「植草一秀の『知られざる真実』」
2018/07/19
安倍内閣売国政策中核としての規制改革会議
第2091号
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農林水産大臣を歴任し、オールジャパン平和と共生運営委員ならびに顧問を引
き受けてくださっている弁護士の山田正彦氏が新著を出版された。
『タネはどうなる?!
-種子法廃止と種苗法運用で-』
(サイゾー出版)
https://amzn.to/2Lsr8nQ
帯には
「種子法廃止が意味するものとは?
自家採取ができなくなる?!
日本の食料の最大の危機をあきらかにする
元農水大臣・山田正彦渾身の一冊」
とある。
安倍内閣は主要農作物種子法を廃止し、種苗法の運用を大幅に変更している。
これらの施策は誰のためのものなのか。
そして、この施策はTPPといかなる関係を有しているのか。
最大の問題は、これらの重大問題が公の場でのオープンな議論なしに、闇の世
界で検討、決定され、国会が単なる承認機関と化してしまっていることだ。
日本の国民に重大な影響を与える重大な施策が、国民の意識、認識のないなか
で音速の勢いで推進されている。
支配しているのはハゲタカ=グローバル巨大資本である。
恐るべき現実=知られざる真実に私たちは気付かなければならない。
山田正彦氏はTPP阻止のために体を張って力を注がれてきた。
私的な経済的利得など皆無である問題に、全身全霊の力を注がれてきている。
その激務の合間を縫って、次から次に著作を執筆されて発刊されている。
その尽力に本当に頭が下がる。
安倍政治の下で、こうした国士然とした政治家は誠に稀有の存在になってい
る。
鳩山友紀夫元首相が私財を投入して東アジア共同体の創設、平和と共生=友愛
社会の創設に心血を注がれている姿と重なる部分が多い。
国のLeaderには、このような方々になってもらいたいというのが圧倒的多数の
市民の声だろう。
安倍政治には、「今だけカネだけ自分だけ」の「三だけ主義」の人間だけが集
まり、最高幹部が国会において誠意ある対応をまったく示さず、ひたすら、ス
ピーチライター・官僚が用意した原稿を読むだけのReaderと化している。
その用意された原稿すらルビが振ってなければ正しく読めないという、Reader
にもなりきれない者が日本の行政機構のトップに居座っていることは、日本国
民にとっての悲劇である。
しかし、その責任の一端が主権者である国民自身にあることも忘れてはならな
い。
主要農作物種子法廃止法案は2017年2月10日の閣議決定で突然国会に提
出された。
政府は「種子法は戦後食糧増産のために、コメ、麦、大豆等主要な穀物の種子
を種子法で安定して供給できるように制定された法律で、コメも消費が落ち込
んで生産が過剰になった現在ではその役割は終えた」と説明したが、真っ赤な
ウソである。
政府は「国家戦略として農業の分野でも民間の活力を最大限活用しなければな
らない現代、民間による優秀な種子の利用を種子法が妨げているので廃止す
る」と説明しているが、行政としての役割をはき違えた主張である。
詳しくは『タネはどうなる?!』をご高読賜りたいが、国民にとって大切な食
糧である米、麦、大豆などの主要農作物について、その種子を国が管理して農
家が安価に安定的に種子を調達できるように、「公共財」として守ってきたの
である。
ところが、ハゲタカ資本が、この種子をビジネスにしてきた。
ハゲタカ資本にとって、日本の種子法は邪魔な存在である。
国が管理して安価で優れた種子を安定供給したのでは、民間の種子ビジネスが
成り立たない。
そこで、安倍内閣に命令して種子法を廃止させたのだ。
さらに、安倍内閣は「種苗法」の運用を根底から改変する方針を示している。
種苗法の第21条は、育種登録された種子でも自家採取して増殖することを認
めており、同条第3項で例外規定として農水省が省令で定める品種について
は、この条文が適用されず、自家採取を禁ずるものとしている。
ところが、安倍内閣はこの規定を根底から覆す方針を示している。
自家採取を原則禁止する方向に転換し、法改定も視野に入れていることがすで
に報じられている。
私たちの食糧の根源である「種子」がハゲタカ資本に完全支配されようとして
いる。
極めて重大問題であり、山田正彦氏の新著は日本の国民にとって必読の書であ
る。
2018年5月15日の日本農業新聞1面に
「農水省は種苗の時価増殖原則禁止へ転換、法改正も視野」
の活字が躍った。
国民がほとんど知らぬ間に、国会でも審議らしい審議が行われぬまま、「主要
農作物種子法」が廃止され、「農業競争力強化支援法」が成立した。
「農業競争力強化支援法」と表記されると見栄えが良いが、これが安倍内閣の
常套手段である。
「戦争法制」は「平和安全法制」
「共謀罪」は「テロ等準備罪」
「セクハラ」は「言葉遊び」
「働かせ方改悪」は「働き方改革」
に言葉を変える。
「ペテン師集団」、「詐欺師集団」には最大の用心が必要だ。
「農業競争力強化支援法」は農業資材の銘柄が多く、経費高になっているから
集約するべきだとの論法で、種子についての詳細な検討もせずに、種子につい
ても銘柄を集約するべきとの議論になったという。
この過程で自民党の小泉進次郎議員が、農家は農協から肥料、農薬、農機具な
どの農業資材を高く買わされているとのキャンペーンを展開し、ハゲタカ族に
乗っ取られた農水省が主導してJA全中が事実上解体されてきた。
ハゲタカが日本の食糧、日本の農業を支配する上で、もっとも邪魔な存在が農
協=JA全中なのである。
「競争力強化支援」の美名を用いて、日本の農業、国民の安全な食糧を守る主
体である農協=JAが破壊されつつある。
山田氏の著書に掲載されている印鑰智哉(いんやく ともや)氏提供の資料に
よれば、世界の種子市場の7割弱、世界の農薬市場の8割弱が、モンサント、
ダウ・デュポン、シンジェンタなどの遺伝子組み換え多国籍企業6社によって
支配されている。
遺伝子を組み替えた種子による品種は、グリホサートなどの劇薬を含む有害な
農薬に耐性を持つ。
強烈な農薬を散布しても生育する遺伝子組み換え品種の種子と強烈な農薬が
セット販売される。
ひとたび強烈な農薬を散布した土壌では、遺伝子組み換えの種子以外では生育
しなくなる。
農家は、遺伝子組み換え種子と激烈な農薬購入に手を染めたら最後、永遠に種
子と農薬のセット商品を購入し続けなければならない。
種子は農家にとっての必需品であり、売り手が寡占状況であれば、価格は引上
げし放題になる。
そして安倍内閣が進めている種苗法の運用改変は、種子の自家採取を原則禁止
するものになる。
TPP11では締約国がUPOV条約を批准することを必要としている。
UPOV条約とは1972年に大企業が品種の知的所有権を主張したことに
よって締結された条約で、1978年と1991年に改定され、日本は199
1年に改定UPOV条約を締結している。
種苗法第21条は、育種権者の効力が及ばない範囲を定めているが、その第3
項に農水省の運用規則によって例外品種を定められる規定が盛り込まれてい
る。
この規定を「活用」して、すでに農水省は自家採取を禁止する品目を大幅に拡
大してきているのだ。
これを例外品目の拡大ではなく、自家採取禁止を原則とする方向に法律そのも
のが大改定される可能性まで浮上しているのだ。
要するに、安倍内閣は、日本の主権者国民の利益ではなく、ハゲタカ資本=多
国籍企業の利益拡大のために、国民に情報を知らせず、国会で議論もせず、た
だひたすら「数の力」を強引に活用して、暴走を続けているのだ。
当初、TPP交渉には米国が参加していた。
そして、2016年2月4日にニュージーランドでTPP協定に米国を含む1
2ヵ国が署名した。
その際、日本と米国は、日米間の並行協議によって取り決めた事項をTPP協
定の付属文書として署名した。
日米並行協議はTPPが発効されなければ無効になるとされていたが、安倍首
相は国会で、TPPの発効が不可能になっても有効であると答弁した。
この経緯を糺す必要があるが、現実に安倍内閣は日米並行協議の付属文書が有
効であるとしている。
この付属文書こそ決定的に重大なものである。
タイトルは
「保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書
簡」
であり、そのなかの「投資・企業等の合併買収 3.規制改革」の項目に以下
のように記されている。
「日本国政府は、2020年までに外国からの対内直接投資残高を少なくとも
倍増させることを目指す日本国政府の成長戦略に沿って、外国からの直接投資
を促進し、並びに日本国の規制の枠組みの実効性及び透明性を高めることを目
的として、外国投資家その他利害関係者から意見及び提言を求める。
意見及び提言は、その実現可能性に関する関係省庁からの回答とともに、検討
し、及び可能な場合には行動をとるため、定期的に規制改革会議に付託する。
日本国政府は、規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる。」
安倍内閣は米国政府に首根っこを完全に掴まれて、米国のハゲタカ資本=多国
籍企業のただ言いなりに動いているだけなのである。
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