セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

挑戦 2本立て

2014-10-05 23:30:43 | 邦画
 4,5年前から映画を再び観出したのですが、以前と違い集中力が続かなくて、中々、劇場2本立てに挑戦する気になれませんでした。
 今日も、本当は溝口健二の「近松物語」だけにしようかなと思ってたのですが、入れ替え制じゃないので都合の良い席(トイレで他人に迷惑にならない、且つ、なるべく前方)で観るべく1本目の「女殺し油地獄」も観る事に急遽決定。
 場所は懐かしい旧文芸坐の場所に再建された新文芸坐。
 1Fから3Fに変わったけど、スクリーンの感じが昔と同じで嬉しかったです。
 旧文芸坐の最前列は、いつも浮浪者の方々が1日中寝てて、その臭いが名物だったけど、今は勿論そんな事なく綺麗で、それでいて映画書籍が充実してるのは昔のまま、ちょっと嬉しかったです。

 心配は杞憂、映画館の暗い環境なら2本立てでも全然平気でした、家でDVDだと、これが結構ダメで殆ど2回くらい一服休憩してしまうんですけど。(汗)
 映画も素晴らしかった。
 「近松物語」は溝口さんだし、心配は殆どなかったけど、意外だったのは「女殺し油地獄」(堀川弘通監督・1957年)が負けないくらい素晴らしい作品だった事。
 これは本当に拾い物でした。
 2本とも雨だらけなんだろうなと思ってたのですがデジタルリマスターしたのか、とても綺麗なフィルムだったので吃驚。
 これも嬉しい誤算でした。
 今日、観ていて痛烈に感じたのは、
「もう、このレベルの時代劇は永久に出来ないんだろうな・・・」ですね。
 役者さん達の言葉遣いが(時代劇言葉)が完全に消滅してるし、これを今の役者さんがどんなに上手くやっても、こんなに自然には絶対出来ないと思います。
 例え1人が出来ても、これらの作品のように全員というのは不可能でしょう。
 ホント、両作品とも役者さん達が上手すぎて惚れ惚れしてしまいました。
 (どっちも上方の話だから上方言葉なのですが、今のTVで聞く汚い関西弁とは全然違います、綺麗なんです)
 女衆も既婚者は、剃り眉、カネもちゃんと付けてるし、髷もご新造さん仕様で美しいし、観てて「ああ、ちゃんとしてるな」と安心できるんです。

 「近松物語」は噂に違わない傑作でしたし、香川京子さんが人妻役だけど凄く綺麗で着物も美しくて、いかにも大店の「お家さん」で素晴らしかった。
 今まで観た香川京子さんの中で最高。
 早坂文雄さんの音楽も凄かった。(最高傑作と言われる由縁も納得)
 「女殺し油地獄」も完璧に救いようのない放蕩息子に対する親の情がしみじみ伝わってきて、とても素敵な作品でした。

 外は大雨でしたが眼福の一日でした(反動が怖い)。
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5 コメント

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Unknown (Mardigras)
2014-10-07 00:10:44
こんばんわ、
新文芸坐に行かれた、、、という記事を拝見して、私も金曜日に行ってきたばかりなので、つい反応してコメントさせていただきます。
「女殺し油地獄」、前から観たいと思っていて、劇場のチラシを見て観たい~、と思ったのですが、昨日はどうしても時間が取れず諦めました。。そうですか、やっぱり素晴らしかったですか。。。
私が観たのは「疑惑」で、何度かテレビやビデオで観たことがあるんですが、たまたま会社が休みだったので、桃井かおりと岩下志麻の対決に大スクリーンで圧倒されたくて足を運んできました。もう一本は「鬼畜」でしたが、鉦鼓亭さんのような根性がなくて、つい劇場から脱出してしまいました。新文芸坐、かつての文芸坐に比べてホントにキレイになりましたね。こうして名画座がめっきりなく少なくなってしまった今となっては、とても貴重な映画館だと思います。
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いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2014-10-08 00:33:02
 Mardigrasさん、ようこそ
 コメントありがとうございます

「疑惑」、「鬼畜」>それはまたヘビーな。(笑)
公開当時、中々の評判だったのを良く憶えています。
どちらも凄く後味が悪い。(笑)
丁度、映画を観るのがシンドクなって来た時で、足が向かないまま現在に至ってしまいました。(汗)

旧文芸坐>銀座並木座と並ぶ(東京の)名画座の両横綱でしたね。
池袋は隣町なんですけど、自分の住んでる町に3F洋画系名画座、B1邦画専門映画館(ここは月半分がピンク映画、残りが近作、偶に古典)という良い映画館があり、ここをホームグランドにしていたので、それ程は行っていないんです。(汗)
ここで観たと明確に記憶してたのは「1000日のアン」くらい、只、如何にもなのですが当時観たトリュフォー作品は殆どここで観ていました。
印象強いのは文芸地下の方かもしれません。
山中貞夫を初めて観たのもここでしたし、「ルパン三世 カリオストロの城」や「蜘蛛巣城」、「どん底」もここで、調べたら1Fの倍くらいお世話になってました。
良く出掛けたのは東急名画座、名画座ミラノ、飯田橋の佳作座、ギンレイホール、高田馬場のパール座、早稲田松竹。
この中で、ギンレイホールと早稲田松竹が今も頑張ってるのは何とも嬉しい思いがします。

「女殺し油地獄」
殺しの場面が有名な作品ですが、見所は近松らしく「親の情」の数々だと思います。
箸にも棒に掛らない真正ロクデナシの放蕩バカ息子、縁は切れても、切るに切れない子への思い、受けた恩の重さ。
その部分を一手に引き受ける三好栄子と中村雁治郎の芝居が凄く良かった。
特に中村雁治郎の説得力ある芝居が何とも言えないくらい味があって、素晴らしかったです。
豊島屋お吉を演じた新珠三千代さんも素敵で、元禄島田?に結い上げた黒髪、鉄漿が本当に自然で、観てるうちに鉄漿してても美しく感じるようになったくらいです。
(「近松物語」の香川さんも同じ髷だったと思います~その辺は詳しくないのですが)
セットもしっかりしてましたよ、只、次が「近松物語」で。あの大経師の素晴らしい大セットや岐阜屋のセットを観てしまうと、スケールが・・・。(笑)

生活様式が激変してるのだから無理はないのですが、あの着物の着こなし感、正座してる姿の自然さは、最早、再現不可能でしょうね。
今の時代劇の正座姿って、どこか力が入り過ぎで、観てる方が肩凝っちゃいます。
返信する
追伸 (鉦鼓亭)
2014-10-08 00:54:54
「乱れる」の高峰秀子のラストには及ぶべくもないけど、
「近松物語」ラストの香川京子さんの顔も素晴らしかった。
一瞬、微笑んだと感じる僅かな表情の変化、馬上の風情といい鳥肌モノの演技でした。
返信する
こんばんは☆ (miri)
2015-01-21 20:21:02
>「近松物語」は噂に違わない傑作でしたし、

こちらの記事で気になっていたこの作品を、今日見ました☆
素晴らしい作品でした!

私は「噂」を知らなかったので、こちらの記事で気にしていたら
年間どころか、オールタイムのベストに入れられて、ますます気になって、やっと借りられたのです♪

鉦鼓亭さんが記事を書かれていないのに、申し訳ないようですけど、アップします☆
27日か29日にアップします。 どうぞ宜しくお願いいたします。。。お手柔らかに~!!!


.
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いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2015-01-21 23:28:00
 miriさん、こんばんは
 コメントありがとうございます!

素晴らしい作品でした!
>凄~く、安堵しました。
不倫モノで、ハタ迷惑(笑)な物語なので、「どうだろう?」と少し不安でした。

噂>溝口さんの最高作というと、大体「近松物語」、「雨月物語」、「西鶴一代女」に分かれるみたいです。
でも、目にする感じでは「近松物語」を代表作に挙げる人が多い気がします。
それを確かめたいので、「雨月物語」、「西鶴一代女」を今年中に是非観たいと思っています、但し、映画館で、という条件を付けました。
(先週、文芸坐に「雨月物語」が掛ったのですが、平日1日だけの上映だったので行けませんでした)

記事を書かれていないのに>
全然、気にしないで下さい。
これは「七人の侍」と同じで、相手が大きすぎて手に負えないからなんです。(汗)
いずれ、自分なりに消化できたらチャレンジしたいと思ってはいます。

27日か29日にアップします
>楽しみにしています。

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