K.V.ウォルフレン 『日本という国をあなたのものにするために』

2020-04-22 13:13:12 | 政治学

日本史や世界史を勉強したことのある人は、経験したことがあるからわかると思いますが、古代の歴史は、かなり長い期間の事でも、そんなに暗記する事項は少ないですが、現代の方になればなるほど、期間は短いのに暗記する事項が多くなっていき苦労したということを思い出しませんか?

それは紙の使用や保存によって、書き留めて、それを保管しておくことが生活様式の中で多くなっていったがためでしょう。 それは事、歴史だけでなく、現代の政治についても同様でしょう。

いろんな政治に関する情報や理論が様々にあり、いろんな織者はもちろん、またネットの普遍化によっていろんな人が自由に自分の思いなりを自由に発信していけるようになったがゆえに、どのようなシステムで現代の政治は動いているのか分からなくなってしまっているのが現状ではないでしょうか?

そんな時、きちんとした枠組みを、しかも誰もが納得できるように提示、あるいは論じている識者の本を読むことが非常に有益ではないでしょうか?

そんな思いをこのウォルフレン氏の本を読んで感じました。

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    K.V.ウォルフレン

 

この人は『人間を幸福にしない日本というシステム』という過激なタイトルの本を出し、これが、日本論の本として古典的な本になりうるとまで評され、実に33万部を売るヒットになったのです。

そのセール的なことだけで私は、この人を評価するのではなく、政治とは、あるいは学問や科学は何のためにあるか、という問いに見事に、しかも人生が変わるほどの明晰さでもって論じているからこそ、支持しこのブログで多数論じてきたのです。

やはり、「この人の本を読んでいただきたい!」という使命感にも似た感情がなければ、そんなことはできた話ではないのです。

今回のこの『日本という国をあなたのものにするために』という、これもちょっと過激なタイトルの本を、人様に読んでもらいたいという衝動に駆られて提示した次第です。

日本では、選挙での投票が、民主主義の権利の行使であると説かれ、そのことで農民の代表と称する巨大組織が補助金の特権を得るために、全力を尽くすという約束を引き換えに、自民党候補に投票するように働きかけ、新幹線、トンネル、橋、空港を作ってきたのです。

しかし、その多くは不要なところに作られ、自然環境を壊す結果になっているようですね。

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それは、先の『人間を幸福にしない日本というシステム』に詳しく論じてありますし、その実例は、地方の様々なところはもちろん、首都圏の至るところで、不必要な公共事業が費やされていることでも明らかでしょう。

確かに、新幹線、トンネル、橋、空港といったものは、市民生活を守るためには必要でしょう。

しかし、不必要なところにまで作ることは考えなくてはならないでしょう。

政治家は、いまや国民のはやりすたりのある要望や大衆の気まぐれにこたえようとするなかで、自分の道徳観念が揺らいでいしまっているというのです。

それゆえに、優先順位を間違えてしまっているのだそうです。

それに加え、首相の周りに、真の統治を阻む障害物がたくさんあるということをウォルフレン氏は発見したのです。

これは漫然と市民生活を送っているだけではわからないことですね。

いろんな国に赴き、それらの国の内情を研究して行く中で、日本のこういった特殊性を発見したのでしょう。

しかし、特殊であるからという理由でそれを糾弾しているわけではないのです。

その特殊な部分が存在するゆえに、日本の市民の幸福な生活が阻まれているゆえに批判するのです。

これまでのウォルフレン氏の本では、どれでも「官僚にアカウンタビリティ=説明責任がない」ということを批判しているのです。

これは官僚に、続けてきた政策の結果を突きつけられることがないことによるものです。

何故、それをおこなっているかの問いにもっていかざるを得ないようなシステムがないのです。

良い政府を持てるかどうかは、統治するものと、されるものとの間に継続的な、やり取りがあるかどうかで決まる、ということですね。

日本に疑義をさしはさんだり、反論をしたりする伝統がなく、市民が政治エリートをコントルールする仕組みがないという伝統が今なお残っているということですね。

このシステムがあれば、起きなくていいトラブルもおきなくて済むということです。

これは非常に良き視点ではないでしょうか。

政治家に、真の権力を与えるために、大々的な運動をして初めて選挙を意味あるものに変えることができるのはいうまでもないことです。

これこそが、中央省庁の官僚をコントロールする唯一の手段でもあるといいますウォルフレン氏は。

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これは一般市民が心しないといけないことですね。

民主主義を形骸化させないためにも。

90年代後半までには普及されていなかったですが、こんにちでは、Eメールがありますから、これで頻繁に政治家に対して「官僚をコントロールする気があるか?」といったことをメールで送る必要があるとしているのです。

それが1回のみならず何度も行うことで、そして何人もの人が行うことで「政治家が官僚をコントロールするのが当たり前」という雰囲気を作り出すことができるとしているのです。

これも目の覚める思いがしたものです。

CMと同じように、1回見ただけでは買う気にならないものですが、何度も見ることで買う気になるのですね。 それは政治家の官僚への働きかけも同様でしょう。

どのようなことが望ましいか、市民が望んでいるかは、市民が黙っていてはわかりません。

こちらが、その意思を何度も直接に伝えることで初めてわかり、政治家の心に植え付けることができるのですね。

官僚が、絶大な権力をもち、政治家にはどうすることもできない日本の伝統のシステムが存在しているということですウォルフレン氏に言わせれば。

それが氏がいう「山県の伝統」というものです。 これは明治時代に出てくる山県有朋が、このシステムを作ったということのようです。

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  山県有朋

 

山県は政党政治を嫌い、持てる権力のすべてを政党政治の発展を阻止しようとしたというのです。

一般の日本人ですら発見できなかったことを、明晰にも抽出して見せたウォルフレン氏には敬服します。

それは、氏が他の著作で紹介しているT.マーフィー氏にも通じることですね。

一般の日本人のみならず、学者ですらも発見できそうもないことをよく発見したなあと途方に暮れるほどの凄さでした、両氏とも。

財務官僚は製品に対する需要の有無にかかわらず日本の巨大な生産装置を支える政策を摂り続けてきたのはよくわかることです。

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これは社会主義国ほどではないにしても、そのような生産を続けてきたのは間違いないでしょう。

日本の消費者の利益を犠牲にして、産業そのものに大きな負担を強いて、これを根本から変えたりしたら、景気を浮揚させると信じ、基本的な手段をコントロールできなくなると思い込んでいるということのようです。

まさしく前例主義で、今ある問題点を見つけ、それを良き方向へ導くためにはどうすればいいかを考えようともしない、という点に表れていますね。

これもこれまでウォルフレン氏が、いろんな本で指摘してきたことですね。

各省庁は「自分たちは状況を完全に把握している」「外部から助けてもらう必要がない」という虚構を守ろうとしているということですね。

それゆえに阪神淡路大震災のや日航機墜落事故の際も、自衛隊が出動するのに、欧米の場合よりも何倍もの時間がかかったということを指摘しています。 各省庁が組織内の人間や組織の立場を守ることに全力を尽くしてるということですね。

本来、日本市民全体の幸福を守るためにじぶんたちは存在しているということを忘れてしまっているのですね。

他に、日本の問題点をあげています。

政治家は、資金集めに翻弄され、勢力争いに明け暮れ、利益の斡旋にしか目にない。

官僚は、官僚制度に問題点があることを認識している人もいるが、それが壊されるような雰囲気になると防衛反応する、ということですね。

その政治運動を骨抜きするのが非常に上手いということですね。

国民は、日本特有の「仕方がない」という宿命論的な姿勢が、市民の思考を停止させ、民主主義を成立不能にしているということですね。

これもまた目の覚める分析眼ですね。

その既存の制度を壊すさせないためには、市民からそれへの関心をそらす、ということをこれまで多くなされてきた、というのはお分かりですね。

それもまた感心する分析力ですね。

それは私が敬愛するリチャード.コシミズ氏も本で指摘していたことですね。

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リチャード.コシミズ

このことを認識していれば、大きな変革時に関心をそらすための事件の誇張的な報道や、ありもしない自然災害の恐怖を半ばでっち上げがなされても関心が維持できるでしょう。

「大多数の人が、現状に満足しているのなら自分だけが政治改革のために頑張る必要はない」という諦観を持つのはNGです。

問題点は、日々の漫然とした生活では見えてこないですし、ましてやテレビや雑誌などの報道がすべてではないです、このような本を読むことで、しかも主体的に読むことで初めてわかり、それ自分の心の中にインストールされるという性質を持っているのです。

ですから、諦観にとらわれずに市民としての行動をやめるべきではないのです。

その問題点が周りの人がわかってないならば、それを主体的に伝えるという姿勢が大事でしょう。

そういった多角的な視点をもって日本を良き方向へ導きたいとお考えの人には是非とも、その内容と内奥を深く、広く認識してこれから生きていく手段として、この本をお勧めします。

●この本は以下よりどうぞ!

  ↓

日本という国をあなたのものにするために (海外シリーズ)

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●参考ページ その他、ウォルフレン氏の著作の紹介ページ

    ↓

『いまだ人間を幸福にしない日本というシステム』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/404153213.html?1442740078

『日本に巣食う4つの怪物』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/411025348.html?1442739448

『アメリカからの独立が日本を幸福にする』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/416108583.html?1442739522

『偽りの戦後日本』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/419390846.html?1442739842

『アメリカとともに沈みゆく自由世界』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/403562125.html?1442740154

『この国はまだ大丈夫か』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/403116925.html?1442740217

『怒れ!日本の中流階級』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/474007969.html

『年収300万円時代 日本人のための幸福論』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/376743327.html?1442740414

『独立の思考』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/369324554.html?1442740685

『快傑ウォルフレンの日本ワイド劇場』

http://hair-up3times.seesaa.net/article/474352719.html?1585742051

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