ベートーヴェン:チェロソナタ第5番
「ユダス・マカベウス」の主題による12の変奏曲
「魔笛」の主題による12の変奏曲
チェロ:ピエール・フルニエ
ピアノ:フリードリッヒ・グルダ
録音:1959年6月17日~28日、ウィーン、ムジークフェラインザール
LP:ポリドール(ドイツ・グラモフォン) MGW 5174(2544 120)
ベートーヴェンは、全部で5曲のチェロソナタを遺しているが、それらは初期、中期、後期の全生涯を通して書かれている。今回のLPレコードは、ベートーヴェン後期の作品で、最後のチェロソナタとなった第5番である。作曲されたのは1815年で、第4番と連作となっている。全部で3つの楽章からなっているが、第3楽章目には、4声のフーガが用いられているところが、いかにもベートーベンの後期の作品の雰囲気であることを漂わす。曲全体の印象は、簡潔に、透明感をもって書かれており、明快さと深い精神性とを併せ持った作品。「ユダス・マカベウス」の主題による12の変奏曲は、1796年の作と推定されている。比較的ピアノに重点が置かれ、チェロは、旋律を大きく歌わせるとか和声の支持をさせるとかの役目を与えられている。「魔笛」の主題による12の変奏曲は、1798年に書かれた初期の作品と考えられている。その主題は、「魔笛」の第2幕第23場で、パパゲーノが歌う有名な軽妙なアリア「かわいい娘か女房か」によるもので、原曲ではアンダンテだが、ベートーヴェンではアレグレットにされている。この3曲を弾いているが、かつて“チェロのプリンス”としてわが国でも多くのファンを有していたフランスのチェロの名手のピエール・フルニエ(1906年―1986年)である。最初はピアニストを目指したが、小児麻痺のためチェロに転じた。1923年、パリ音楽院を首席で卒業後、その存在感を世界に知らしめることになる。演奏法は、大変優雅で、その美しいチェロの音色を一度でも聴くと、もう演奏内容がどうのこうの言うこと自体が無意味なようにも感じてしまうほどの腕前。ピアノの伴奏はフリードリッヒ・グルダ(1930年―2000年)。ウィーンに生まれ、16歳の時、「ジュネーブ国際コンクール」で優勝して一躍世界的に注目を浴びた。ジャズ演奏にも興味を示すなど、従来の枠に捉われない演奏法は、当時、常に聴衆に新鮮な話題を提供していた。ただ、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトなどの作品を演奏する際は、決して奇を衒わず、伝統に依拠したオーソドックスな様式に基づいていた。このLPレコードでも優雅で伝統的な演奏に基づく、フルニエのチェロ演奏にピタリと歩調を合わせ、見事な伴奏の腕前を披露している。この2人の名手の手に掛かると、優雅さと同時に音楽的な面白さに溢れた曲であることを、改めて味あわさせてくれる。(LPC)
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