「植草一秀の『知られざる真実』」
2018/05/13
柳瀬唯夫氏国会証人喚問が必要不可欠
第2038号
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安倍政治に欠落しているものは品格と誠意である。
森友、加計で明らかになっている事実が問うものは政治の品格そのものであ
る。
安倍昭恵氏が森友学園に深く関わった。
安倍昭恵氏は森友学園の幼稚園の教育現場に感涙して新設小学校の名誉校長に
就任した。
安倍晋三氏は森友学園について「この学校の先生方の教育に対する熱意は素晴
らしいと妻から聞いている」と国会答弁で明言した。
そして、安倍昭恵氏が新設小学校の名誉校長に就任して以降に、森友学園の籠
池泰典理事長から小学校用地について相談を受けて公務員秘書に指示をして財
務省と折衝させたと見られている。
その結果として時価10億円相当の国有地が実質200万円で払い下げられ
た。
財務省は払い下げ価格を人為的に引き下げるためにゴミ埋設量の改ざん=増量
を図ったことが明らかになっている。
日本の刑事司法が適正に機能しているなら、国有地不正払下げを刑事事件とし
て立件する必要がある。
また、財務省は安倍晋三氏が「自分や妻がかかわっていたら総理大臣も国会議
員も辞める」と国会で明言したこととの整合性を取るために、決裁公文書を大
規模に改ざんした。
日本の刑事司法が機能しているなら、虚偽公文書作成事件として立件する必要
がある。
この問題で疑惑を晴らさなければならない責任を負っているのは安倍首相夫妻
である。
とりわけ直接の当事者は安倍昭恵氏であり、安倍昭恵氏に対して公の場で説明
責任を果たさせないことが問題長期化の主因である。
安倍晋三氏は籠池泰典氏に対して、いきなり証人喚問を実施することを指揮し
た。
だからこそ、安倍昭恵氏の証人喚問が求められているのである。
自分の行動がそのまま自分に跳ね返ってきているだけなのだ。
北朝鮮に拘束されていた米国人3名が解放されて米国に帰還した。
その一方で、日本の拉致問題は1ミリも動いていない。
「圧力、圧力」と叫び、韓国の文在寅大統領が「対話」による事態打開に尽力
しようとした際にも「対話のための対話には意味がない」と批判した。
しかし、北朝鮮は拘束米国人3名を解放する一方で、拉致問題については改め
て「解決済み」と言明している。
政治は結果において評価される面が強い。
拉致被害者の家族などの関係者は、安倍首相の対北朝鮮外交に対する憤りを強
めていると推察される。
森友問題に安倍昭恵氏が関わっていることは明白な事実であり、安倍首相が疑
惑の払拭を求めるなら、安倍首相が率先して安倍昭恵氏に対する質疑の場を設
定するのが筋である。
それが主権者国民に対する誠意ある対応である。
果たすべき説明責任を果たさず、逃げの一手で乱暴な国会運営を指揮する姿勢
には、一片の品格も感じられない。
加計疑惑は透明、公正、公平であるべき行政が歪められたのではないかという
のが問題の核心である。
安倍首相は加計孝太郎氏と極めて親しく、会食やゴルフなどを重ねてきた。
第2次安倍内閣が発足して半年後の2013年5月に山梨県の安倍氏別荘で
バーベキューとゴルフが行われた。
この席に柳瀬唯夫氏も同席していた。
2015年3月から6月にかけて柳瀬氏は首相官邸で3回にわたって加計学園
関係者と面会している。
国家戦略特区の事業として獣医学部新設が提案された時期である。
国家戦略特区の事業は自治体によるものであるが、当該自治体ではなく事業実
施主体である加計学園との面会を重ねていた。
柳瀬氏は加計学園以外の国家戦略特区の事業実施主体と面会した事例はないと
している。
国家戦略特区では自治体による申請が認められたのちに、自治体が事業者を公
募して事業実施主体を決定するとのプロセスが取られる。
ところが、この獣医学部新設のケースでは、当初から事業実施主体になるかど
うかも分からなはずの加計学園と3度もの面会が重ねられていたのである。
このことについて、安倍首相は2017年1月まで、加計学園が国家戦略特区
の事業として獣医学部を新設する意向を有していたことを知らなかったと発言
している。
しかしながら、安倍首相が実際には2015年の段階で加計学園の意向を知っ
ていたことは、客観的に見れば、合理的な疑いを差し挟む余地がない程度に角
度の高いものである。
このようなことを強弁し続けることが、品格と誠意の欠落を指摘される背景な
のである。
財務省の福田淳一前事務次官によるセクハラ事案において、財務省は事実関係
を調査したうえで、セクハラ行為があったと認定して懲戒処分を下した。
国家公務員法、人事院規則、人事院懲戒処分の指針に基づく措置である。
この事案について、麻生太郎財務相が「個人的にはセクハラ行為を認定してい
ない」、「はめられた可能性がある」と発言してきたことについては、麻生太
郎財務相の責任を問う必要がある。
毒物混入の食品を販売して健康被害が発生したときに、食品販売会社が事実関
係を調査し、毒物混入があったとして社内処分を行った際に、この企業の社長
が外部に対して
「個人的には毒物混入があったとは認定していない」
「健康被害が出たと言っている人が仕組んだ罠である可能性を否定できない」
と発言しているようなものである。
不祥事を引き起こした企業の社長がこのような発言を示したなら、メディアは
一斉に社長の責任を追及し、辞任に追い込むだろう。
麻生太郎氏の言動に対してメディアが厳しい追及を実行するべきであるのに、
その責務を果たさない。
品格なき政治権力、誠意なき政治権力をもたらしている責任の一端は権力迎合
のマスメディアにもある。
2016年8月に第3次安倍第2次改造内閣で山本幸三氏が内閣府特命担当大
臣(地方創生・規制改革)に就任してから加計学園による獣医学部新設事案が
一気に進展した。
山本幸三氏=武中平蔵氏=八田達夫氏のラインで強引な国家戦略特区諮問会議
議事進行が展開された。
安倍首相直結ラインで加計学園に対する便宜供与が実行されたと推察される。
前川喜平元文部科学事務次官が指摘しているように、透明、公正、公平である
べき行政事務が歪められたと言える。
2015年3月から6月にかけて柳瀬唯夫首相秘書官が3度にわたって首相官
邸で加計学園関係者と面会していたことも、この事案が「首相案件」であった
ことを裏付けている。
愛媛県職員は面会の内容を文書にして県で報告している。
恐らく、音声データに基づいて面談記録を作成したのだと思われる。
柳瀬唯夫氏の参考人答弁の内容に疑義が生じているため、野党は柳瀬唯夫氏の
証人喚問を求めることになるだろう。
安倍政権は一連の疑惑の全容を解明するために、証人喚問の要求を受け入れる
べきである。
他方、森友事案では最終的に安倍昭恵氏に対する証人喚問もしくは参考人招致
が必要不可欠である。
財務省と直接折衝した谷査恵子氏に対する参考人招致も当然のことながら必要
だ。
もりかけセクハラ事案で貴重な国会審議の時間が費消されることは主権者国民
にとって慙愧に堪えないことである。
こんな問題には早期に決着をつけて重要問題の審議を行ってもらいたいという
のが主権者多数の声であろう。
現状を招いている原因はただひとつだ。
安倍内閣が真相解明のための行動をサボタージュしていることが問題長期化の
唯一にして最大の原因である。
行政が私的な事情で歪められてしまう。
総理大臣の近親者に特別な便宜や利益が供与される。
国有地が総理大臣の近親者に不正に低い価格で払い下げられる。
このような問題は民主主義の根幹にかかわる重大問題であるがゆえに、あいま
いな決着、真相解明のない幕引きが許されないのである。
日本政治の腐敗を排除できるのかどうかは、最終的には主権者の行動に依存す
る。
主権者が声を挙げ、政治の腐敗、堕落を許さない、という強い意思を表明する
ことが重要だ。
韓国では主権者が立ち上がり政治を動かし、意義ある政権交代を実現してい
る。
日本の主権者も主権者であることを自覚して行動を示す必要がある。
世論の沸騰が政治を動かす、政治を変える原動力になるのだ。
この意味で、いま矜持を問われているのは日本の主権者自身であるとも言え
る。
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