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マンガ、アニメ、特撮の感想ブログです。

今週の一番『マギ』~シンドバッドかっこいい!紅玉姫かわいい!とか書こうと思ったら…(´・ω・`)?

2011年11月24日 | マンガ
【脱英雄譚】

【11月第1週:りびんぐでっど #27:ハーフ&ハーフ・オブ・ザ・デッド】
http://www.tsphinx.net/manken/wek1/wek10534.html#714
【漫研】
http://www.tsphinx.net/manken/



『マギ』(作・大高忍)がゆっくりと着実に『物語』を積み上げて言っていますね。いや、この場合『世界』を積み上げていると言うべきでしょうか。『マギ』は…なかなか一口には言えないのですが、ユーラシア大陸を模した広大な世界が舞台の、ダンジョンと魔法使いと魔神を巻き込んだ冒険活劇…そこから発して世界と人間の運命を決める戦いに向かって行く『物語』に観えます。
僕も、静かに深く応援しています。気がつくと、週刊少年マンガの中で、並行して動くキャラクターの数がトップクラスの大河ストーリーになっている、いや、なろうとしていると言うべきか。まだ、弾込めをしているような状態のはずなので。

長期連載のマンガだと、自然とキャラクター数は膨大になって行くのですが、これは特に少年マンガの場合、いわゆる“串団子バトル”と言われるシリアルなストーリーラインから、置いて行かれる者、忘れられる者が顕著で、またギャグマンガなんかだとしまってあるキャラを時々起すという手法で多数のキャラを保持するのですが、『マギ』の、これだけのキャラに違う方向をパラレルに走らせているのはちょっと無いですね。
…いや、『ネギま!』とかあるんですけどね(汗)あるいは、今の『ワンピース』はシリアルなストーリーラインを“こっち”にシフトさせようとしているのかな?とか思ったりもしていますが…。それよりは、もう少し、バラバラとしたような……それでいて、それが大きな流れを編むような…そういう形を成して行っていると思います。



(モルジアナに「えっ?」とか言われてるよ…)…いや、しかしここで正直を言うと(汗)ヘタレ主人公であるアリババのヘタレっぷりが、どうにも好きになるのが困難でねえ(いや、言う程キライなキャラでもないですが)…(笑)モルジアナも、シンドバッドも、カッコいいなあ!と思ってるし、アラジンの正しい少年っぷりと得体の知れなさの同居が、すごく好きななんだけど……アリババがなあ…orz もう少し「こいつは、王になれる男だ!」と思わせてくれたらなあ…。
彼は作中において明らかに“ヘタレな面がある少年”として描かれているので、演出や、キャラ設計にミスがあるというわけではないのですけどね…。ここが、バシッとはまると物凄く僕好みの『物語』なのですが…。まあ、登場当初に人の生命を何とも思わない、金持ちの主人をボコッと殴った時は、充分、カッコ良かったのでアリババも何処かで落ち着いてくれるかな?



この物語、魔法の世界(裏の世界)は、暗黒結社アル・サーメン(一つの組織ではない?)と、アラジンそれからシンドバッドの戦いになって行くのでしょう。対して、表の世界の“歴史”は、覇権国家・煌帝国と、シンドバッド王の七海連合の衝突になって行くものだと思われます。さらに突き詰めると、煌帝国の第一皇子・練紅炎と、シンドバッド王の“両雄”の戦いになるのでしょう。
その趨勢は、裏の魔法の世界の活動がかなりの部分で関わって行くはずですが、だからと言ってイコールではない。シンドバッド王から、白いルフ(生命エネルギー)に隠れて黒いルフが流れるように、対する練紅炎も黒一色の男というわけではないと思われます。そういう描きに観えます。黒いマギとなって、アル・サーメンの手に堕ちているジュダルも、本当の所何を考えているのか分からない。(何も考えてないっぽいけど…)



煌帝国には他に、最近とみに可愛いと評判(?)の紅玉姫と、白龍くんがいます。白龍くんの姉の白瑛さんもいますね。彼らは煌帝国の人間だけど、シンドバッドと深く関わり、単純に練紅炎と同じ方向を向いているキャラではない。
じゃあ、シンドバッドの味方なのか?…そうとも言えるけど、肝心のシンドバッドは紅玉姫も、白龍くんも、使えるカードの一枚として扱おうとしている(…まあ、本当に簡単に使い捨てて見せるか?は、また別の分岐になりますが)。シンドバッド自身が、単純な“白い英雄”ではなくなっているんですね。
紅玉姫はシンドバッドにメロメロに恋しているのですが……相応に哀しい思いをするのは確定路線なんでしょうね(汗)その後、どうなるかは分かりませんが。
また、白龍くんは顔に火傷を負っていたり、片腕がもげたり、かなり酷い扱いを受けているんですが、基本ヘタレというか、ダメな面がある少年で、アリババの『対比』キャラなのでしょう。練紅炎がシンドバッドの『対比』であるように。…でも、僕は、この少年は好きなんですよねえ~。全然、主人公張れそうな、好少年です。



先に、怪しい人物である事を書いてしまいましたが、シンドバッド王もかなり興味深いキャラクターです。時折、断片的に語られる彼の冒険譚の数々は、彼がかつて間違いなく“物語英雄”であった事を示している。…というか、今も、一人だけチートヒーローなんですよね(汗)
迷宮攻略者たちが使う“ジンの金属器”は必ずしも絶対無敵の宝具ではないのですが、彼が振るうと一撃必殺の大破壊をもたらす。レベル99になって敵が弱くて困っているRPGの勇者のような感さえあります。
それこそ、今の、この物語は「世界の異変に対してシンドバッドが如何に立ち向かうか?」という英雄譚に集約されてると言ってもいいのだけど、しかし、彼は主人公ではない。思うがままに冒険し、勝ち上がってきた、かつての少年は、思うがままに得たものによって、思うがままを失った…というか。まあ、彼の物語もまだ、全然はじまったばかりなんですよね。でも、この人は超カッコいいです。

シンドバッドが白一遍のヒーローではない事で分かるのですが、この物語はある種の“分かりやすさ”として「光と闇の戦い」が演出されていますが、本質的にはもっと混沌と言うか…清濁併せ呑んだものを描こうとしている。もっと人も、人の心も入り乱れている。シンドバッドが白一遍じゃないのなら、練紅炎も黒一遍ではないのだろうと思える…そこが好きです。

他にもまだ、伝説のマギがいると言われるレーム帝国、革命により建国された魔法主義の国マグノシュタット(まあ、アル・サーメンが糸引いているみたいですが…)など、どう動くか分からない勢力も、物語の盤上に並べられ始めています。アリババの故郷で、煌帝国に占領されてしまったバルバッドもまた出てくるでしょうしね。(アブマド、サブマドもまた出るかな?)

本当は、このブログで僕が使っているキーワード『脱英雄譚』を引っ張ってきて「シンドバッドは『脱英雄譚』前の旧来英雄なんだ!」とか言う方が、いろいろ僕なりの理屈をつけて語りやすいのですけどね…(汗)(シンドバッドの物語の形、アリババのキャラの置き方等を観ると)今回はちょっと保留。改めてそういう角度で語るかも…。ただ、『脱英雄譚』の一つの目標である「分かりやすい物語から世界への接続を果たす」という事はやっている物語だと思います。

週刊少年誌では、大変な困難がある大河ロマンを、時に冒険やアクションを交えながら、じりじりと、しかし着実に歩を進めている渾身の連載だと思っています。それだけに、途中で打ち切られたら、本当に「何の話」だったのか分からなくなってしまう(汗)いや、アラジンがテーマ的な事をぺらっと喋れば格好はどうにでもつくのでしょうが……多分、それを様々な人々に宿る物語によって描かれる事に意味がある物語だと思うのです。
まあ、それだけに、少年サンデーにはいろいろがんばって欲しいですね。いろいろ。(´・ω・`)


マギ 10 (少年サンデーコミックス)
大高 忍
小学館