ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
テデスコ:ギター協奏曲第1番
ギター:ジークフリート・ベーレント
指揮:ラインハルト・ペータース
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
LP:ポリドール(グラモフォンレコード) MGW 5192
録音:1966年5月9日~13日 ベルリン、イエス・キリスト教会
私は、ギター音楽を聴く機会はそう多いとはいえないが、昔、AMラジオのスピーカーから流れてくるロドリーゴのアランフェス協奏曲だけは例外で、よく聴いたものだ。その第2楽章の何とも言えないエキゾチックなメロディーを聴くと、何か時空を超えてはるか遠くのアランフェスの城はどんな処であろうかと想像を働かせながら聴いたものである。そして今、このLPレコードを改めて聴いてみると、何か遠くのアランフェスの空気が、ジークフリート・ベーレント(1933年―1990年)の柔らかいギターの音色に乗って、頬に吹きかかるような錯覚に捉われる。アランフェスに行ってみたくなる気分に捕らわれる。これはLPレコードの音質だからこそ余計言えることだと思う。ほぼ同時代に書かれたB面のテデスコのギター協奏曲第1番も、心に沁みわたる佳作である。現代スペインの楽壇の大御所ホアキン・ロドリーゴ(1901年―1999年)は、悪性ジフテリアのため4歳で失明するが、バレンシア音楽院からパリのエコールノルマルへと留学し、音楽を習得。また同時に、デュカスの教えを得ることもできた。スペイン戦争時代はドイツにいたこともあったが、1939年からは、マドリードに定住し、作曲に集中。ヴァイオリン、チェロ、ハープ、さらにギターによる作品を次々と発表した。ロドリーゴ自身はギターを弾かなかったようであるが、このスペイン的楽器をこよなく愛し、独奏曲の十数作品に加え、管弦楽との協奏曲も作曲した。アランフェス協奏曲のアランフェスとは、マドリードから約47㎞ほど南の土地の名前だ。乾燥した中央スペインの高原地帯にあって、アランフェスは森の緑に恵まれ、オアシスを形成しているため、昔から王侯の憩いの場所になっていた。ロドリーゴ自身の言葉によると、アランフェス協奏曲は、「憂愁にとらわれたフランシス・デ・ゴヤの影、貴族的なものが民衆的なものと溶け合っていた18世紀スペイン宮廷の姿」を表した作品だという。一方、このLPレコードのB面には、テデスコ:ギター協奏曲第1番が収められている。マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ(1895年―1968年)は、イタリアのフィレンツェ生まれ。ファシスト勢力の圧迫を避け、1939年にアメリカに渡り、以後アメリカを拠点に作曲活動を行った。如何にもイタリア人らしい表情豊かな作曲家であったが、中でも目立つのがアンドレス・セゴビア(1893年―1987年)との出会いから生まれた数十におよぶギター曲で、その代表作がギター協奏曲第1番である。(LPC)
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