この本を読んで改めて確信したのは、現代人は科学的な事象に囲まれているがゆえに、科学的な知的武装をしていかなくてはならない、ということですね。
科学、技術、政治、社会が密接に絡んでいるのです。
それぞれの人間が、どのように自己を形成しつつ、この動きにかかわっていくかということを考える必要があるということですね。
例えば原発は、政治の強力な指導によってできたのです。
ある土地に原発を建設する際に、人民に対して必要な情報を客観的な証拠に基づいてただしく伝えることが必要です。
その経緯とその内容についてですね。
その時、説明する側は当然ながら、される側も当然知識が必要でしょう。
全くの知識がないまま、テクノクラートに説明されるだけでは、もっともらしい内容に感服して言いくるめられるのは目に見えているからですね。
そうではなく、やはりテクノクラートが驚くような知的な上昇を見せていれば、やはり侮れない気にさせて、深い研究の成果を提示してくるでしょうし、しっかりとした調査をしてくるでしょう。
住民の意見が、科学的な意見と同様に尊重されないのは、専門的な知識の高度化によるとしか言いようがないです。
ですから、説明される側もレベルの高度化を試みないといけないのはいうまでもないでしょう。 ゆえに教育の高度化が要求されているのです。
この本の著者である柴谷篤弘氏は「社会は物理的環境と時代の効用」であるとしていますが、なかなか興味深いことを書いている気がします。
それゆえに、その生れ出た土台が違うがゆえに、意見が同じにならないのですね人間は。
専門の外を出るとまるで無知識な人が出たりするのもそんなところに原因があるのでしょう。
それはやはり専門の違う人同士の混じり合わせが必要なのと、自分の専門外のことも自ら進んで修めようという気概をもって学んでいくことですね。
自分の専門を大事にするのではなく、人々のより良き生活のために科学はあるんだということを忘れてはならないですね。
そこは柴谷氏は、学術的に「思考の枠としてのパラダイムの存在を認めたうえで、なおかつ人間としての普遍性の確立を目ざす」といっていますね。
更に進んで「人間の思考の枠は、一様ではなく多様であり、その選択は社会、存在、拘束性によるものでありますが、これは論理以前の要素によって影響を受けます」ということです。
ゆえに、他者を尊重しつつ、その違いを必然なものとして認めたうえで、歩み寄りをしてく、あるいは自ら他の領域に足を踏み入れることが大事なのでしょう。
しかし、政策決定においては、どちらかに割り切らねばならないわけですが、その際はそのトップの人間も交えて研究を重ねたうえで、決定をすることです。
しかし、それが思わぬ悪い方向へいってしまった場合には素直に謝罪をしなくてはならないし、その後の決定にはその誤りを繰り返さないようにするべきであることは言うまでもないです。
その説明責任が、日本の官僚には存在していないがゆえに野放図になってしまっていると指摘したのはカレル.ヴァン.ウォルフレン氏ですね。
この本が出たのは77年の昔ですし、カレル.ヴァン.ウォルフレン氏の有名な『人間を幸福にしない日本というシステム』が出たのは94年ですが、その時代を超えて読み合わせをするのは楽しいことですね。
これは何も政策だけでなく、会社の作業でも一緒ですね。
研究を重ねたうえでゴーを出し、それがうまくいかなかったら詫びて、違う方向を探らないといけない。
その研究ですが、客観的な知識は、多くの科学者の長い時間をかけた勤勉な探索を何世代にもわたって積み重ねることが大事としています。
一層、研究にお金がかかり、一層の研究の工業化、企業化を必要とすることもあり、それは一層の自由競争と結びついて研究上の独占体制を招くという面を無視できないのだそうです。
このような事態を前にして、私たちはどうすれば…考えましょう。
自分のあるがままに基づいて生きるべきであるという「無為の思想」を柴谷氏は否定的にみているのです。
やはり現代は科学的な物事に囲まれているわけで、その科学的な事象ゆえに問題が浮上するのですから無為に生きていることがいいわけはないのです。
ゆえに、高度な専門家であるテクノクラートに従順であることも当然求めていないのです。
自分はどのような長所を持っているかを吟味して、それで自身をつけて、現代に生きてくべきかを興味深くこの本の後の方で書いてありますので、興味ある方は読んでみることをお勧めします。
この人と私の科学的なスタンスは一緒であるし、物事を非常に奥深く研究してから言葉にしているので共感が持てます。
私はそれほど感動しなかった本に関しては、他に読みたい本が山ほどあるので、すぐに売ってしまいますが、この柴谷氏の本に関しては、何度も読みたい衝動に駆られているので、棚に保管してあります。
そんな本に興味ある人は、この本を読むことをお勧めします。
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