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地球温暖化論議に欠落している最重要問題

2019年12月15日 13時01分10秒 | 政治

 

                                

                   「植草一秀の『知られざる真実』」
                                    2019/12/15
              地球温暖化論議に欠落している最重要問題
             第2505号
   ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2019121506000061706 ──────────────────────────────────── 地球の表面温度が上昇傾向を示しているのは特定の制約条件を置けば事実であ ろう。
気温の上昇が続けば、さまざまな影響が生じるのも事実である。
プラス面もあるがマイナス面もある。
しかし、地球の歴史上、表面温度の変化は大規模に繰り返されてきた。
もっとも深刻な影響が広がったのは、表面温度が低下した局面である。
「地球寒冷化」の方が全体としては深刻な影響をもたらしてきたと言える。
「パリ協定」
は、近年に観察されている表面温度上昇の原因が化石燃料消費に伴うCO2発 生量増加によるものと断定して、CO2の発生量削減を取り決めたものであ る。
しかし、表面温度の上昇が化石燃料消費増加に伴うCO2発生量増加によるも のであるとは、実は断定できない。
「気候の複雑なシステムは根本的に予測が困難である」
「人間活動が温暖化の支配的な原因かは明らかでない」
とする、科学的な見解が広く表明されている。
いわゆる「地球温暖化仮説への懐疑論」は、科学的根拠をもって広く保持され ているものだ。
しかし、マスメディアは、
「人間活動による地球温暖化仮説」に対する懐疑論に対して、説得力のある根 拠を示さずに、頭ごなしにこれを批判する。
このようなヒステリックな対応に疑念を持つことが重要だ。

地球の環境破壊を望む者は少ない。
自然災害の増加を望む者も少ない。
地球環境の悪化が進行している主因がCO2発生であることが疑いのない真実 であればCO2発生を抑制することが重要ということになるだろう。
しかし、地球の表面温度の上昇がCO2を主因とするものなのかどうかは断定 しきれない。
地球の表面温度は長期で捉えると大きな変動を示している。
第2次大戦後というようなミクロの時間軸ではなく、1000年単位、1万年 単位、1億年単位で大きな変動が示されてきた。
はるかに温暖な時代もあった。
はるかに寒冷な時代もあった。
生物はそれぞれの環境のなかで多様性の形状を変化させてきた。
したがって、現在観察されている表面温度の上昇について、その背景を根拠不 十分に断定することは控えるべきだ。
この問題と離れて、人類として、どのようなライフスタイルを追求するのかを 考えるべきだ。
化石燃料の大量消費がさまざまな弊害をもたらしているのは事実である。
エネルギー源として、再生可能エネルギーにシフトさせること、自然エネル ギーにシフトさせることに反対する人々は少ないと思う。

問題はCO2削減が原発稼働に結びつけられることだ。
火力発電と原子力発電を比較すれば、圧倒的に弊害が大きいのは原子力発電で ある。
この議論を行うべきである。
この議論を抜きにCO2削減の主張を拡大すれば、必ず原子力発電活用に議論 が導かれる。
ここを避けているから地球温暖化論議に対する疑惑が払拭できないのだ。
スリーマイル、チェルノブイリ、フクシマで事故が発生した。
フクシマの事故はまったく収束していない。
フクシマではいま、汚染水の管理が限界に到達しつつある。
この放射能汚染水を海洋に放出することが検討されている。
元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏の新著 『フクシマ事故と東京オリンピック【7ヵ国語対応】』 “The disaster in Fukushima and the 2020 Tokyo Olympics” (径書房) https://amzn.to/2OAIdzO
から引用させていただく。
「広島原発168発分のセシウム137が大気中に放出された。
広島原爆1発分の放射能でさえも猛烈に恐ろしいものだが、なんとその168 倍もの放射能が大気中にばらまかれたと日本政府が言っているのである。
セシウム137はウランが核分裂して生成される核分裂生成物の一種であり、 フクシマ事故で人間に最大の脅威を与える放射性物質である。」
東京オリンピックどころではない。
地球温暖化の論議の前に原発の是非を論じることが先決だ。

小出氏の言葉を続けさせていただく。
「筆舌に尽くしがたい被害と被害者が生まれた。
一方、原発の破局的事故は決して起こらないと嘘をついてきた国や東京電力 は、誰一人として責任を取ろうとしないし、処罰もされていない。
絶大な権力を持つ彼らは、教育とマスコミを使ってフクシマ事故を忘れさせる 作戦に出た。
そして、東京オリンピックのお祭り騒ぎに国民の目を集めることで、フクシマ 事故をなきものし、一度は止まった原発を再稼働させようとしている。
フクシマ事故が起きた当日に発令された「原子力緊急事態宣言」は事故から8 年経った今も解除できないままである。
しかし、国民のほとんどはその事実すら知らない。」

1年間に20ミリシーベルトという被曝量は、「放射線業務従事者」に対して 国が初めて許した被曝の限度である。
「放射線業務従事者」だけが「放射線管理区域」への立ち入りを許される。
この「放射線管理区域」において許容される放射線被曝上限が年間20ミリ シーベルトなのだ。
その「放射線管理区域」においては、放射線業務従事者であっても、水を飲む ことも食べ物を食べることも禁じられている。
寝ることも禁じられ、トイレすらなく、排せつもできない。
「ところが、国は、今は緊急事態だとして、従来の法令を反故にし、その汚染 地帯に数百万人の人を棄て、そこで生活するように強いた。」
そしてこの措置を強いている、フクシマ事故が起きた当日に発令された「原子 力緊急事態宣言」は事故から8年経った今も解除されていない。
解除の見通しが存在しないのだ。

私たちはものごとの優先順位を正しく設定することが重要だ。
第一に重要なことは原発をなくすこと。
原発稼働を即時ゼロにし、原発を完全に廃炉にする。
この決断こそ最優先の課題だ。
化石燃料の消費を減らし、CO2の排出を抑制することは正当だ。
しかし、そこには最重要の条件がある。
それは、原発に依存しないことだ。
原発を完全に排除し、その上で化石燃料の消費を減らす。
選択肢は再生可能エネルギー、自然エネルギーを活用するというところにしか ない。
原発を排除しない地球温暖化対策であるなら、原発から利得を得る利権グルー プはこれを全面的に支援するだろう。
地球温暖化対策の巨大なプロジェクトが疑惑に包まれている最大の背景がこの 点にある。

地球の表面温度変化にもっとも大きな影響を与えてきたのは太陽活動の変化で ある。
これには太刀打ちできない。
地球の表面温度は大きく上昇することもあり、大きく低下することもある。
氷河期には多くの生命が失われた。
この問題と切り離して、人類のライフスタイルをどのように改変するのかを考 察することは有益だ。
資源の大量消費、大量廃棄のライフスタイルが好ましいものであると考える者 は少ない。
自然の循環体系を破壊しないライフスタイルに転換することを工夫してゆくべ きだろう。
グローバリズムからローカリズムへの転換の主張には大きな説得力がある。
フクシマ事故の収束さえできていない私たちは、まずは、原発排除というとこ ろから始めるべきだ。
原発を排除し、化石燃料消費を抑制するなら、結論はひとつしかない。
自然エネルギー、再生可能エネルギーの活用だ。
太陽光を活用するエネルギー確保がもっとも現実的である。
原発排除を明確にしない地球温暖化論議には深い疑念がつきまとっていること を確実に認識しておくべきだ。



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