「植草一秀の『知られざる真実』」
2019/08/26
野党共闘根幹となる概念は「政策連合」
第2415号
ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2019082620260857821 ──────────────────────────────────── 8月25日に投票日を迎えた埼玉県知事選で元参議院議員の大野元裕氏が勝利 した。
知事選は与野党の事実上の一騎討ちの構図になり、参院選後初めての与野党全 面対決選挙となって注目された。
与党は元プロ野球選手の青島健太氏を擁立し、政権幹部が総力を挙げて支援し たが敗北した。
野党陣営では立憲民主党と国民民主党が院内会派を創設することに合意してお り、与党対野党共闘の図式での選挙の結果がどうなるか、注目を集めていた。
開票結果は以下の通り。
大野元裕 無所属・新 923,482 青島健太 無所属・新 866,021 浜田 聡 NHKから国民を守る党・新 64,182 武田信弘 無所属・新 40,631 櫻井志津江 無所属・新 34,768
大野氏は旧民主党政権で防衛政務官を務めたのち、立憲民主党に所属する参議 院議員だったが、2期目の途中で辞職して今回の知事選に立候補した。
4期16年知事を務めた上田清司氏は、5選出馬をせずに大野氏の支援に回っ た。
元民主党参議院議員の行田邦子氏も知事選出馬の意向を示していたが、最終的 に出馬をしなかった。
その上で、投票日直前に青島氏支持の意向を表明した。
行田氏の行動は主権者の不信感を招くものだ。
極めて複雑怪奇な現象が続いたが、結局のところ、野党共闘候補が勝利を収め た。
与党では菅義偉官房長官が2度も応援に入った。
事前のメディア情勢調査では青島氏が優位とされた。
投票日が迫るに連れて接戦との報道が拡大したが、与党にとってはよもやの敗 北になった。
投票率は32.31%で,極めて低かった。
それでも、4年前の前回選挙の投票率よりは5%ポイント上昇した。
自公が国政で多数議席を確保している現実は低投票率に支えられたものだ。
国政選挙では主権者選対の約25%が自公に投票している。
4人に1人しか与党に投票していないのだが、全体の投票率が5割前後に低迷 しており、非自公の候補者への投票が分散すると、当選者1名の選挙区で自公 候補が勝利することが多い。
このメカニズムによって,自公はわずか25%の得票で日本政治を支配すると いう歪んだ現実を形成している。
詳しくは拙著
『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書) https://amzn.to/2WUhbEK
をご高覧賜りたい。
この基本構図を踏まえると、投票率3割の選挙で自公候補が敗北するのは、自 公にとってはあってはならない事態だ。
しかし、自公候補は確かに負けた。
8月18日付本ブログ、メルマガ記事で埼玉県知事選の重要性を指摘した。
自民党はいまだに参院選の総括すらできていない。
参院選で自民党は改選議席を9つ減らした。
安倍首相が至上命題としている憲法改定に必要な参院3分の2議席も割り込ん だ。
衆院任期が残り2年となり、安倍政治の基本進路が不明確になっている。
「日米同盟」と叫ぶ安倍首相であるが、米国のトランプ大統領には完全に無視 されている。
北朝鮮のミサイル発射は国連決議違反であると安倍首相が述べる面前で、トラ ンプ大統領は「そうは思わない」と明言する。
安倍首相はあれだけ叫んでいた北朝鮮に対する「圧力外交」をトランプ大統領 に、なぜ直接主張しないのか。
結局、トランプ大統領には何一つ日本の主張をぶつけることすらできない現実 が改めて浮き彫りになっている。
韓国がGSOMIAを破棄したことについて、トランプ大統領から「失望し た」との言葉が欲しかった安倍首相であると見られるが、トランプ大統領はG SOMIAについて完全スルーした。
その一方で、日米通商協議の終結を宣言され、日本はTPPを上回る失点を重 ねることになった。
自公支持者でさえも投票行動に意欲を持てない事態が始動したようだ。
消費税増税を強行しながら、韓国敵視政策を続ければ、日本経済が驚天動地の 大不況に転落することは想像に難くない。
安倍自公政権が崩壊する状況を踏まえて政権刷新の戦術策定を急がねばならな い。
自公に対する支持が急速にしぼんでいることで、野党共闘には追い風が吹いて いる。
しかし、この風を活かさなければ未来への展望を拓けない。
立憲民主党が国民民主党との院内会派創設に合意したが、そうなると、201 7年10月総選挙に際しての分裂騒動は一体何であったのかということにな る。
大事を成し遂げるには腹を据えることが必要だ。
確固たる姿勢がものごとを成就させるときに必要なのだ。
愛知トリエンナーレで少女像の展示を行うには,相応の考察と覚悟が必要だっ たはずだ。
やるからには、腹を括って前に進まねばならない。
腹を括って事に当たらなければ、何も残らない。
腹を括る、不退転の姿勢が欠けていては、ものごとを成就することはできな い。
野党共闘のあり方を考える上で重要なことは
「政策基軸」
である。
主権者が政治に求めているのは「政策」であって「政争」でも「政局」でもな い。
現在の安倍政治には安倍政治なりの政策路線がある。
これに賛成する主権者は安倍政権与党を支援するだろう。
しかし、その政策に反対の主権者が多数存在する。
この主権者の声をすくい上げ、この主権者に寄り添うのが野党の立場である。
明確な政策の対立軸を定め、基本政策路線を明確にして大きな連帯を形成す る。
これが野党共闘を考える際の基本的な姿勢になる。
オールジャパン平和と共生は、昨年4月の集会で基軸に据えるべき五つの経済 政策の提案を示した。
消費税廃止へ 最低賃金全国一律1500円政府補償 奨学金徳政令 一次産業戸別所得補償 最低保障年金確立
の五つだ。
もとより、オールジャパン平和と共生は、これ以外に、
原発稼働即時ゼロ 辺野古米軍基地建設中止
を主要政策として掲げてきた。
これらの政策を基軸にして主権者と政治勢力の大同団結、連帯を呼びかけてき たのだ。
このなかで、本年3月2日に開催した統一地方選・参院選に向けてのオール ジャパン総決起集会では、とりわけ重要と判断する三つの施策を明示し、この 政策公約を掲げる候補者を全面支援する方針を決定した。
その三つの施策とは、
消費税廃止・減税 最低賃金全国一律1500円政府補償 原発稼働即時ゼロ
である。
野党共闘を推進することは正しいが、その際,重要になるのは政策の共有であ る。
立憲民主党と国民民主党との間での政策共有において,懸念が持たれるのは
消費税減税の政策公約
原発稼働即時ゼロ
の政策公約だ。
この基本政策に関する公約を共有できないのに合流を強行するのは「数合わ せ」、「野合」のそしりを免れない。
消費税増税を推進すること、原発再稼働を推進すること、は安倍自公政権の基 本政策路線であり、この政策を掲げるなら、野党共闘側に加わることは適正で ない。
水と油の混合物の状態に戻すことは、日本の政治刷新を妨げる最大の要因にな る。
逆に言えば、日本の政治基本構造を変えたくない勢力は、野党勢力のなかに 「隠れ与党勢力」を紛れ込ませることに注力するだろう。
これまでも注力し、その結果、鳩山内閣の政治刷新路線が破壊されたのだ。
安倍自公の支持基盤がいよいよ弱体化するこのチャンスを活かすためには、野 党勢力の側の政策純化が必要不可欠だ。
オールジャパン平和と共生は、オールジャパンで基本政策路線を共有する勢力 の大同団結を目指すことを表現する言葉として
「オールジャパン政策連合」
を掲げることにする。
たんなる数合わせではなく、政策を基軸にした大同団結、連帯を重視し、
「政策連合」
の樹立を呼びかけたい。
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