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今週の一番『BE BLUES』~身体にハンデを抱えたサッカーマンガを並べてみる。

2011年08月06日 | マンガ
【7月第2週:ST&RS 第1歩 メッセージ】
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『BE BLUES』(作・田中モトユキ)が相変わらず良いです……というか、龍ちゃん復活のこの試合は、ちょっとうっすら目に涙を浮かべて読んでいたりして、それは物語のまだ序盤で感激してしまっているって事なんですよね。まだ、はじまったばかりであろう物語でこんなに感激してしまっていいのか?とか思わず考えたりして。しかし、龍ちゃんがゴールを决めてゆくシーンの一つ一つがドラマチックで、良い描写に仕上がっていたんですよ。
『BE BLUES』は、将来を嘱望されるサッカー少年である一条龍ちゃんが、その才能と努力で「18歳で全日本の代表入り」という自らの計画を着実にこなして行く物語……かに見えたが、龍ちゃんは事故により大怪我を負い、長いリハビリから回復はしたものの、その煌めくような身体能力は失われてしう。全日本代表になるという彼の“計画”も失われてしまったのだろうか?しかし、それでも龍ちゃんはサッカーを目指すという物語。(↓)下記記事も参照ください。

今週の一番『BE BLUES』画とドラマの両輪が回る充実の物語

優れた才能を持ちながらその本来の能力を100%発揮できないという“状態”を抱えながらサッカーをプレイする…という物語は『キャプテン翼』(作・高橋陽一)の三杉くんを思い出しますね。(今はもう、治っているようですが)フィールドの貴公子と呼ばれ、翼、日向を超えるサッカーの才能を持ちながら心臓病のため限られた時間しかプレイできないという設定は、当時の少年スポーツマンガの様相を見渡してもかなり秀逸なものだったと思います。

けっこう他にも、こういうタイプのサッカーマンガってあったりして…



馬場民雄先生の『大介ゴール!』。1997年頃に少年チャンピオンで連載されていて、僕はこれ大好きだったんですよね。小学~中学までサッカーのやりすぎで膝に障害を持ってしまって、サッカーができなくなってしまった少年・山本大介くんが、マネージャーでもサッカーに関わりたいと弱小サッカー部のマネージャーとして入部し、限られた時間しかプレイできないけど再びフィールドに立つ物語。
これすごい好きだったんですよ!(`・ω・´)マネージャーの大介が練習でサッカーを観ているだけで、夢中になってわさわさ身体を動かしたり、ブツブツ独り言の指示を出したり。試合場を見ただけで、震えるように感動していたり。大介くんがどれだけサッカーが好きか伝わってきて。それが逆に、「悔しい」なんて素振りを全く見せない子なのだけど、サッカーができない事がどれだけ悔しいか逆に伝わってきて。

でも何故か、やがて、この大介くんの障害は治ってしまって、後半は普通にフィールドを駆けまわる大介くんの活躍を描いたまま終わって行くんですよね?(´・ω・`)……なんででしょうね?ものすごく残念で。こんなに美味しいネタ、そして『物語』としての特徴をなんで手放してしまったのか?まったく謎です。



あるいは草場道輝先生の『ファンタジスタ』なんかもそうですね。1999年頃に少年サンデーで連載されていたサッカーマンガなんですが、こちらは主人公の坂本轍平は十全なのですが、実姉にして監督の琴音姉ちゃんが高校時代に肺を患って、優れた才能を持ち坂本轍平の能力に多大な貢献をしながらも、彼女自身は女子サッカーの道をあきらめて指導者となっています。最初の頃の話で、彼女が男子生徒に混じってフィールドに立つと、やっぱりすぎんですが、途中で肺に来て止まってしまう…というシーンがあって、やはり胸につまるものがある。(そういえば『ホイッスル』では女子部員の小島さんという子が……ま、こっちは今はいいかw)

ん…しかし、こちらは、その設定を無くすという事はなかったのですが、途中から轍平は世界の舞台に旅立ってしまって、この琴音姉ちゃんの元で優勝を目指すという展開はなくなってしまったんですよね?(´・ω・`)当時(今も?)サッカーマンガは世界を射程に入れた展開が求められるって事かもしれませんが、こんなに美味しいネタをなんで“放置”してしまうのか?まったく謎です。
…病気持ちというのを僕が大きく捉え過ぎてるのかなあ?何ていうか連載はじまった時点で「美少女の宗像仁が少年にサッカー教えていた」とでも言うんでしょうか?(汗)そこまではいかないとしても、ある意味で、そういう“女神”の悔しさを昇華するようなドラマが観えた気がしたんですよね。

ちょうど田中モトユキ先生の前作の『都立あおい坂高校野球部』が、子供の頃野球を教えてもらった少年たちが潰れそうな野球部を率いる女監督の元に集うという物語なんですが、これに単純に恩義や憧れ(美人監督なんで)だけじゃなくって、ある種の“時限装置”を持たせると、少年たちの…というより『受け手』の「勝つ!」というモチベーションが全然変わってくる事は想像できると思います。…そこらへんなんで止めちゃうんでしょうね?最初からやらないなら分かるのですが、はじめておいて、途中からすっと手を引いてしまった感じがします。
ああ、むしろ今、少年チャンピオンで連載している『エンジェルボイス』(作・古谷野孝雄)は女子マネージャーが脳の病気にかかっていて、完全に“そういう展開”になっていますね。うん、ああいう感じです。…………ああいう感じですけど、(『エンジェルボイス』を読めば分かりますが)相当、欝な展開である事も認めます(汗)長期連載を目指すメジャー誌で、ああいう重いのはキツいって事かなあ…。(いや『ファンタジスタ』は、あそこまで重くなくて、イケたと思いますけど)

あと『振り向くな君は』(作・安田剛士)の主人公が喘息持ちですね。こちらは、その設定が大きく機能する前に終わってしまいましたが、あまり強烈に前面には出していなかったので、物語の後半で動かして行く設計だったかな?と思ったりしています。(↓)ちょっと直接の関係はないですが記事書いたりしています。

今週の一番『振り向くな君は』~GK千手くんは素晴らしいキャラだった。

まあ、今、いろいろ「まったく謎です」などと書いたのですが、落ち着いて考えを巡らせてみると“病気持ち”という設定は、けっこう展開の幅を限定的にさせる上に、テーマとしての縛りも“強く”なってしまうのかもしれません。単純に言えば、限られた時間しかフィールドに立てない大介…という形で試合運びを構成しても、あまり展開に幅を持たせられないというか「その設定が強すぎて」どれも似たような試合に思えてしまう……という事はあるのかな?と。
その意味では「そういう重いキャラをライバルに置く」という三杉くんの選択は相当上手かったと言えそうです。あるいは、ちょっとずらして琴音姉ちゃんや、あるいは『エンジェルボイス』の女子マネ・高畑は、そこも匙加減で、キツいと言えばキツいのかな?

『BE BLUES』がこれらの作品の系譜に当てはまるかというと多分、当てはまらない(`・ω・´)………え?じゃあ、何でこんな作品を書き綴ったのかって?いや(汗)一度、こういう類型をまとめておきたくって……記事に書き起こすと後で思い出しやすいし(汗)
正確に言うと『BE BLUES』の今後の展開次第という事なんですけどね。ここ数週……それからあとしばらくの展開は、この系譜の“カタルシス”に当たるとは思われます。龍ちゃんの復活劇が演出されている今は、ハンデへのリベンジというか回復の物語のフェーズに思えます。

しかし、『BE BLUES』自体がそういうハンデを如何に処すか?という物語には見えない。…むしろ、龍ちゃんが自分の身体が「そういうもの」という事で新たにデータを更新してそれに基づいて“計画”の組み直しをしています、あくまで全日本代表になる事を目指して。そこに、上に述べたような“悔しさ”は微塵も感じられない。龍ちゃんはもう気にしていないし、小学生の時のセンスをどうこう言ってもしょうがない所がある。今後、龍ちゃんは自分の身体機能の調整がとれれば、かつてと同じようなプレイに近づいて行くでしょうけど、それは「小学生時代を取り戻した」のではなく、明らかに「努力により新たな自分を得た」のですよね。

それはとても小気味よい形ではあるんですけど……「このネタここでしまうの?」とも思うんです(汗)やっぱりね「怪我を克服して復活」は盛り上がるネタなんですよね。それは、この後、アイデアが続かないと序盤のここが一番盛り上がって、あとは他のサッカーマンガと同じような感じのマンガ~みたいな感じになってしまうかもしれない。まあ、それでも充分なのかもしれませんが、僕はこの物語はもっと行けるように感じていまして…。
やっぱ、ある程度このネタはひっぱりたい。kichiさんの指摘で「その為に、もう一人の子、(怪我でバレリーナを挫折している)アンナちゃんを出している」というのがありますし、それはそうかな?と思えます。しかし、変に前に出すと長い欝展開が続き勝ちになって、それは辛くもあるんですよね(個人的にはそれでも構わないけど)。……そうすると、ちょっとこのネタは眠らせて、後で“再発”させるかな?…いや?それはあざとすぎる?う~ん(考)

とまれ『BE BLUES』には、『大介ゴール!』や『ファンタジスタ』で感じた、最初に設定されたハンデに対する、なんとな~く未昇華?な感じの部分を昇華まで持って行ってもらいたい気持ちもあります。…さっき言ったように本筋とは言えなそうでもあるんですけどね。やって欲しいですねえ。このネタ実装させたのだから。


BE BLUES!~青になれ~ 1 (少年サンデーコミックス)
田中 モトユキ
小学館

ファンタジスタ 1 (小学館文庫 くG 1)
草場 道輝
小学館

振り向くな君は(1) (少年マガジンコミックス)
安田 剛士
講談社

ANGEL VOICE 1 (少年チャンピオン・コミックス)
古谷野 孝雄
秋田書店