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★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇クルト・レーデル指揮ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団によるバッハ:「音楽の捧げもの」

2022-09-15 09:51:16 | 古楽


バッハ:「音楽の捧げもの」

        1.3声のリチェルカーレ
        2.王の主題による無限カノン
        3.王の主題による各種のカノン
        4.上方5度のフーガ・カノニカ
        5.2声のカノン
        6.4声のカノン
        7.6声のリチェルカーレ
        8.トリオ・ソナタ
        9.無限カノン

指揮:クルト・レーデル

管弦楽:ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団

ヴァイオリン:ヴォルフガング・マルシュナー
フルート:クルト・レーデル
チェロ:ヴィルヘルム・シュネラー
チェンバロ:レオナード・ホカソン

発売:1979年

LP:RVC E‐1006

 このLPレコードの「音楽の捧げもの」は、アマチュアのフルーティストであり作曲家でもあったプロイセンのフリードリッヒ大王(1712年―1786年)に献呈した作品である。ポツダムの宮殿にいたフリードリッヒ大王は、対位法の大家であり、鍵盤楽器の即興演奏では、当時並ぶものがいなかったバッハを呼び寄せた。フリードリッヒ大王は、バッハに自らの主題によって6声部のフーガを即興するように求めたが、バッハは、自ら選んだ主題に基づく6声部のフーガを演奏するに止めてしまった。このことが、その後に「音楽の捧げもの」を作曲する原動力になったのである。2ヵ月後、改めて大王の主題を基に6声部のフーガを含め2曲のフーガ、同じ主題に基づく10曲のカノン、大王が好んだフルートを取り入れた1曲のトリオ・ソナタ(4楽章)を加え全部で16の曲からなる「音楽の捧げもの」を完成させた。このLPレコードで指揮をしているクルト・レーデル(1918年―2013年)は、ドイツ出身の指揮者兼フルート奏者。クルト・レーデルは、1938年20歳の時にマイニンゲン州立オーケストラの首席フルート奏者に就任。さらに1941年ミュンヘンのバイエルン国立オーケストラの首席に就任。1952年に、このLPレコードで演奏しているミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団を自ら創設し、音楽監督を務めた。数多くのコンサートを行い、1960年代に、エラート・レーベルにバッハやハイドン、モーツァルトなどの作品をを数多くレコーディングし、数多くのレコード賞を受賞。また20年間にわたって、自ら創設したルルド音楽祭を率いると同時に、ヨーロッパの重要なオーケストラとも共演。これらの長年の功労に対し、レコード大賞、パリ・オペラ座オルフェウス賞、エジソン賞、ドイツ連邦一等功労十字章がクルト・レーデルに授与されている。このLPレコードの演奏は、気心の合ったミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団との演奏だけに、バッハの作曲した音楽に魂が入ったとでも表現したらいいような、情感細やかな名演を繰り広げる。それにヴァイオリンのヴォルフガング・マルシュナー、フルートのクルト・レーデル、チェロのヴィルヘルム・シュネラー、チェンバロのレオナード・ホカソンらが絶妙な演奏を聴かせてくれているのが何とも嬉しい。このLPレコードでは、クルト・レーデルが、指揮に加え得意のフルートを掛け持ちして演奏している。このLPレコードから聴こえてくる調べは、音楽の純粋な悦びそのものなのである。(LPC)


◇クラシック音楽LP◇イ・ムジチ合奏団のテレマン名演集

2022-04-07 09:52:01 | 古楽


テレマン:フルート、弦楽と通奏低音のための組曲イ長調
       (フルート:セヴェリーノ・ガッツェルローニ)
     ヴィオラ、弦と通奏低音のための協奏曲ト長調
       (ヴィオラ:チノ・ゲダン)
     3つのヴァイオリン、弦と通奏低音のための協奏曲ヘ長調
      <ターフェルムジーク第2集第3番>
        (ヴァイオリン:フェリックス・アーヨ/アルノルド・アポストーリ/
        イタロ・コランドレア)

弦楽合奏:イ・ムジチ合奏団

チェンバロ:マリア・テレサ・ガラッティ

LP:日本ビクター(フィリップス) SFL‐8564(802・864・LT)

 イ・ムジチ合奏団は、1952年にローマの聖チェチーリア音楽院の卒業生12名が集まって結成された、バロック音楽を中心とした室内弦楽合奏団である。ヴィヴァルディの「四季」の録音は、当時大ベストセラーとなり、クラシック音楽ファンでなくても名前が知られたほどの存在であった。ラジオ放送から流れるバロックの曲の大半がイ・ムジチ合奏団の演奏であったことを思い出す。そのイ・ムジチ合奏団がテレマンの名曲を録音したのが今回の一枚。テレマンは、バッハより4年早く北ドイツのマクデブルグで生まれた。その当時は、バッハよりテレマンの方が人気が高かったことで知られる。このLPレコードのライナーノートで服部幸三氏は、当時の有名な詩人ヨハン・クリストフ・ゴットシェトの次のような言葉を紹介している。「テレマンは、ただ音楽の専門家だけに面白く思えるような回りくどい難しさを避け、快いひびきの変化を重んじる。そして、これ以上に賢明なことはあろうか?なぜなら、音楽は本来人を楽しませるものだから、額に皺寄せて聴いたあげく、不承不承ながら感心するような作品を書くひとよりも、聴き手に快い感情と満ち足りた思いを抱かせるような人の方が、より賞賛に値するのだ」。これらの言葉は、何かバッハを皮肉っているようにも受け取れる。それだけ当時のテレマンの人気が高かったということだろう。このLPレコードでのイ・ムジチ合奏団のテレマンの演奏は、正に一部の隙のない完璧な名演を聴かせている。何と表現したら適切なのか分らないような豊穣でしかも輝かしい音がリスナーの目の前に悠然と展開する。至福の一時とはこのことなのかな・・・とも思えるような最上の演奏なのである。中でもフルート、弦楽と通奏低音のための組曲イ長調が絶品。ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681年―1767年) は、後期バロック音楽を代表するドイツの作曲家で、対位法を主体とする後期バロック様式からホモフォニーによる古典派様式への橋渡しをした作曲家であった。1721年、北ドイツのハンブルクに居を構えた。ここでテレマンは、教会のための音楽とオペラ劇場の作曲家として活活躍することになる。1732年に、バロックの器楽合奏曲のあらゆる形式を網羅した「ターフェルムジーク」の出版を予告すると、100人を超えるドイツの諸侯と音楽家だけではなく、北はオスロやコペンハーゲン、南はパリやリオン、さらに海を越えたロンドンからも注文が殺到したというほどの人気を誇った作曲家であった。(LPC)