セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」

2013-05-11 23:29:34 | 外国映画
 「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(「Buena Vista Social Club」1999年、独・米・仏・キューバ)
   監督・脚本 ヴィム・ヴェンダース
   編集 モニカ・アンダーソン/ブライン・ジョンソン
   出演 ライ・クーダー
       イブライム・フェレール(BVSC)
       コンバイ・セグンド(BVSC)
       ルベーン・ゴンザレス(BVSC)
       BVSC(ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ)のメンバー達
  
 自分でリクエストしながら何なんですが、まずは気に入らない所から。(汗)
 一回目は、それ程気にならなかったのですが、回を重ねると「凄く気になる
んです」。
 一番、興醒めするのはライ・クーダーが出すぎなんですよね。
 各シークエンスでちょこちょこカメラに写るのに、必ずシークエンスの最後は
ライの姿を捉えて終わりになるんです。
 確かに彼が、このキューバのミュージシャン達を再発見して売り出した恩人
ではあるんですが、そこまで「俺だ、俺だ!」と写されると、思わず「解かった、
解かった!解かったから隅に引っ込んでろ!!」と反撥してしまいます。
 まるで、宗教勧誘映画に出てくる教祖さま。(笑)
 二番目は、殆んど静止しないカメラ。
 特にキツイのは2曲目の「Silencio」でイブライムとオマーラがデュエットするシ
ーン。
 向き合って歌ってる二人をグルグル回りながら延々と写していくシーン。
 (「華麗なる賭け」で拷問のようなマックイーンとダナウェイのキスシーンを思
い出した~映画自体は好き)
 他の方のレビューを読んだのですが、この映画で酔った(音楽に酔ったので
はなく、乗り物酔いの方)という人が何人もいるんですよね、多分、このシーン
が相当影響してると思います。
 僕、一回目は、それ程注視してなかったからそうでもなかったけど、二回目の
時、じっと見入ってたら確かに酔いそうになりました。(笑)
 音楽をテーマにした映画だし、ノリのいい曲で自然に身体が揺れてくるような
映画だから、静止したカメラで捉え続けるのは確かにふさわしくないし、カメラも
動いてていいと思うのですが、やはり限度があると思います。

 初見の時、途中までちょっと退屈でした。
 音楽はいいけど、インタビューはつまらないし、「借りてきたの失敗だったかな」
と嫌な予感がしだしてたんです。
 でも、この映画は演奏・収録シーンの間に各人のプロフィールを挟んでいくん
だな、と解かった辺りから面白くなってきました。
 丁度、ルベーン・ゴンザレス(ピアノ)のシーン辺りでしょうか。
 ピアノにかけちゃ人に負けない自負を持ちながら、どこか飄々として笑顔が良
くて年齢の寂しさも感じさせる。
 多分、頑固な所や音楽に対する厳しさも充分すぎる程持ち合わせてるんだろう
けど、滲み出てくる人柄がいいんですよね、味わいがあるんです。
 それからは、彼らの人柄や音楽に快く身を委ねる事ができました。

 一回目の時、インタビュー・シーンにかなり不満がありました。
 音楽に対する情熱とか考え方など、何でもっと深く掘り下げないいんだろう、っ
て。
 でも、よく考えていくと、それって余り必要じゃない気もしてきて「これで、いいん
だ」と思うようになりました。
 だって、百の言葉を並び立てても、彼らの顔に刻まれてきたものに敵うのは無
いんですよね。
 彼らの顔や表情、話し方、伝わってくる人柄が、言葉なんかより、余程、雄弁に
語ってるんです。
 そこに、穿ったような言葉を並べたら、きっと陳腐なものになってしまうんじゃな
いでしょうか。
 そんな彼らが作り出す音楽は、ただただ素晴らしかった。
 飾らなくて、素朴で、力強く、でも、皆、腕は確かでレベルが高く、「音楽」の文字
通り「音」を楽しんで「声」を楽しむ、ラテン特有の陽気さに身体が軽くなっていくよ
うでした。
 特にゴンザレスのピアノが凄い、僕は素人ですが、それでも、あの変幻自在の
タッチには痺れますね。

 各ミュージシャン達が歩んできた道、例え、途中音楽から離れていても、それさ
えも決して無駄な道のりではなかったと感じさせるミュージック・シーンの数々。
 とても素敵な音楽映画だと思いました。

 予告編
 http://www.youtube.com/watch?v=bR5pyWNBJGY

 オープニング・クレジット終了直前から第1曲目「Chan Chan」終了まで。(約5分30秒)
 http://www.youtube.com/watch?v=_AoXwBgW2To

※凄いのがゴンザレスなら、好きなのはトランペット奏者のグァヒーロ・ミラバル。
 あの哀愁漂うペットの音が好きだし、ちょっと他のメンバーの裏へ回りながらも、
 ちゃんと音だけは目立ってる。
 「裏切りのサーカス」のスマイリーがペット吹いてるみたいだし。(笑)
 他にベース(元々、僕はベース好き)のカチャイート・ロペス、ラウー奏者のバル
 バリート・トーレス、トレスのエリアデス・オチョアが好きです。
 
                                   
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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (宵乃)
2013-05-02 11:47:47
いよいよですね!
久しぶりのドキュメンタリー作品でドキドキです。
今月も盛り上がっていきましょう♪
返信する
Unknown (鉦鼓亭)
2013-05-02 22:25:05
 宵乃さん、こんばんは

初めてなので、いろいろ至らない事も有ると思いますが、
宜しくお願い致します。
どうなる事になるのか解かりませんけど、
覚悟は出来てます。(笑)
返信する
Unknown (宵乃)
2013-05-12 10:12:33
>向き合って歌ってる二人をグルグル回りながら延々と写していくシーン。

酔いました(笑)
動きすぎですよね~。監督って落ち着きがない人なのかなぁと思ってしまいました。

相変わらず顔を覚えられなくて、たぶん鉦鼓亭さんの仰る同じ方が何度も出てくるというのもあって、どのエピソードが誰のものかさっぱりわかりませんが、本当に彼らの人柄が伝わってきて、いつの間にか引き込まれてました。
音にも表情にも人柄が表れているんでしょうね~、聞き覚えのある曲もない曲も心地よかったです。

>例え、途中音楽から離れていても、それさ
えも決して無駄な道のりではなかったと感じさせるミュージック・シーンの数々。

本当にその通りでした。よいドキュメンタリーだったと思います。
鉦鼓亭さんがリクエストして下さらなければ、いつ出会えたかわからないし、ありがとうございました♪
返信する
こんばんは☆ (miri)
2013-05-12 18:52:35
>だって、百の言葉を並び立てても、彼らの顔に刻まれてきたものに敵うのは無いんですよね。
> 彼らの顔や表情、話し方、伝わってくる人柄が、言葉なんかより、余程、雄弁に語ってるんです。
>そんな彼らが作り出す音楽は、ただただ素晴らしかった。

この通りの音楽で・作品でしたね~♪
じいさんが(一般的な意味での年寄りが)嫌いな人には辛い作品かもしれないけど、
その点が気にならなければ、音楽そのものが良い事は、伝わってくると思います☆

>まるで、宗教勧誘映画に出てくる教祖さま。(笑)
>二番目は、殆んど静止しないカメラ。

まぁ監督が監督ですので・・・(笑)。
ウザイ、と思ったらそこまでかもしれませんね~?

私は良い音楽と、キューバという国へのいろんな想いを思い出させてもらったことで、
本当に見られて良かったです☆ 皆さんとご一緒で、余計嬉しかったです!

リクエスト、有難うございました~♪
返信する
Unknown (鉦鼓亭)
2013-05-12 19:49:10
 宵乃さん、こんばんは
 観て下さって、ありがとうございます

ホント、カメラのお陰で遊園地でメリーゴーランドに乗り続けてたような気分。(笑)
あそこまで動かす必要があるのか・・・。

主要メンバーで一番若いのがトレス(ギターに似た楽器)を弾いてるオチョアで52歳というから、平均年齢70歳を超えてるんじゃないでしょうかね。
それなのに音楽は若々しくて温かい。
僕もキューバン・ミュージックを聴くのは、殆んど初めてでしたが、とても印象に残りました。
(流石にカーネギーの時は、緊張や重圧なのかアムステルダムの時のような伸びやかさが若干欠けてた気がしました)

亡命キューバ人が一杯居るNYで、故国の人達が誇りをもって演奏してるシーンは、少し胸が熱くなりました。

素敵な企画に乗せて頂き、こちらこそ感謝しています。
返信する
いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2013-05-12 20:24:30
 miriさん、こんばんは
 観て下さって、ありがとうございます

その点が気にならなければ>はい、若い女性が殆んど出てこない映画でした。(笑)
でも、音楽が素晴らしかったです。

まぁ監督が監督ですので>覚えておきます、もう一本、観といたほうがいいな、と思ってる作品があるもんで。

ちょっと、アメリカ人の優越感を感じる作品でもありました。
(拒絶反応を起こす程ではないのですが)
ライ・クーダーがキューバン・ミュージックに惹かれたのも、作りすぎで人工的になりすぎたアメリカ音楽への反動という面があるように感じられます。
(都会モンが地方で癒されました、みたいな)
BVSCのメンバーがNYで「お上りさん」状態なのを追っていくのも、何だかなァって感じが少しします。
(実際がそうで、ドキュメンタリーだから「ありのまま」に写していて文句はないんだけど、何か執拗でしたね。(笑)

こちらこそ、参加、ありがとうございます!
返信する
Unknown (マミイ)
2013-05-12 22:40:03
>一番、興醒めするのはライ・クーダーが出すぎなんですよね。
私は初見だったので、今回はまだ気になりませんでした。
思い返してみれば、確かによく出ていたかも!
やっぱり、この映画の主役はBVSCの方々だと思うので
次からは私も気になるんだろうなぁと思います。笑

>飾らなくて、素朴で、力強く、でも、皆、腕は確かでレベルが高く、
>「音楽」の文字通り「音」を楽しんで「声」を楽しむ、
>ラテン特有の陽気さに身体が軽くなっていくようでした。
私の本作の感想記事のタイトルが「音を楽しむ」だったので
この文章を微妙にリンクしている!と嬉しくなってしまいました。
彼らが日常的に音楽を愛しているところがにじみでていて
(途中は確かに観にくい、退屈なところはあるものの(^^;)
とってもいい作品でした。

リクエストしてくださって、ありがとうございました!
返信する
Unknown (鉦鼓亭)
2013-05-12 23:51:58
 マミイさん、こんばんは
 観て下さって、ありがとうございます

主役はBVSC>そうなんですよ!
何であそこまでライの姿を捉えるのか、まるで何か弱味でも握られてるみたい。(笑)
プロデュースは彼ですけど、プロデューサーが主役の前に出てくる意味がわかりません。
(一番酷いのはラストシーン~笑)

「音を楽しむ」>被さったけど(笑)、これは、皆、感じる事だと思います。
口先だけの「今日は楽しもうぜ!」じゃなく、何十年のキャリアから自然に出てくる(自分達もお客さんも一緒に)「楽しもう!」が、こちらを自然とリラックスさせてくれてる気がします。

「とてもいい作品」と言っていただけて、ホッとしています、嬉しいです。

リクエスト>こちらこそ、参加して頂いて、ありがとうございました!

返信する
Unknown (きみやす)
2013-05-13 00:39:38
こんばんは 

やっぱり、いい映画でした。

>グルグル回りながら延々と写していくシーン。
演奏シーンは単調になりがちと考えたんでしょうか(笑)

自分も、1回目に観た時は
「回りすぎだろ!!」と思ったのですが

後半は(逆に)「また、回してるよ~」と笑の方に
入ってしまいました。

>ピアノにかけちゃ人に負けない自負を持ちながら、どこか飄々として笑顔が良くて年齢の寂しさも感じさせる。

昔を思い出しながらも、人種のせいなのか
あれだけ、ピアノが弾けるという“現役”のせいなのか
繰り言にならないところが素敵でした。

>好きなのはトランペット奏者のグァヒーロ・ミラバル。

一番、冷静に、周囲のことも
よく見てる言動をしていて何度見ても
あそこからのソロ演奏のシーンへの入り方は好きです。

リクエストして頂き、楽しませていただきました。
ありがとうございました!!
返信する
Unknown (鉦鼓亭)
2013-05-13 01:18:02
 きみやすさん、こんばんは
 観て下さって、ありがとうございます

いい映画でした>僕も、今年観た作品な中で、特に強い印象を受けた映画で、大好きな作品になりました。

グルグル>デュエットのシーンはメリーゴーランドのモーターが暴走したみたい。(笑)
ゴンザレスのベンチシーンも随分回ってましたけど、あそこは正常回転に近いくらいだったので助かりました。
単調を危惧したにしても、あれは・・・。(笑)

繰り言>淡々としてましたね、でも、去って行く時の後姿
が、ちょっと寂しそうで感傷的になりました。

あそこからのソロ演奏のシーンへの入り方は好きです>
僕、この映画は、あのトランペットの音から本編が始まって(パートが終わった時のハァハァが可愛い~笑)
、ゴンザレスのピアノで終わったような気がしています。

こちらこそ参加して頂いて感謝!です。
ありがとうございました!!
返信する

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