国立大学職員日記
メインコンテンツ
国立大学職員日記:記事一覧




 1月19日付の「文教ニュース」に平成21年度国立大学法人法人別運営費交付金予算額案が載っていました。財政・財務関係は疎いを通り越してほとんど何も知らないに等しいようなものですが、このような予算額から全国立大学を比較して見るのも面白いかと思ったので一覧にして見ました。まずは下記ランキングをご覧ください。





 「指数」というのは自分が勝手につけた数字です。予算の全額を大学の数(82大学)で割って出した平均値を100とした場合の、各大学の予算額の大きさを示します。25位の琉球大学が丁度「100」ですから、国立大学の平均交付金額はおよそ130億円ということになります。
 「累積額」はその大学とその大学より上位の大学の交付金額の合計の、全体に占める割合です。10位の神戸大学で「43.2」とあるということは、全交付金の43.2%を上位10大学が受けていることを示します。

 その上で改めてランキングを見ると、やはり東京大学が頭一つ抜きん出ているのが分かります。第2位に京都大学にすら「指数」で200以上の差をつけていることを考えれば「頭二つ分抜きん出ている」と表現したほうが正しいかもしれません。
 上位を独占しているのはいわゆる旧帝大と呼ばれる大学ですが、筑波大学がその中に割り込んでいるのが少々意外でした。このことについて調べて見たところ、国家公務員時代の各国立大学の学長の俸給も、筑波大学は旧帝7大学に肩を並べていたとのことでした。行政組織として見た場合、筑波大学はどうやら旧帝大グループに属するようです。
 旧帝大に続くのが広島大学や神戸大学を筆頭とした、いわゆる旧官立大と呼ばれるグループです。15位の鹿児島大学を除けば上位18大学は全て旧帝大と旧官立大が占めています。

 次に「累積額」に着目した場合、14位の新潟大学が50.3ですから、82ある国立大学のうち、上位14大学が運営費交付金の半分を占めていることが分かります。割合に直せば上位17%の大学が運営費交付金の50%を受けていることになります。ジニ係数的に言えば国立大学間には交付金の配分に関してかなりの格差があるといえそうです。もっとも、総合大学と単科大学の違いや、職員数や学生数に違いがあるため、一概に「格差がある」と表現できるほど簡単なものではないのでしょう。



 ランキング形式でみた運営費交付金ですが、今度は額の大きな順に横軸に並べて比較して見ましょう。





 相変わらず東京大学がずば抜けています。ランキング形式なんかよりはるかに分かりやすくずば抜けていますね(笑)。またこうして見ると、やはり旧帝大レベルが他の大学と区別されていることが分かります。上位12大学以下は綺麗な直線を描いているのも印象的です。


 さて今回は運営費交付金額から見た国立大学ということでしたが、財政・財務に疎い自分はこれらの数字が何を反映しているものなのか、正確には分かりません。各大学の学力偏差値など、学力に関して一定の相関関係はあるでしょうが、例えば学力偏差値の高い単科大学などはこのようなランキングでは上位には出てきません。「行政組織としての国立大学」と位置づけることが可能かも知れませんが、研究費等を度外視し、教職員数などだけで着目した場合には東京大学があれほど抜きん出るのも不自然です。結局、学力偏差値・行政規模・研究規模など、様々な要因が絡み合って出来上がるのが上記の数字なのだと思います。

 ちなみに運営費交付金額の合計は約1兆円で、これは国家予算の一般会計を80兆円と試算した場合の1.25%にあたります。国立大学には国家予算の1.25%が割り振られる…。これが「学術研究および教育の最高機関」の主翼たる国立大学に割り振られる数字として高いのか低いのか…。いつか財政に詳しくなったらこのあたりの国際比較なんかをして見たいと思っています。既刊本でこの手について詳しく述べている資料をお知りの方は、ぜひコメント欄まで書き込みをお願いします。

※平成22年度版(2010/8/1更新) →  平成22年度 運営費交付金 国立大学ランキング

※追記:使用したデータのHTML版

コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )


« 共済の救急薬... 追記:運営費... »
 
コメント
 
 
 
参考になりました (portfolio68_10)
2010-05-12 01:22:07
 とても素晴らしいデータをありがとうございました。私は現在国家公務員であり,いつか国立大学に入りたいと思うほど,「国」が好きです(変でしょう?)。この表を拝見して,トップの東大に入れないなら,下のトップに近い小樽商科大学や奈良教育大学を目指そうかなとか思ったりしています(何てヒマなんでしょう。でも最下位の鹿屋体育大学には,ワタシ体育が苦手で,かつ40歳過ぎで体力もないので,残念ながら入れません。)。でもこのランクの下のほうの大学は,それだけ「つましい」予算でやり繰りしているということですから,その点でも好感が持てます。今後も国立大学に関する粋な(?)情報をお願いします(右側の「外伝」のコメントもいかしてますね!)。
 
 
 
面白いですね (平生)
2011-07-16 16:50:29
国家間比較も面白いので是非見てみたいです。学部・学科別の比較も面白そうです。今その国がどの種類の学生を育てようとしているのか?また企業が望んでいるのか?
 
 
 
Re:平生 (管理人)
2011-07-16 19:27:26
国際比較をしようとすると、まず各国の「一般運営費交付金」に該当するものを洗わなければならず、かなりきついと思います。多分こういう事情のために、国際比較などでは「OECDにおける教育予算のGDP比」のような、ちょっと曖昧な比べ方をしているのだと思います。

学部、そして学部内の研究室ごとに配られる一般運営費交付金はやろうと思えば可能です。ただ、通常そこまで詳しい資料は公表されていないので、もしやろうとするなら情報公開の手続きを踏む必要があると思います。全国立大学を調べるのは無理ですが、例えば東京大学だけに限って調べる、とかは面白いかもしれないですね。
 
コメントを投稿する
 
現在、コメントを受け取らないよう設定されております。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。