宮田律 『イスラム世界と欧米の衝突』

2018-08-05 21:50:27 | 国際社会

今の日本においては、国際社会のことについて無関心でいても、普通に働けば普通に生活していけます。

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しかし、そうでいていいのでしょうか?

国際社会の動きについて、またイスラム社会のついての理解は、同じ人間の営みを探り、共存共栄していくことではやはり無関心ではいられないというのが正直なところです。

ニュースをいろんな媒体から日本で聞く、あるいは観ることはできますが、その内容はアメリカ寄り、欧米寄りであることは間違いありません。

そういった情報だけで、国際社会を理解した気になっていては平等ではないですね。

やはりこういったイスラムについてつまびらかに詳説した本を根気よく読んでいかないと。

湾岸戦争はイラクのクウェート侵攻がきっかけで起きた戦争ですが、日本や欧米では「貧困な大衆のことを考慮しないクウェート王政への懲罰」ということで侵攻したといわれていましたが果たしてそうでしょうか?

欧米では殆どの国が、反イラクでした。

しかしそれだけでなく、エジプト、シリア、サウジといった国も反イラクで、これに反発したのでした。

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こういった事実だけをみても、果たしてどちらが正当なのかはわかりかねませんね。

やはりイラクの内実を示した本なりを読まないと。

イスラムとキリストの対立は、やはりそのイスラエルという土地にまつわるものなのです。

キリストは、古代ユダヤ国家のあった地理的境界はイスラエル国家の領土であるという主張に対し、イスラムはムハンマドが大使のガブリエルの導かれて昇天した場所というのが両者の対立になっているのです。

キリストがユダヤ国家のあった地理云々という立場であるのは、もともとキリスト教がユダヤ教から発したものだからというのが、そちらを支持するというのが一般的な言い分でしょう。

これを理解しないことには、イスラムとキリストを理解するのは難しいでしょう。

しかし、やはり多数派であるキリスト教国である欧米寄りに日本はならざるを得ないですね。

国交や貿易の数では圧倒的に欧米の方が、イスラム教国よりも多いですから。

しかし、それは正さないといけないですし、キリスト教国によるイスラムの圧政の歴史も知らなくてはいけないでしょう。

共産主義時代において、東ヨーロッパの中央アジア(タジク、ウズベクなど)への抑圧がかかれています。

アラビア文字をラテン文字やキリル文字に変えさせ、イスラム知識も抑圧したそうです。

しかし、ソ連の崩壊でイスラムの復興がなされ、アラビア語、コーラン、イスラム慣習や学校も復活したようです。

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その詳細については本書を読んでいただきましょう。

しかし共産主義の呪縛から逃れた後は、西洋の物品が大量に流れ込み、富める者とそうでないものとの2極化ができたようです。

それでは、社会正義と平等を基本とするイスラムの教えに反するため、80年代の後半において、タジクなどでイスラム復興の運動がおこったようです。

また、日本や西欧はイスラム国、アラブ国に対し依存している部分が多いのです。

いうまでもなく、石油ですね。 それに一番依存しているのは言うまでもなくアメリカですね。

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イラン、イラクのペルシャ湾の石油に大きく依存しているのです。

しかしアメリカはこれらの国を長年封じ込めをしてきたのです。

アメリカ人は、1人平均で年に66バーレルを使うのです。

逆に中国人の場合は、年に3バーレルです。

のみならず英国も、それに似た対応をこの国にしてきたのです。

イギリス経営の石油輸送施設をイランから接収してきたのです。

イギリスイランを国際市場から排除したのです。

結果、イランの入超になったのです。

こんな理不尽ないわれはないでしょう。

イギリスの支配層とアメリカの支配層がグルになっているのは明白です。

53年にアメリカCIAに買収された貧困層によるクーデターがイランで起きました。

それによってモサデク政権が崩壊しました。

そして、国営イラン石油会社には、生産高や販売価格の決定できず、欧米が支配し続ける構造になってしまったのです。

そこでイランにおいて巻き返しが起こればいいのですが、実際はそうならず、首相のレザー.シャーは経済的な抵抗をせず、懐柔してしまったようです。

西洋モデルの社会改革に着手してしまったようです。

欧米に、大学生を大勢留学させ、テヘラン大学を作るも、法、医学、経済、工学とどれもイスラムの伝統的制度を希薄にしていったのです。 アメリカのイランの借款は53年に5900ドルだったのが、57年には5億ドルになったのだそうです。

その5億ドルの内訳は、軍需、電気、電信によるものだったようですが、軍需が40%を占めていたようです。

しかも賄賂によって。

大衆の生活上の問題と苦難の上に成り立ったものだったようですね。

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ホメイニはこんな政治をおこなってきたレザーを批判したようです。

腐敗と抑圧の国王政治として。

しかし、イスラムの西洋の文物や憧れの流れは押しとどめようがなく、それによって都市への人口流出、富裕層と中下流の格差が拡大するという現象は見る目もなく進んだのは言うまでもないです。

その時、イスラムの理論家は、精神的成長と物質的改善は同時に行われるべきとして不平等をなくし、救貧税の重要性を説いたのでした。 これはザカートや喜捨で行われるべき性質のものです。

マウドゥーディ(印)、マンナン(パ)、チャプラ(パ)といった知識人たちはイスラム経済のあるべき姿を論じたようです。

そして、第二次大戦後、欧米によるイスラムのナショナリズムの抑圧は盛んになされました。 欧米寄りの独裁体制を支援し、軍事的優位を支援してきたのでした。

核兵器を欧米は持っているにも関わらず、イスラム諸国が所持するのは許さないとまるで駄々をこねるような言い回しをしてきたにも関わらず、日本はそういった欧米の言い分を支持してきました。

これはダブルスタンダードもいいところでしょう。

そういった事をなくすためにも、一方寄りでない、客観的なものの見方をしている著者の本を読んでいくことが重要でしょう。

しかし、そういった本はすくないですから、日々客観的に見ている知識人やインターネットで、そういう人の発信情報を常に接していかなくてはならないでしょう。

この本を読んでそんなことを考えてしまいました。

物事を広く見れるようにするための一助として、この本をお勧めします。

●この本は以下よりどうぞ!

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イスラム世界と欧米の衝突 (NHKブックス)

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梅棹忠夫 『知のハンターたち』

2018-08-05 21:00:35 | 科学論

この本は梅棹忠夫氏の対談集になります。

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梅棹忠夫

忠夫氏は、人類学が専門ですが、関心の対象はいろんな分野にあり、しかも多岐にわたるものですから、氏の書いた本を数ページ読めば、その懐の深さがわかります。

それを察知した人は、巻末の著者紹介のページをみて、次に買いたいリストに氏の本をいっぱい載せていくでしょう。 

かくいう私もそうでした。 

この対談集は、いろんな学者や専門家との対談いなりますが、料理、住居、衣装、生活社会、淡水生物、言語、雪氷学、農学といろんな人たちとの対談ですが、それでいて話が滞ることがなく、逆に話をすればするほど、奥深く話になっていくから驚嘆です。 

料理の専門家との対談では、ヨーロッパの菓子はアラブから来た、ミルフィーユはペルシャから来た、ナイフやフォークはベネチアから来た、といった話を読むことができました。 

対談が行われた当時のヌーベル.キュイジーヌ(新料理)というジャンルがフランスにあったようですが、これは味があっさりで、日本からの影響を受けていた、ということです。 

しかも、フランスの伝統的な高級料理は、普通の人が見ても作ることができないそうですが、日本の料理はメニューあればだれでもできる、という特徴があるようです。 

こういった教科書にはない情報等を知ることができるのは、本を読むメリットですね。

また天体や時計を研究してきた人との対談において、古代において人類は、天体の動きを観測することで王や国の運命を占っていたということですね。

それのみならず、種まきや収穫も。 ゆえに、時は神の支配を受けていたということです。

時(テンプ)はラテン語で、それをつかさどるのが神殿(テンプル)の語源になったというのです。

修道院での神の時を測っていた。

機械時計ができ、町の時計塔が共同体の時間になったのだといいます。

クロノメーターは、ジョン.ハリンスンが発明したらしく、2万ポンドの懸賞金を獲得したようです。

こういったことを、この対談で知り興味が掘り下げられたように感じました。

また、言語学の専門家との対談では、チベット.ビルマ系の言語は語り順が日本語とだいたい一緒であるということです。

これも驚きであり、興味の深くなった情報でした。

また、地理の専門家との対談で、氷河は水を氷の形で貯蔵して、これを徐々に溶かして供給している。

高山がなければ砂漠のオアシスは成立しない。

農耕ができないのはステップで、砂漠でも農耕は可能ということを知って驚きました。

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また経済学の大家との対談では、当時のそして今もそうですが、国際経済の指標は、「どれだけ作り、どれだけ輸出したかで終わり、生活の中でどのように使われたかは対象になっていない」という鋭い指摘を読んで、非常に感銘を受けました。

こういうことを対象に考えれば、そういった指標だけで考えるのではなく、どのように使われたかも勿論、どのような精神的な豊かさをもたらしたかといった別の側面等を考える必要があるのではないか、と常々思っていた私の心を熱くするものでした。

その大家がおっしゃったときに、梅棹氏

「情報というのは何も効果を生まない。それを受け取る側の人生をどれだけ埋めるかが重要である。 人の人生の大部分は何もならない。 しかし、事実、情報が経済価値を生んで、それが取引されている。」

という慧眼を通して抽出された理論を読んで心がふくよかになったのでした私は(笑)。

ですから、自分から進んでそういった情報を取り入れようと努力していく必要があるのでしょう。

新聞や雑誌はもちろん、こういった本をたくさん読むことで、そういった情報に接することができるのです。

本などを1冊2冊よんだこところでは接することはできないのは、私のこれまでの人生から明かですから。

そういった情報を得るには、まさに砂の中から砂金を探す作業に似ているということは、梅棹氏の親友である加藤秀俊氏の指摘であり、私も共感します。

そういう作業を多くの人にしてもらいたいです。

人生が豊かになりますから!

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この本を読んで感じたのは、梅棹氏の寛容さですね。

専門に閉じこもることなくいろんな分野に秀でているのは、とにかくいろんな本を読んでいるからでしょう。

そして人を分け隔てしない人なんでしょうね。

専門家という壁を作らないということにおいても、人を気に入った人としか付き合わないという意味でも狭い人は多くいます。

そんなんでは寂しいでしょうと思われるのですが、本人はそうでもないから不思議です(笑)

しかし、梅棹氏はその対極にいて好奇心の赴くままいろんな本を読み研究し、いろんな人と付き合う。

しかし不思議ですね。

梅棹氏は、他の本で人との付き合いは煩わしいといったニュアンスのことを書いてありましたが、これだけ多くの人との付き合いがあり、対談集の数は計り知れません。

また氏は、代表作の1つである『知的生産の方法』の中で、「私は読書家ではない」と断っておきながら、年に100冊くらいしか読んでいないというのですから全然違うじゃないですか!といわざるを得なかったですね(笑)

でもその是非はどちらでもいいです。

やはり情報は人生を豊かにするのは明白ですから、こういった専門や人の分け隔てをしないで情報に接していくことが重要だと思いました。 その手だての1つとしてこの本をお勧めしたいです。

●この本は以下よりどうぞ!  

「知」のハンターたち―梅棹忠夫対談集

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