梅棹忠夫 『知のハンターたち』

2018-08-05 21:00:35 | 科学論

この本は梅棹忠夫氏の対談集になります。

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梅棹忠夫

忠夫氏は、人類学が専門ですが、関心の対象はいろんな分野にあり、しかも多岐にわたるものですから、氏の書いた本を数ページ読めば、その懐の深さがわかります。

それを察知した人は、巻末の著者紹介のページをみて、次に買いたいリストに氏の本をいっぱい載せていくでしょう。 

かくいう私もそうでした。 

この対談集は、いろんな学者や専門家との対談いなりますが、料理、住居、衣装、生活社会、淡水生物、言語、雪氷学、農学といろんな人たちとの対談ですが、それでいて話が滞ることがなく、逆に話をすればするほど、奥深く話になっていくから驚嘆です。 

料理の専門家との対談では、ヨーロッパの菓子はアラブから来た、ミルフィーユはペルシャから来た、ナイフやフォークはベネチアから来た、といった話を読むことができました。 

対談が行われた当時のヌーベル.キュイジーヌ(新料理)というジャンルがフランスにあったようですが、これは味があっさりで、日本からの影響を受けていた、ということです。 

しかも、フランスの伝統的な高級料理は、普通の人が見ても作ることができないそうですが、日本の料理はメニューあればだれでもできる、という特徴があるようです。 

こういった教科書にはない情報等を知ることができるのは、本を読むメリットですね。

また天体や時計を研究してきた人との対談において、古代において人類は、天体の動きを観測することで王や国の運命を占っていたということですね。

それのみならず、種まきや収穫も。 ゆえに、時は神の支配を受けていたということです。

時(テンプ)はラテン語で、それをつかさどるのが神殿(テンプル)の語源になったというのです。

修道院での神の時を測っていた。

機械時計ができ、町の時計塔が共同体の時間になったのだといいます。

クロノメーターは、ジョン.ハリンスンが発明したらしく、2万ポンドの懸賞金を獲得したようです。

こういったことを、この対談で知り興味が掘り下げられたように感じました。

また、言語学の専門家との対談では、チベット.ビルマ系の言語は語り順が日本語とだいたい一緒であるということです。

これも驚きであり、興味の深くなった情報でした。

また、地理の専門家との対談で、氷河は水を氷の形で貯蔵して、これを徐々に溶かして供給している。

高山がなければ砂漠のオアシスは成立しない。

農耕ができないのはステップで、砂漠でも農耕は可能ということを知って驚きました。

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また経済学の大家との対談では、当時のそして今もそうですが、国際経済の指標は、「どれだけ作り、どれだけ輸出したかで終わり、生活の中でどのように使われたかは対象になっていない」という鋭い指摘を読んで、非常に感銘を受けました。

こういうことを対象に考えれば、そういった指標だけで考えるのではなく、どのように使われたかも勿論、どのような精神的な豊かさをもたらしたかといった別の側面等を考える必要があるのではないか、と常々思っていた私の心を熱くするものでした。

その大家がおっしゃったときに、梅棹氏

「情報というのは何も効果を生まない。それを受け取る側の人生をどれだけ埋めるかが重要である。 人の人生の大部分は何もならない。 しかし、事実、情報が経済価値を生んで、それが取引されている。」

という慧眼を通して抽出された理論を読んで心がふくよかになったのでした私は(笑)。

ですから、自分から進んでそういった情報を取り入れようと努力していく必要があるのでしょう。

新聞や雑誌はもちろん、こういった本をたくさん読むことで、そういった情報に接することができるのです。

本などを1冊2冊よんだこところでは接することはできないのは、私のこれまでの人生から明かですから。

そういった情報を得るには、まさに砂の中から砂金を探す作業に似ているということは、梅棹氏の親友である加藤秀俊氏の指摘であり、私も共感します。

そういう作業を多くの人にしてもらいたいです。

人生が豊かになりますから!

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この本を読んで感じたのは、梅棹氏の寛容さですね。

専門に閉じこもることなくいろんな分野に秀でているのは、とにかくいろんな本を読んでいるからでしょう。

そして人を分け隔てしない人なんでしょうね。

専門家という壁を作らないということにおいても、人を気に入った人としか付き合わないという意味でも狭い人は多くいます。

そんなんでは寂しいでしょうと思われるのですが、本人はそうでもないから不思議です(笑)

しかし、梅棹氏はその対極にいて好奇心の赴くままいろんな本を読み研究し、いろんな人と付き合う。

しかし不思議ですね。

梅棹氏は、他の本で人との付き合いは煩わしいといったニュアンスのことを書いてありましたが、これだけ多くの人との付き合いがあり、対談集の数は計り知れません。

また氏は、代表作の1つである『知的生産の方法』の中で、「私は読書家ではない」と断っておきながら、年に100冊くらいしか読んでいないというのですから全然違うじゃないですか!といわざるを得なかったですね(笑)

でもその是非はどちらでもいいです。

やはり情報は人生を豊かにするのは明白ですから、こういった専門や人の分け隔てをしないで情報に接していくことが重要だと思いました。 その手だての1つとしてこの本をお勧めしたいです。

●この本は以下よりどうぞ!  

「知」のハンターたち―梅棹忠夫対談集

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