フォーレ:レクイエム/ラシーヌの雅歌
指揮:ルイ・フレモー
管弦楽:モンテ・カルロ国立歌劇場管弦楽団
合唱:フィリップ・カイヤール合唱団
オルガン:シャノワーヌ・H・カロル
バリトン:ベルナール・クルイセン
ボーイ・ソプラノ:ドゥニス・ティリェス
発売:1975年
LP:ビクター音楽産業(RCA) ERA‐1045
フォーレのレクイエムを聴くたびに心が洗われる思いがする。宗教に疎い俗人の私が聴いても、聴くたびにその深い宗教的雰囲気に圧倒される。圧倒されると言ってもフォーレのレクイエムの場合は、静かで、あらゆる俗世間の束縛から解放され、ただ、ひたすら質素で純粋な祈りの精神に圧倒されるのだ。こんなにも美しい宗教音楽があるなんて信じられないくらいである。誰が聴いても、例えクラシック音楽をあまり聴かない人が聴いても、聴きやすいメロディーに背後にある、精神性の高さに自然と引き寄せられることは間違いない。フォーレは自分の父の死に際しこの曲を書いたようであるが、自分自身の葬儀においても演奏されたそうである。フレモーの指揮はそんな曲の真髄を存分に聴かせてくれる。フォーレは、ある人に宛てた手紙に「私のレクイエムは、死に対する恐怖感を表現していないと言われており、なかにはこの曲を死の子守歌と呼んだ人もいます。しかし、私には、死はそのように感じられるのであり、それは苦しみというより、むしろ永遠の至福の喜びに満ちた開放感に他なりません」と書いている。これを読めば分かる通り、このレクイエムは、伝統的な慣習に則ってつくられた曲ではなく、”永遠の安らぎに対する信頼感”を根底に書かれた曲だ。フォーレのレクイエムは、当時のカトリックの死者のためのミサに欠かせない「怒りの日」などが欠けており、そのままでは、ミサに用いることはできない。このため、初演の時は、「斬新すぎる」「死の恐ろしさが表現されていない」などといった批判が出たという。しかし、現在ではフォーレの狙いが理解され、演奏会用レクイエムの傑作として高い評価を得ている。このLPレコードで指揮しているルイ・フレモー(1921年―2017年)は、フランスの出身。レーニエ3世の依頼でモンテカルロ歌劇場管弦楽団(現モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団)の首席指揮者を務めた。モンテカルロ国立歌劇場管弦楽団は、モナコのモンテカルロに本拠を置き、1856年に設立された。1980年からはモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団という名称に統一された。その後、バーミンガム市交響楽団の音楽監督、シドニー交響楽団の首席指揮者を務めた。このLPでのフレモーの指揮ぶりは、フォーレの意図した”永遠の安らぎに対する信頼感”をベースに置き、”苦しみというより、むしろ永遠の至福の喜びに満ちた開放感”をオーケストラの音から引き出すことにものの見事に成功している。(LPC)
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