ベートーヴェン:ディアベリの円舞曲による変奏曲
ピアノ:ウィルヘルム・バックハウス
発売:1974年
LP:キングレコード MZ 5116
ディアベリの円舞曲による変奏曲(ディアベリ変奏曲)は、ベートーヴェンが1823年に完成した晩年のピアノ独奏曲の傑作である。最後のピアノソナタ第32番がつくられたのは1822年であるから、ベートーヴェン最後のピアノ作品と言えるもので、内容もそれに相応しく、合計33の変奏曲が立て続けに演奏される様は、聴いていて圧巻そのものだ。ミサ・ソレムニスが完成したのが、この「ディアベリ変奏曲」と同じ年の1823年、そして第九交響曲が翌年の1824年に完成しているのをみれば、内容の充実度は推して知るべしといったところか。「不滅の恋人」とされるアントーニア・ブレンターノに献呈されていることでも知られる。33の変奏曲からなる曲というのもそう滅多にあるものではないが、そもそもこの曲の成り立ちからして少々変わっている。出版業者のアントニオ・ディアベリが、自分の書いた円舞曲を当時の有名作曲家に変奏曲を1曲づつ書かせて一儲けをしようと企み、ベートーヴェンにも依頼したが、ベートーベンはこの円舞曲の主題を「靴屋の継ぎ皮」と罵り、最初は無視した。しかしその後、考えを変え、作曲に取り掛かったのだが、結果は1曲どころか33曲に膨らんでしまったのだ。凝り性のベートーヴェンの性から来たのか、あるいは今後も、楽譜出版で世話になるかも知れないディアベリに、この際恩を売っておいた方が得策と判断したからかもしれない。ベートーヴェンは、著作権問題で裁判沙汰を起こすなど、意外に人間臭いところもあるのだ。このLPレコードでのウィルヘルム・バックハウス(1824年―1969年)の演奏は、凄まじく、一気呵成に33の変奏曲を演奏し、リスナーに考える暇を与えないかのようもある。しかし、決して無機質な演奏ではなく、そこには音楽以外のものを一切排除した、一徹な求道精神みたいな集中力の塊を聴く思いがする。今どきこんなピアニストにはもう逢えまい。ウィルヘルム・バックハウスは、ドイツ・ライプツィヒ出身だが、後にスイスに帰化した。ライプツィヒ音楽院に7歳で入学。16歳(1900年)の時にデビュー。1905年パリで開かれた「ルビンシュタイン音楽コンクール」のピアノ部門に出場し優勝。1930年スイス・ルガーノに移住。1946年スイスに帰化した。 1954年4月には日本を訪れた。1966年「オーストリア共和国芸術名誉十字勲章」を受章、またベーゼンドルファー社から20世紀最大のピアニストとしての意味を持つ指環を贈られた。(LPC)
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