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流行語大賞に思う- 蟹工船とネットカフェ難民
ことしの新語・流行語大賞が発表された。
十指に、蟹工船が入っているという。世相を反映している。
思い出すのは、昨年の同賞。ネットカフェ難民が大賞に選ばれていた。それでは、ネットカフェ難民が文字どおり流行に終わって、死語になっているのかといえば、そうではない。ネットカフェ難民という言葉は、それ自体の意味をいまでも十分に保ち我われの間を伝播する。そうだから、今年の大賞のトップテンに蟹工船が選ばれたことと連続しているともいえる。
ネットカフェ難民という言葉が伝える今日の日本社会の一面を、こんどは今年、何とかして主体的にとらえてみようとする意思がそこに働いているとみることはできないだろうか。難民状態からの脱却を手にしたいという意思である。
こんにちの日本では、それがそれほど容易なことではないということは誰もが知っているにちがいない。しかし、私は、そうであるにしても、蟹工船が選ばれたということに、状況から是が非でも脱却したいという強い意思をあらためて感じるのだ。
一人のジャーナリストが名づけたネットカフェ難民(という言葉)は、そこかしこにある日本の状況を表現する言葉であった。そして、蟹工船という言葉が含意し象徴するのは、負から正への転換をめざす主体的な意思だと私は考えるわけだ。
その強固な意思は、たとえば最近の、昨日のエントリーで取り上げた期間工らの決起にも端的に表現されるだろう。
今日の日本では、流行語大賞のなかにその名はなかったのだが、貧困ビジネスがはびこるという否定しがたい事実もある。貧困ビジネスとは、貧困を解消するためのものではなく、むしろ貧困を積極的につくりだし、それに寄生し利益をあげる商売だといえる。湯浅誠が消費税増税を貧困ビジネスだといい、堤未果が戦争こそが最大の貧困ビジネスというとき、貧困を一方につくりだしながら、片方で儲けるという意味がすでに含意されている。二人の指摘は的確である。
貧困ビジネスの象徴的なものの一つをあげるとすると、昨今の世界的金融危機の引き金になった米国の、低所得者向け住宅ローンがそうだ。サブプライムローンだ。そのサブプライムローンが破綻し、貧困者が住宅を失い、世界の金融と経済を揺さぶっているのが、今現在だ。つまり、今日の世界は、この貧困ビジネスの破綻に直面し、その影響を蒙っていることになる。
影響はこの日本国でもむろん軽微ではない。
その一面は、以下の記事の表題に尽くされているのかもしれない。
直面している人びとにとっては、ただ事ではない。もちろん横に措いておくことはできない。だが、日本国でいまや横行するかにみえる期間工・派遣切りという現象。したがって、こんにちの日本では、蟹工船が選ばれた状況からさらに一歩するんで、さらなる広がりを示しているといえないか。
蟹工船の文脈に自らの境遇を重ねあわせ、あるいは今日の日本社会の様相をてらして、何らかの価値を見出そうとする意思に共感するのならば、それは実践的には、すべての労働者に視野を広げなくてはならないだろう。そうすることで解決の道がかろうじて見出されるといったほうが正確かもしれない。ここでは、もとより麻生がいったいちいちが問題ではない。
友さんの提起が波紋を呼んでいるようだ。
問われているのは、労働者すべてを対象にした視角だ。その視角の欠如を友さんは指摘している。その視角をもってこそ、彼らの主体的な、主体的であろうとする意思に共鳴することがはじめて可能になる。意識的か否かは別にして、この際、一方が強調する排除の論理はむしろ害悪といわざるをえない。
だから、非国民通信さんもこれに呼応しているが、私は、大脇道場の指摘に全面的に共感する。麻生か、小沢かというほとんど意味のない議論にとどまっていてはならない。
ましてや大連立を一度ならず繰り返し、いままた持ち上げている今日なのだから。なおさらだ。
(「世相を拾う」08252)
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