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★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ジノ・フランチェスカッティのクライスラー名曲集

2024-10-21 09:38:36 | 室内楽曲(ヴァイオリン)

 

~クライスラー名曲集~

クライスラー:愛の喜び        
       愛の悲しみ        
       レシタティーヴォとスケルツォ・カプリース
       ウィーン綺想曲        
          中国の太鼓        
          美しきロスマリン        
          プニャーニのスタイルによる前奏曲とアレグロ        
          ボッケリーニのスタイルによるアレグロ        
          ロンディーノ        
          ボルポラのスタイルによるメヌエット        
          ロンドンデリーの歌

ヴァイオリン:ジノ・フランチェスカッティ

ピアノ:アルトゥール・バルサム

LP:CBS/SONY SOCU 59

 このクライスラー名曲集のLPレコードで演奏しているヴァイオリストのジノ・フランチェスカッティ(1905年―1991年)は、日本でも数多くのファン(ただし、一度も来日歴は無い)を持った、名ヴァイオリニストであった。フランス人とイタリア人の血を引いているためか、イタリア的な明るさと、フランス的な優雅さとが混ざり合って、独特な雰囲気を醸し出していたヴァイオリニストであった。両親がマルセイユ歌劇場のヴァイオリン奏者を務めたいた関係もあり、3歳から父親の手ほどきを受け、5歳の時に公開の演奏会を開いたというから、早熟であったようだ。10歳でオーケストラと共演してベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を演奏している。パリに出て、当初は、オーケストラの一員として活動したが、1931年からソリストとして独立。1939年には、アメリカでデビューを果たし、その名を世界に轟かすことになる。父親は、ジノ・フランチェスカッティに対し「何も沢山のヴァイオリニストの演奏を聴く必要は少しもない。クライスラーただ一人を聴けばいい」と言ったそうである。このためか、ジノ・フランチェスカッティにとって、クライスラーは陰の師というべき存在でもあったようである。このLPレコードに収められた全部で11曲のクライスラーの名曲を、ジノ・フランチェスカッティは、実に洒落た感覚で演奏しており、何回聴き直しても少しも飽きが来ないのはさすがというべきだろう。最初に書いたようにジノ・フランチェスカッティの血には、イタリア人の血とフランス人の血とが混ざっており、これによって、クライスラー独特の世界を、チャーミングな感覚で弾きこなすことに成功しているのである。クライスラーの曲は、ヴァイオリニストの力を試す試金石としてはこれ以上のものはない。ホントの実力が無ければ、クライスラーの曲の演奏で、リスナーを心から引き付けることは到底不可能だ。このLPレコードでのジノ・フランチェスカッティの演奏は、華やかさの裏に哀愁を含んだものとなっており、ジノ・フランチェスカッティが「クライスラーはこんな風に弾けばいいんだよ」とでも言っているように私には聴こえるのである。このLPレコードでピアノ伴奏をしているアルトゥール・バルサム(1906年―1994年)は、ポーランド・ワルシャワ出身。2人のコンビは1938年に始まっただけあって、十分に息の合った伴奏ぶりを披露している。(LPC)    

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◇クラシック音楽LP◇オイストラフ&オボーリンの名コンビによるベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第8番/第2番/第4番

2024-09-09 09:47:53 | 室内楽曲(ヴァイオリン)


ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第8番/第2番/第4番

ヴァイオリン:ダヴィド・オイストラフ

ピアノ:レフ・オボーリン

録音:1957年、パリ

発売:1977年

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) X‐5690

 ヴァイオリンのダヴィド・オイストラフ(1908年―1974年)は、ロシアのオデッサ生まれ。オデッサ音楽院で学び、同音楽院を1926年に卒業後、直ぐに演奏活動を開始。1935年「ヴィエニアスキ国際コンクール」第2位、そして1937年には、「イザイ国際コンクール(現エリーザベト王妃国際音楽コンクール)」に優勝して、世界的にその名を知られることになる。1938年にはモスクワ音楽院の教授に就任。1949年までは旧ソ連内での活動に留まっていたが、1950年以降になると西欧各国での演奏活動を積極的に展開するようになる。その優れた技巧と音色、そしてスケールの大きな演奏により、西欧でも名声を不同なものとして行く。1974年10月に客演先のアムステルダムのホテルで逝去した。享年66歳。一方、ピアノのレフ・オボーリン(1907年―1974年)は、モスクワ生まれ。モスクワ音楽院で学び、1927年に同音楽院を卒業した翌年の1928年、第1回「ショパン国際ピアノコンクール」に優勝。以後西欧各国から招かれ、その第一級の腕を高く評価された。1935年にモスクワ音楽院教授に就任。ピアニストで今は指揮者として活躍しているアシュケナージも教え子の一人という。1938年からはオイストラフとコンビを組み二重奏の演奏を開始。さらにチェロのクヌシェヴィッキーを加えたトリオの演奏でも高い評価を得た。1974年1月にモスクワで死去。この2人のコンビでベートーヴェンのヴァイオリン全集が録音されたが、その中から3曲を収めたのが今回のLPレコードである。ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第8番は、中期を前にした曲で、明るくまとまりの良いヴァイオリンソナタとして知られる。第2番は、初期の作品であり、モーツァルトの影響も見られ、内容の充実度というよりは、新鮮な内容が特徴。第4番は、ベートーヴェン独自の個性が発揮され始めた頃の作品。2人によるこれら3曲の演奏内容は、いずれも緻密な計算の上に立ち、高い技巧で表現されているのが特徴。一部の隙のない演奏ではあるが、人間味のある暖かみがベースとなっているので、聴いていて自然に心が和んでくる。完成度の高さは極限まで追究している一方で、音楽の心は決して忘れてはいない。やはり、2人は不世出の名コンビだったということを、改めて思い知らされたLPレコードであった。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇ティボー&コルトーの歴史的名盤 フランク:ヴァイオリンソナタ/フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番

2024-01-11 09:43:24 | 室内楽曲(ヴァイオリン)


フランク:ヴァイオリンソナタ
フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番

ヴァイオリン:ジャック・ティボー

ピアノ:アルフレッド・コルトー

LP:東芝音楽工業 ANGEL RECORD GR-25(COLH-74)

 このLPレコードは、文字通りの典型的な歴史的名盤の1枚である。録音は、フランク:ヴァイオリンソナタが1929年5月、フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番が1927年6月であり、今から90年以上前となる。いずれもSPレコードからLPレコードへと音源が移行されたものであり、現在の録音の音質レベルとは比較することはできず、現在において鑑賞に耐えうるかどうかはリスナー次第としか言いようがない。ところが、音質はともかく演奏自体は、これら2曲の古今の録音の中でも1位、2位を争う名盤中の名盤ということができる。ジャック・ティボーのしなうような微妙な弓遣いのヴァイオリンの幽玄な響き、それに、アルフレッド・コルトーの詩的で妖艶な趣を漂わせたピアノの音色が、相互に絡み合い、ある時は、互いに頷きあうように協調し、また、ある時は、それぞれの持ち味を存分に発揮し合う。要するに、室内楽として求められる全ての要素を、この二人の名手は、この録音で遺憾なく発揮しているのである。聴き始めは、その録音の古さに、少々たじろぐが、聴き進むうちに、そんな録音の古さなどは、徐々に忘れ去り、リスナーは二人の名演に、ただただ聴き惚れることになる。フランク:ヴァイオリンソナタは通常、力強く一気に演奏されることが多いが、ティボーとコルトーは、むしろこの曲の持つ移ろいやすい陽炎のような情緒を存分にリスナーに送り届けてくれる。フォーレ:ヴァイオリンソナタ第1番は、フォーレの曲の持つ詩的な部分はそのままに、他の演奏では、あまり聴けないような輪郭のはっきりした演奏に徹する。ジャック・ティボー(1880年―1953年)は、フランス出身のヴァイオリニスト。独奏者として活躍する傍ら、1905年、アルフレッド・コルトー、パブロ・カザルスとともに三重奏団(カザルス三重奏団)を結成。1943年には、現在、若手演奏家の登竜門として知られる「ロン=ティボー国際コンクール」をマルグリット・ロンと共同で創設した。一方、アルフレッド・コルトー(1877年―1962年)は、フランス出身のピアニスト。当初、ピアニストとして楽壇にデビューしたが、ワーグナーの作品に傾倒し、バイロイト音楽祭の助手を務めたこともある。1902年頃からは指揮者としても活動し、ワーグナーの「神々の黄昏」のフランス初演を行うなどした。ピアニストとしては、特にショパン弾きとしての名声を博した。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇シゲティの近代ヴァイオリンソナタ選集

2023-11-02 10:00:40 | 室内楽曲(ヴァイオリン)

 

~近代ヴァイオリンソナタ選集~

バルトーク:ヴァイオリンソナタ第2番
アイブス:ヴァイオリンソナタ第4番「野外集会の子供の日」
ドビュッシー:ヴァイオリンソナタ
オネゲル:ヴァイオリンソナタ第1番

ヴァイオリン:ヨゼフ・シゲティ

ピアノ:ロイ・ボーガス

録音:1959年3月、ニューヨーク

発売:1979年

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) 13PC‐95

 これは、ハンガリー出身の大ヴァイオリニストのヨゼフ・シゲティ(1892年―1973年)が、バルトーク、アイブス、ドビュッシー、オネゲルのヴァイオリンソナタを1曲づつ録音した記念碑的LPレコードである。シゲティは「シゲティの前にシゲティなし、シゲティの後にシゲティなし」と言われたほどのヴァイオリンの大家である。シゲティ以前のヴァイオリン演奏においては、如何にヴァイオリンの音色を美しく、浪々と奏でるかで、そのヴァイオリニストの評価されていた。これに対し、シゲティの演奏は、ヴァイオリンから美音なんて出すことは考えずに、荒々しい奏法を使ってでも、直接曲の本質に迫るという、それまでのヴァイオリン奏法と真逆な手法を取り入れたのである。このためバッハの曲でもベートーヴェンの曲でも、従来のヴァイオリニストが表現できなかった、その曲が本来持つ本質を抉り出すことに成功したのである。これは到底余人の及ぶ所でなく、“孤高の芸術家”とも評された。シゲティの奏法の特質は、それまであまり演奏されることがなかった近代作曲家の作品にも光を当てることにも繋がった。その成果の一端がこのLPレコードに収められている曲である。例えば、ドビュッシー:ヴァイオリンソナタは、今でこそ多くのヴァイオリニストがリサイタルで取り上げ広く知られているが、この曲が広く知られる前からシゲティは、リサイタルで盛んに取り上げ、そのことが後になってドビュッシーの代表的作品の一つとして定着する切っ掛けとなったのだ。このLPレコードに収められた4曲は、ドビュッシー:ヴァイオリンソナタ以外は、あまり聴く機会がないが、シゲティの名演奏で聴いてみると、それぞれ、なかなか味わいのある曲であることを認識させられる。バルトーク:ヴァイオリンソナタ第2番は、1922年に作曲され、2つの楽章からなる。シゲティはこの曲を大変好んでおり、録音の機会を待ち望んでいたという。アイブス:ヴァイオリンソナタ第4番「野外集会の子供の日」は、1915年に作曲され、3つの楽章からなる。アイブスは、教会のオルガニストとして出発したが、以後、実業界に入り、趣味として作曲活動を続けた。ドビュッシー:ヴァイオリンソナタは、病苦の中で書いた3つのソナタの最後の曲で、3つの楽章からなる。初演は死の前年に行われた。オネゲル:ヴァイオリンソナタ第1番は、1918年に作曲され、3つの楽章からなる。オネゲルは、ヴァイオリンとピアノのための曲を2曲遺している。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇ワルター・バリリ&パウル・バドゥラ=スコダのモーツァルト:ヴァイオリンソナタ集

2023-10-12 09:40:49 | 室内楽曲(ヴァイオリン)


モーツァルト:ヴァイオリンソナタKV376
       ヴァイオリンソナタKV402
       ヴァイオリンソナタKV481

ヴァイオリン:ワルター・バリリ

ピアノ:パウル・バドゥラ=スコダ

発売:1976年12月

LP:日本コロムビア OW‐8064‐AW

 ワルター・バリリ(1921年―2022年)は、ウィーン生まれの名ヴァイオリニスト。要するに生粋のウィーン子であり、そのヴァイオリン演奏は、素朴の中にしっとりとしたウィーン情緒を内包している。今ではウィーン情緒というと、毎年正月に来日し、華やかな宮廷音楽を演奏する演奏団体を思い浮かべるが、バリリはそれらとは正反対に、実に朴訥とした味わいに溢れ、今このLPレコードを聴き直しても、これこそが本当のウィーン情緒だとの思いに駆られる。1938年にウィーン・フィルに入団、1940年からはコンサートマスターを務めた。 さらに1945年からは有名なバリリ弦楽四重奏団を結成したが、来日を前に右肘を痛め、以後演奏活動は中止して、教育活動に専念した。このLPレコードでは、モーツァルトの3つのヴァイオリンソナタを録音している。この3曲の演奏とも表面的な華美な装いは一切排除し、曲の内面に向かって、一心に掘り下げるような演奏スタイルに徹している。このため、我々が通常モーツァルトのヴァイオリンソナタに抱いている、華麗さ、軽快さといった側面は殆ど姿を消し、代わりにモーツァルトに音楽のがっちりとした構成美が鮮やかに再現されている。そして、そんなバリリのヴァイオリン演奏を暫く聴き進むと、次第に本当のウィーン情緒は、こういうものかと納得させられるのである。バリリのヴァイオリン演奏が如何に伝統に裏打ちされた正統性を持ったものであるかを、このLPレコードは自然と教えてくれる。ピアノのパウル・バドゥラ=スコダ(1927年―2019年)もオーストラリア出身。2012年3月に来日し、85歳とは思えない演奏で、日本のファンに深い感銘を与えた。若き日のこのLPレコードでは、バリリとの息がピタリとあった名伴奏ぶりを発揮している。モーツァルトはヴァイオリンソナタを全部で35曲作曲した。ヴァイオリンソナタヘ長調KV376は、1781年にウィーンで書かれたと考えられており、優雅な趣を持った作品で3つの楽章からなる。ヴァイオリンソナタイ長調KV402は、1782年の8月から9月に書かれた3つのヴァイオリンソナタの中の1曲であるが、いずれも未完成で、この曲は2楽章しかなく、しかもその2楽章目は第三者が補筆し完成したもの。ヴァイオリンソナタ変ホ長調KV481は、1785年にウィーンで完成した抒情的なヴァイオリンソナタで、3つの楽章からなる。(LPC)

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