「パットン大戦車軍団」(「Patton」1970年・米)
監督 フランクリン・J・シャフナー
脚本 フランシス・フォード・コッポラ
エドマンド・H・ノース
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
出演 ジョージ・C・スコット
カール・マルデン
マイケル・ベイツ
配給会社が宣伝の為に付けた悪しきタイトルの一例。
これでは、戦車隊同士の大決戦映画だと誤解してしまいます。
70mm、巨額の制作費、3時間近い超大作。
誰だって、そう思うでしょう。
事実、皆がそう思って出掛け、「な~んだ、全然、違うじゃないか、金返
せ!」の結果になってる。
この映画の原題は「Patton」。第二次大戦中、アメリカ陸軍の猛将とし
て知られたジョージ・パットン将軍、その人物を描いた映画。
フランクリン・J・シャフナー版「アラビアのロレンス」と言ってもいい映画
なのです。
「アラビアのロレンス」は、オマー・シャリフ、アンソニー・クイン、アレッ
ク・ギネス他、超豪華な個性派俳優が脇を固めており、二人の少年も重
要な位置に居ました。
これに対して「パットン」(邦題が嫌いなので、以後、このタイトルで書き
ます)では、目立つのはカール・マルデン演じる第3兵団司令官でパット
ンの盟友ブラッドリー将軍くらい。
好敵手、カルル・ミヒャエル・フォーグラー演じるロンメル将軍も、味方
でありながらも強烈なライバル意識をもつイギリス陸軍のモントゴメリー
将軍(マイケル・ベイツ)も映画の点景にすぎず、殆んど、パットン将軍を
演じるジョージ・C・スコットのワンマンショー的映画、ジョージ・C・スコット
の出ていないシーンを思い出すのが大変なくらいです。
その為か、「アラビアのロレンス」に較べると物語に厚みがない感じはし
ます。
ただ、ジョージ・C・スコットの存在感は凄い。
まるで、この役を演じる為に生まれて来たんじゃないかと思えるほど。
勿論、彼は名優のリストには必ず入る人だから、こういう言い方は失礼
なんですけど、それを承知で、そう書いてしまいたくなるほど、彼は生きて
いるパットン将軍そのものでした。
この超大作を、たった一人で背負いきるパワーと演技、アカデミー主演
男優賞受賞も当然だと思います(受賞は本人の意思により拒否)。
J・ゴールドスミスのマーチも、モーリス・ジャールの「アラビアのロレンス」
に較べれば落ちますが、最上級の良い仕事だったのではないでしょうか。
脚本は、あのフランシス・フォード・コッポラとエドマンド・H・ノースの共同
脚本、本作で二人はアカデミー脚本賞を受賞しています。
(ここから先は、ある所で書いた感想に加筆しながら書きます)
「パットン」
戦場でしか生きられない男、中世に生まれれば良かったのに、間違っ
て20世紀に生まれてしまった男の悲劇と喜劇。
粗野で野蛮で下卑た言葉が染み付いていて、
敬虔なプロテスタントで聖書を肌身離さず、
古代ローマ史に精通して、それなりの教養も有り、ユーモアも持ち合わ
せている。
硝煙と死体と血の臭いが三度の飯より好きで、猪突猛進を絵に描いた
ような男。
昇進欲と名誉欲の塊りだが、戦略に通じ、誰よりも勇敢、
戦時に於いても、平時に於いてもトンデモナイ男だが、世渡り下手で、何
となく憎めない愛嬌がある。
ベッドで安らかに死を迎えるより、流れ弾に当たってでも戦場で死んだ
ほうがマシだと思ってる男。
ドン・キホーテやシャーロック・ホームズのように、その存在自体が滑稽。
ヨーロッパ戦線に於ける第3軍の雪上行軍シーン、夜間遭遇戦、暗闇の
中でお互いの砲火が炸裂するシーンは詩的な程に美しく、又、砲火が止ん
だ後、アルプスを望む平原で老将軍が見せる寂寥感は秀逸だと思います。
有名な冒頭のシーン。
70mmの大画面一杯に映し出された超巨大星条旗をバックにパットン
が演説するシーンは、ホント、「これがアメリカだ!!」で、圧巻としか言い
ようがありません。
親方星条旗、アメリカの正義は世界の正義、それを語るパットン将軍の
下品極まりない言葉の速射砲。
このシーンは決して「アメリカの肯定」ではないと思います。
観ればお解りになると思いますが、何処となく滑稽なんです。
ベトナムで揺らぎかけた自信を取り戻すべく作ったシーンとは、僕にはと
ても思えない。
パットンの演説、即ち、アメリカの演説に対するシニカルな視線、ブラック
・ジョーク的な意味合いの方が断然強い、このシニカルな視線は結末に再
び現れ、冒頭のシーンと対をなして、この長い物語を終わらせます。
J・C・スコットの一世一代とも云える名演(当人の主義主張とは正反対か
もしれないが)に支えられ出来上がった作品は、戦争活劇ではなく人間を
描いたドラマとして後世に残る作品になったと思います。
監督 フランクリン・J・シャフナー
脚本 フランシス・フォード・コッポラ
エドマンド・H・ノース
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
出演 ジョージ・C・スコット
カール・マルデン
マイケル・ベイツ
配給会社が宣伝の為に付けた悪しきタイトルの一例。
これでは、戦車隊同士の大決戦映画だと誤解してしまいます。
70mm、巨額の制作費、3時間近い超大作。
誰だって、そう思うでしょう。
事実、皆がそう思って出掛け、「な~んだ、全然、違うじゃないか、金返
せ!」の結果になってる。
この映画の原題は「Patton」。第二次大戦中、アメリカ陸軍の猛将とし
て知られたジョージ・パットン将軍、その人物を描いた映画。
フランクリン・J・シャフナー版「アラビアのロレンス」と言ってもいい映画
なのです。
「アラビアのロレンス」は、オマー・シャリフ、アンソニー・クイン、アレッ
ク・ギネス他、超豪華な個性派俳優が脇を固めており、二人の少年も重
要な位置に居ました。
これに対して「パットン」(邦題が嫌いなので、以後、このタイトルで書き
ます)では、目立つのはカール・マルデン演じる第3兵団司令官でパット
ンの盟友ブラッドリー将軍くらい。
好敵手、カルル・ミヒャエル・フォーグラー演じるロンメル将軍も、味方
でありながらも強烈なライバル意識をもつイギリス陸軍のモントゴメリー
将軍(マイケル・ベイツ)も映画の点景にすぎず、殆んど、パットン将軍を
演じるジョージ・C・スコットのワンマンショー的映画、ジョージ・C・スコット
の出ていないシーンを思い出すのが大変なくらいです。
その為か、「アラビアのロレンス」に較べると物語に厚みがない感じはし
ます。
ただ、ジョージ・C・スコットの存在感は凄い。
まるで、この役を演じる為に生まれて来たんじゃないかと思えるほど。
勿論、彼は名優のリストには必ず入る人だから、こういう言い方は失礼
なんですけど、それを承知で、そう書いてしまいたくなるほど、彼は生きて
いるパットン将軍そのものでした。
この超大作を、たった一人で背負いきるパワーと演技、アカデミー主演
男優賞受賞も当然だと思います(受賞は本人の意思により拒否)。
J・ゴールドスミスのマーチも、モーリス・ジャールの「アラビアのロレンス」
に較べれば落ちますが、最上級の良い仕事だったのではないでしょうか。
脚本は、あのフランシス・フォード・コッポラとエドマンド・H・ノースの共同
脚本、本作で二人はアカデミー脚本賞を受賞しています。
(ここから先は、ある所で書いた感想に加筆しながら書きます)
「パットン」
戦場でしか生きられない男、中世に生まれれば良かったのに、間違っ
て20世紀に生まれてしまった男の悲劇と喜劇。
粗野で野蛮で下卑た言葉が染み付いていて、
敬虔なプロテスタントで聖書を肌身離さず、
古代ローマ史に精通して、それなりの教養も有り、ユーモアも持ち合わ
せている。
硝煙と死体と血の臭いが三度の飯より好きで、猪突猛進を絵に描いた
ような男。
昇進欲と名誉欲の塊りだが、戦略に通じ、誰よりも勇敢、
戦時に於いても、平時に於いてもトンデモナイ男だが、世渡り下手で、何
となく憎めない愛嬌がある。
ベッドで安らかに死を迎えるより、流れ弾に当たってでも戦場で死んだ
ほうがマシだと思ってる男。
ドン・キホーテやシャーロック・ホームズのように、その存在自体が滑稽。
ヨーロッパ戦線に於ける第3軍の雪上行軍シーン、夜間遭遇戦、暗闇の
中でお互いの砲火が炸裂するシーンは詩的な程に美しく、又、砲火が止ん
だ後、アルプスを望む平原で老将軍が見せる寂寥感は秀逸だと思います。
有名な冒頭のシーン。
70mmの大画面一杯に映し出された超巨大星条旗をバックにパットン
が演説するシーンは、ホント、「これがアメリカだ!!」で、圧巻としか言い
ようがありません。
親方星条旗、アメリカの正義は世界の正義、それを語るパットン将軍の
下品極まりない言葉の速射砲。
このシーンは決して「アメリカの肯定」ではないと思います。
観ればお解りになると思いますが、何処となく滑稽なんです。
ベトナムで揺らぎかけた自信を取り戻すべく作ったシーンとは、僕にはと
ても思えない。
パットンの演説、即ち、アメリカの演説に対するシニカルな視線、ブラック
・ジョーク的な意味合いの方が断然強い、このシニカルな視線は結末に再
び現れ、冒頭のシーンと対をなして、この長い物語を終わらせます。
J・C・スコットの一世一代とも云える名演(当人の主義主張とは正反対か
もしれないが)に支えられ出来上がった作品は、戦争活劇ではなく人間を
描いたドラマとして後世に残る作品になったと思います。
まあ、パットンの事を知ったのがこの映画なので当然なんですが、とにかく強烈な印象でした。
全体の流れとかは全く覚えてないけど、戦争映画ではよく名前が出てくるから、「あ~、あの人か」とイメージできるので、観てよかったです。
ブラック・ジョークとして観ればよかったんですね!
だから戦争映画として見ると肩透かしを喰っちゃう。
尤も、あんな将軍の指揮する所へ行ったら命は幾つ有っても足りないから、兵隊からは恨まれるでしょうね。
屍累々の光景を見て恍惚の表情を浮かべる戦争キチガイですもん。
戦術に関しては相当な合理的思考の持ち主なんだけど、博物館的将軍を強調したいのか、その辺りは映画では描かれませんでした。
まあ、それを描いたら印象が散漫になってしまいますけど。
でも、面白さと重厚さが有って、かなり好きな作品なんです。