渓内謙 『現代社会主義を考える』

2015-12-23 17:56:20 | 政治学

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どんな本にでも学ぶところは必ずありますので、とりあえず手に取ったものは読むようにしています。

こと、 「社会主義」に関する本でも、いまこの制度を標榜している国は、全世界で4か国しかありませんが、その内容について現代社会において学ぶべきことはありますので、読みました。

社会主義の名を冠した思想は1830年代にヨーロッパで誕生しました。

10月革命は、 「マルクス主義のロシアへの導入、その思想の政治結社、労働運動、旧体制打倒」というかたちで表れました。

この本を読んで、この著者は、社会主義寄りだな、ということを感じました。

この本の10ページ、13ページ、102ページ、105ページにおいて、その社会主義を擁護する言が書かれています。

しかし、どのような修正をしていくべきである、というような具体的な政策論はこの本では書かれていません。

それは当然かとは思います。

社会主義国家が、こういう場面に遭遇したらこういうことをしたら上手くいった、というような具体的な歴史的事例がなかったのですから。

しかし、この本が書かれたのは1988年です。

もう、この頃には、というか70年代にはもう社会主義の矛盾がどんどんあからさまになっていたのであり、その事例をみるにつけ、やはり社会主義は上手くいかないのではないか、幻想にすぎないのではないか、ということがしきりに言われていた時でした。

社会主義指導者の秘密主義、閉鎖的態度はグラスノスチで緩和されました。

その他、いろいろな政策が遅々とではありますがなされました。

しかし、そういった政策が功を奏することはなかったのです。

もう遅かったのです。

そして,91年に周知のように、ロシアでクーデターが起き、それをきっかけに社会主義は崩壊していくのでした。

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そんな時期に、社会主義寄りの本を書く気概を維持していたこの人には畏敬の念を持ちます。

この本を読んで思ったのは、社会主義と宗教は一緒だな、ということです。

社会主義国の指導者は、社会主義の創始者=マルクスの本なりを読んで、ぞっこんになるのです。

その創始者のいったことに対しては基本的に大部分では無批判でいます。

しかし、マルクスの言ったことが上手くいかない部分が現実の社会にあるのがわかると、そこを修正します。

でも大部分については無批判でいます。

宗教の信者や指導者は、その創始者の本なりを読んで、ぞっこんになるのです。

その創始者の言ったことには基本的には大部分では無批判でいます。

しかし、実際に社会に適合しない部分があるとそこを修正します。

でも大部分については無批判でいます。

思考構造が明らかに一緒ですね。

それでは上手くいかないでしょう。

確かに、カリスマ的な創始者や、宗教のカリスマ的な創始者の言ったことについては、それなりに説得力があり、この人の言ったことを実行していけば、必ずこのようになるだろうと幻想を抱いてしまう気持ちはわかります。

私が大学時代にお世話になった教授が曰くに、「マルクス『資本論』を読んで、その内容を大勢の人と語り合った」ということから鑑みるに、すごくカリスマ的な執筆家だったのでしょう。

しかし、所詮は人間の書いた文であるということを肝に銘じなくてはなりません。

社会主義への処方箋があらかじめ党により「科学的に」定められており、民衆はただそれに従えば、楽園に到達できるという思想が、社会主義の通念でした。

その人の言ったとおりに世の中が運ぶ、なんていうことはないのであって、今ある社会を基本としつつ、その人の言ったことを部分的に取り入れながら、社会を修正していく、という姿勢を基本とすべきではないのか、というふうに私は感じます。

確かに、社会主義の理念は素晴らしいと思います。

マルクスの言ったことを端的に整理すると以下の2つに要約されるでしょう。

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Kマルクス

1つは、個人的なものに対する、共同的集団的なものであり、あるいはレッセフェールにかわる自覚的な公共性、社会的な連帯の確立。

もう1つは、社会は個人および国家の対立概念である、ということです。

この制度を採れば必ず全人民を幸福にできる、などというのは幻想であって、そういう試みが成功した事例があるならば話は別ですが、やはりそういうものがないならば、歴史から学んでいく必要があるのです。

カリスマ的な著作家、カリスマ的な指導者の言を信じ切ることはやはり危険であり、問題点が社会に浮上したら、そこを随時修正していく、という態度が必要なのではないか、と思われて仕方ありません。

確かにマルクスの考えた社会主義の理念は素晴らしいと思います。

マルクスは、資本主義社会が発達すればするほど、持てる者と持たざる者の差が開いていき、最終的に持たざる者が絶対的な貧困の生活を余儀なくされる、という事態を憂えて、その社会を打破すべく、 『資本論』を書いたのだといいます。

であるならば、マルクスの書いた本を読めばいいのです。

そこに書かれている内容についていいなと思ったら、それを部分的に今自分がいる社会に当てはめて上手く行くように実験すればいいのです。

これまで、マルクスの言ったことを全部社会において実験して上手くいったという経験理論がないのに、「社会主義に移行すれば上手くいく」とか「資本主義から社会主義に移行した国はあるけれども、社会主義から資本主義に移行した国はない」といって、マルクスの言ったことをすべて金科玉条に仕立て上げる必要はなかったのだと言えます。

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社会主義を採用した国において、また採用しない国においても、マルクスおよび他の社会主義に関する思想を述べた本は、それこそ数限りなくあります。

その思想の変遷を読んでいくと非常に興味深いものがありますし、私も大学時代やそれを卒業してからたくさん読みました。

それでわかったことは、マルクスおよび他の社会主義思想に関する本は学ぶところはあるけれども、全部を国に採用することはできない。

全部採用しようとすることによって社会主義の試みは失敗した、ということです。

その内容全部についてここで書くことは不可能ですので、興味のあるかたはこの本も一助としてお勧めいたします。

現代社会主義を考える―ロシア革命から21世紀へ (岩波新書)

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