「冬の日の幻想」という副題が付けられている通り、ロシアの寒々とした空気がオーケストラの音色から聴き取れ、民族色の濃い曲でもあることから、チャイコフスキー自身が終生愛した曲であることが分るような気がする。このLPレコードでボストン交響楽団の指揮をしているのが、米国出身のマイケル・ティルソン・トーマス(1944年生まれ)である。ロサンゼルス、ハリウッドで生まれ、南カリフォルニア大学で化学と作曲を学ぶ。さらにロサンゼルスにおいて現代音楽を中心にピアノと指揮を学ぶ。1969年にボストン交響楽団ンのアソシエート指揮者に招かれ、同年のニューヨーク公演で急病のスタインバーグの代役を務めて成功を収め、翌年ロンドンでもデビューを果たす。1971年バッファロー・フィルハーモニーの音楽監督、同時にニューヨーク・フィルハーモニックの青少年コンサートの指揮者も務めた。1988年にクラウディオ・アバドの後任として、ロンドン交響楽団の首席指揮者に抜擢され、1995年まで務める。この間、ボストンのタングルウッド音楽祭をはじめ、各地で客演活動を重ね、好評を得る。1995年からは、現在に至るまでサンフランシスコ交響楽団の音楽監督を務め、同楽団の長期音楽監督の記録を塗り替えた。このLPレコードでは、持ち前の分りやすく、軽快な指揮ぶりを披露しており、充分聴き応えのある録音に仕上がっている。録音の音質も秀逸。(LPC)
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