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五輪ファスト安倍暴政が最悪結果をもたらす

2020年03月17日 09時30分33秒 | 政治

                                


                      「植草一秀の『知られざる真実』」

                                       2020/03/16

五輪ファースト安倍暴政が最悪結果もたらす

           第2578号

   ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2020031619240664656
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米国のFRBが緊急利下げを実施した。

米国の政策金利であるFFレートは、FRB議長にパウエル副議長が就任した
2018年1月に1.25~2.50%の水準だった。

2018年初、FRB議長がイエレンからパウエルに交代する際、金融市場は
先行きを警戒した。

パウエル新議長がトランプ大統領への配慮から必要な金融引き締めを実行しな
いのではないかとの不安が広がったのだ。

この懸念を払拭するようにパウエル議長が行動した。

就任直後の2月27日の議会証言で、金融引き締めに積極的なスタンスを明示
した。

この方針を実際の政策運営で実証するかのように、パウエル議長率いるFRB
が3、6、9、12月に利上げを断行した。

FFレートは2.25~2.50%の水準に引き上げられた。

2018年12月のFOMCでは2019年にさらに2度の利上げを実施する
見通しが示された。

FRBの利上げ断行に対して、金融市場は金融引き締めの行き過ぎを警戒して
株価急落の反応を示した。

この状況を踏まえてパウエル議長は2019年1月4日に、

「金融政策はリスク管理だ。迅速かつ柔軟に政策を見直す用意がある。」

と発言した。

金融政策の方向を引き締めから緩和に転換することが示唆された。

株式市場はパウエル発言を受けて反発に転じた。

ところが昨年5月、トランプ大統領が米中貿易戦争を拡大させる方針を示して
株価が反落した。



この流れを転換させたのもパウエル議長だった。

6月4日にパウエル議長が、

「貿易交渉などの問題が米経済の行方に与える影響を注意深く観察し、これま
でと同様、景気拡大を維持するためわれわれは適切な行動を取る。」

と発言した。

利下げ実施を示唆したのだが、この発言を契機に株価が反発に転じた。

実際にFRBは7月、9月、10月のFOMCで3回連続の利下げを実施し
た。

FFレートは1.5~1.75%の水準に低下した。

12月のFOMCでは2020年には利下げが実施されない見通しが示され
た。

ところが、2020年2月末以降、コロナショックで株価が急落し、FRBの
方針が急転換した。

FRBは3月3日に電撃的な緊急利下げを決定した。

利下げ幅は0.5%でFFレートは1.0~1.25%に引き下げられた。

しかし、金融市場の反応は限定的だった。

流れを転換させることに失敗したのである。

NYダウは3月12日に21200ドルにまで下落した。

この株価急変を受けてトランプ大統領が3月13日に国家非常事態宣言を発し
た。



500億ドルの緊急対策が示されたこともあり、NYダウは前日比1985ド
ル上昇した。

このタイミングで今回の利下げが決定された。

3月15日の日曜日の決定。

異例のタイミングだった。

トランプ大統領の国家非常事態宣言で株価が過去最大の上昇を示したタイミン
グで思い切った施策を打つことで株価の流れを完全に転換させることが狙われ
たと思われる。

FFレートの引き下げ幅は1.0%。

FFレートの誘導目標は0.0~0.25%に引き下げられた。

3月17~18日に次のFOMCが予定されており、利下げが実施されること
が予想されていた。

FRBがFFレートをゼロ水準にまで引き下げることもあり得ると考えられて
いた。

しかし、3月15日の日曜日に決定されたことはサプライズである。

ところが、先物市場ではNYダウが1800ドルも下落している。

3月13日の株価上昇がほぼ消滅する株価反落が広がってしまっている。

パウエル議長はトランプ大統領とあうんの呼吸で1%幅の利下げを誘導したと
見られる。

政策を市場がどう評価するのか。

判定には数日の日数が必要だが、十分な効果を発揮できないリスクが浮上して
いる。

最大のリスクは、これ以上金利を下げる余地がなくなってしまったこと。

日銀も3月16日に追加金融緩和政策を決定したが、日経平均株価は前日比4
29円安で取引を終えた。

極めて深刻な状況が広がり始めている。

『金利・為替・株価特報』(TRIレポート)
http://uekusa-tri.co.jp/report-guide/

『低金利時代、低迷経済を打破する最強資産倍増術』(コスミック出版)
https://amzn.to/38toyZC

もご参照いただきたい。



2.5%のFFレートは、0.25%幅での利下げを行う場合、10回の利下
げを実行できる水準である。

昨年3回利下げを実行してFFレート誘導水準は1.75~1.50%水準に
引き下げられた。

この水準でも、0.25%幅の利下げなら、7回の利下げを実行できる。

しかし、パウエル議長は3月3日の0.5%幅の利下げ、3月15日の1.0
%幅での利下げでFFレートの利下げ余地をすべて使い切ってしまった。

それにもかかわらず、効果がほぼゼロという事態が発生するリスクが浮上して
いる。

コロナウイルス感染拡大による影響は着地点が見えていない。

欧米での感染拡大が始動したところである。

収束の見通しは立っていない。

WHOがパンデミックを宣言したが、2009年の新型インフルエンザではパ
ンデミックが2009年4月から2010年8月まで持続した。

コロナウイルスの致死率は新型インフルエンザの10倍であるとも見られてい
る。

世界中に感染が広がり始めており、今後は南半球の各国でも感染が拡大するこ
とが予測されている。



日本でも感染が拡大している可能性が高い。

安倍内閣はPCR検査を封じ込めており、感染者数の実態を掴めない状況に
陥っている。

二つの大きなリスクが指摘されている。

第一は、軽症および無症状の感染者の確認が行われないために、この軽症感染
者、無症状感染者が感染を拡大させてしまうこと。

第二は、高齢や基礎疾患を持つ感染者の感染確認が遅れ、重篤な結果がもたら
されてしまうこと。

各国は検査拡充を基本に据えている。

当然の対応である。

ところが、安倍内閣はPCR検査妨害という最悪の対応を続けている。



悲惨なことは、この間違った方針を付和雷同で肯定する勢力が存在すること
だ。

安倍内閣がPCR検査を妨害しているのは、ただひとつ、コロナウイルス感染
者数を少なく見せることにある。

東京五輪開催を強行するために、確認感染者数を抑制することが最重視されて
いるのだ。

しかし、検査抑制が感染を拡大させる原因になる。

このことを踏まえれば、検査を妨害することは自死行為でしかない。

検査を実施する者の安全確保

病床不足の回避のために軽症者・無症状感染者の自宅での療養

を徹底すれば、検査を拡大することのデメリットを除去できる。



安倍首相は検査能力が拡大したことだけを述べて、検査を拡充する方針を示さ
ない。

国民の生命と健康を重視していないからだ。

現状を冷静に判断すれば、今夏の東京五輪開催は不可能である。

この現実から目を逸らして、PCR検査を妨害することには百害あって一利が
ない。

日本全国で爆発的感染拡大に移行するのは時間の問題だと考えられる。

日銀はETF購入金額を倍増し、REIT購入枠を拡大した。

日銀が直接株式やREITを購入するのは邪道だ。

株価やREIT指数の人為的操作は百害あって一利なしだ。

株価が上昇するような施策が必要なのであって、株価を人為的に買い支える施
策は百害あって一利がない。

日本の長短金利には引き下げの余地がない。

米国も利下げの余地を消滅させてしまった。

米国のゼロ金利政策の効果が、若干の時間差を伴って表れることもあるから、
予断を持つべきでないが、今回の利下げが効果を発揮しない場合には、米国で
も政策対応は窮地に追い込まれることになる。

世界経済の悪化、株式市場崩落による影響に対して十分な警戒を保持すること
が求められる。