非国民通信

ノーモア・コイズミ

期待はしてません

2008-12-01 23:06:50 | ニュース

賃上げと雇用の確保、首相が経団連会長ら財界トップに要請(読売新聞)

 麻生首相は1日夕、日本経団連の御手洗冨士夫会長、日本商工会議所の岡村正会頭らと首相官邸で会談し、雇用の維持などを要請した。

 首相は、「雇用と賃金は生活に直結しているので、何としても防衛しなければならない」と述べ、賃金引き上げや、非正規雇用者の安定雇用、採用内定を取り消さないことなど、雇用環境の改善を求めた。御手洗会長は「経済界としても努力する。内定取り消しは首相の要請を企業に周知する」と応じた。その上で、政府の追加景気対策について「一刻も早く確実に実行してほしい」と述べ、早期実施を求めた。

 方向性としては間違っていませんが、所詮はアリバイ作りに終わるであろう気がしてなりません。偽装請負など不法行為を犯しても居直るばかりの御手洗会長も、基本的には応じる構えのようですが、たぶんポーズだけでしょう。本気で取り組むつもりがあるなら、最低賃金の引き上げや形骸化している労働法制の厳密な適用など、強制的手段を視野に入れる必要があります。そうでもしないと財界は動きませんから。

 さて、今までの実績を考えればとても期待は持てないのですが、とりあえず方向性自体は間違っていません。ところが大脇道場さんが取り上げているように、この方向性自体にも批判的な人がいるようです。財界の立場から? それとも御用学者? いやいや、日頃は政府与党に否定的な人が、です。右から政府与党を批判している極右層でもなく、概ね左から政府与党を批判してきた人の中にも、ですね。曰く、不景気に賃上げを要請したら企業側は一層の人員整理に走る、雇用を控えるようになり失業者はますます増えるのだとか。

 何を今さら。そんなことは、政財界の御用学者がずっと主張してきたことではありませんか。だからこそ、戦後最長の景気回復が続く中でも「不景気だ」と彼らは主張してきたのです。不景気なのだから、雇用の正規化も賃上げも無理、そんなことをすれば企業側に人員整理への圧力が高まり、かえって失業者が増えると、御用学者は繰り返し唱えてきました。中にはそれを逆手に取り、正規職員の非正規化、賃金カットを進めることで雇用情勢が改善されると、実状を無視した主張を垂れ流してきた人も少なからずいるわけです。

 そして主張の正当性より「どちらの陣営に与しているか」を重視する人もいます。政府与党に批判的な「同志」でありさえすれば、見下げ果てたレイシストであろうと応援し出すような人、例えば城内実を持ち上げる(自称)リベラル・平和系ブロガーなどがそうですね。単に反政府与党でありさえすれば内容不問とばかりに馴れ合う人もいるわけです。で、まず何よりも「政府与党に反対であること」を最優先事項にするとなると、今回の麻生氏の行動も否定するしかない、その結果が御用学者の唱えるところと一致しても、政府与党に立ち向かうことが肝要、そうなるのでしょうか。

 それはさておき、好不況にかかわらず人件費を低く抑え込むことでしか存続できない企業(以下、欠陥企業と略します)が少なからずあるわけです。そしてこうした欠陥企業、ひいては欠陥企業の労働者を人質にとることで、待遇改善を求める声を抑えてきたのが従来の構造改革路線です。正規化と賃上げを進めたら欠陥企業が破綻する、欠陥企業が破綻したら、職を失う人が増える、雇用情勢が悪化する、そう強弁することで欠陥企業を守ってきたのが小泉、竹中以降にこそ顕著になった経済政策なのです。

 しかし私には思われるのです、こうした欠陥企業には速やかに退場してもらって、一刻も早く産業の集約化を進めるべきだと。賃上げを抑え込み、非正規雇用を増やすことで欠陥企業を延命させる、それによって欠陥企業の名ばかり正社員と非正規労働者の雇用を守ったところで、それは問題の先送りにしかなりません。生き残るべきは、雇用の保障と賃上げを実現できる会社だけで十分です。

 そこで重要なのは「痛みに耐えよ」と政府が責任を放棄することではなく、一時的な失業のリスクに対応できるだけの十分な社会保障と、公的機関による直接雇用の推進です。日本で失業のリスクが脅しとして機能するのは、要するに社会保障が機能していないから、仮に失業保険が適正に機能していれば、欠陥企業の破綻による失業のリスクは緩和されます。そして欠陥企業が潰れた市場には、同業の優良企業が進出するわけで、失業者の何割かはそこで雇用されます。勿論あぶれる人もいますが、そこは政府や自治体が直接雇用すべきですね、元より日本は公務員の数が少ない、みなし公務員や鯨類研究所のような天下り団体の職員を最大限に参入してさえ先進国の「純然たる」公務員の数に及ぶかどうかという水準、脆弱な公共サービス部門を拡充する必要もあるわけですから、なおさら国や地方が率先して直接雇用するべきです。まぁ、成功したモデルではなく、失敗したモデルに倣おうとするのが日本の政財界ではあります、今回の麻生首相の要請にしたところで、雇用保険料を引き下げた見返り云々という話もあるくらいですし……

 

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麻生憎けりゃ雇用まで憎い? (いるか缶)
2008-12-02 10:41:07
>主張の正当性より「どちらの陣営に与しているか」

このような方は政策支持への優先順位で、「自民党の連中が下野して涙目になるのを見て喜びたい」が1位なのでしょうか。この件も「麻生=敵キャラ=とりあえず踏みつぶせ!」のような思考回路に見えます。
フランスではルペンとシラクの決戦投票になったとき、リベラル系もシラクを支持したそうですが、日本ではルペンがうかりそうで怖いです。
ただ同時にこのような傾向がネット以外でどうなのかというのは疑問だなぁとも直観ですが思います。
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Unknown (Gl17)
2008-12-02 21:30:06
雇用を守ると言っても、現状既にガンガン首になってますし、近年ずっとそうでした。
大体、企業が良くなれば雇用者にも配分があると言われて、あった試しは少なくとも近年全くありません。悠長に構えてたら景気回復なんか終わっちまうよ!と思ってたら案の定です。
連中、いい時は「その内に報いる」と言っといて、悪くなったら即刻転嫁しやがりますからね。まだその時じゃないとか言って溜め込んでた内部留保?はどこ行ったのやら。

経営者はまあ社員の身内という面もあるでしょうが、労使が敵味方、利害対立者であるという視点が抜け落ちたのは、昨今の日本社会に損失と失策をもたらしたと考えます。
もし利益配分がもっとまともであったなら、内需がこれほど細ってしまうことも、海外失速でここまで急速なダメージを被ることもなかったでしょうに。
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Unknown (非国民通信管理人)
2008-12-02 23:49:51
>いるか缶さん

 このところはご無沙汰ですが、選挙の時期には「民主党の勝利」が目標になっている人が目立つなど、「政権交代してどうするか」ではなく、もっと手前の自民党打倒そのものが至上命題になっているケースも多々ありますよね。ちょっと単純すぎると言いますか、手段が目的化しているような。

>Gl17さん

 企業の景気が良くなれば、働く人の景気も良くなると言われ続けて久しいですが、戦後最長の景気回復の間、給与所得の平均は下がり続けたわけですから。今までが業績と反比例だったのに、景気が失速すれば、今度は比例するかのように言う、実に支離滅裂なのですが、どうも経営者でもないのに経営側に甘い考え方をする人が少なくないですよね。
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左翼のふがいなさ (焚火派GALゲー戦線)
2008-12-03 19:33:17
>正規化と賃上げを進めたら欠陥企業が破綻する、欠陥企業が破綻したら、職を失う人が増える、雇用情勢が悪化する、そう強弁することで欠陥企業を守ってきたのが小泉、竹中以降にこそ顕著になった経済政策なのです。

 そのとおりですね。 この新聞を発行している団体にも言ってきかせたいです。
http://www.kyoto-minpo.net/archives/2008/11/17/post_5045.php

>「最低賃金1000円は無理ではないか?」などの質問が出され、山下氏は「署名やデモは与党にもプレッシャーになっている。どんな議員でも聞かざるをえない」、こくた氏は「時給1000円の提案は中小企業への助成と一体のもの」

 中小商工業者が京都での党の主要支持基盤であることへの配慮及び政権党になったときに過渡的政策として大企業から収奪して家族経営的零細企業を軟着陸させるための手段として用いることまでは全否定しません。 しかし、ここが政権を取ろうが取るまいが、中小企業への助成が実現しようがしまいが(一体ではなく)、たかだか1週40時間盆・正月抜きで働いて年収200万にやっと届くくらいの年収を無条件で要求する政党すら国政に存在しないのがふがいないです。
 まあ、消去法でこの党に入れることになりそうですが。


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Unknown (非国民通信管理人)
2008-12-03 23:42:23
>焚火派GALゲー戦線さん

 1000円の最低賃金ですら不十分だというのに、僅か数円の誤差のような金額ですら遠慮してものを言う世相ですからね、相対的には頑張っている方ですが、まだまだ不十分ですね。どこも優劣(強弱)を善悪にすり替える発想が根底にある、大企業を「悪」とする一方で経営基盤の弱い中小零細企業を「善」と見る発想から抜け出せない限り、本文で述べたような「欠陥企業」に遠慮した、腰の引けたレベルに止まることでしょう。
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