国立大学職員日記
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国立大学職員日記:記事一覧




■はじめに
 このブログを頻繁にご覧になる方は既にご存知かと思いますが、国家公務員給与削減法の成立を受けて、政府は国立大学法人を含む独立行政法人等の機関に対しても給与引下げの実施を要求しました。
 前に紹介した6月3日のこの報道では「給与削減を実施した国立大学は90法人中13法人」と、国立大学における給与引下げ状況の一部の情報が得られましたが、いまいちその全体像は分かっていませんでした。
 全体像を知る方法は確かにあります。それは文部科学省が毎年6月末日に公開している「文部科学省所管独立行政法人、国立大学法人等及び特殊法人の役員の報酬等及び職員の給与の水準(平成**年度)の公表について」という記事を参照することです。ただ、この報道は通常「前年度の情報」を公表する統計情報なので、平成24年度に実施される給与引下げに関する情報は平成25年6月30日まで待たねばならないのが原則です。
 そんな訳で、個人的には来年の平成25年6月30日まで全体像の把握はおあずけかと思っていたのですが、つい先日発表された「文部科学省所管独立行政法人、国立大学法人等及び特殊法人の役員の報酬等及び職員の給与の水準(平成23年度)の公表について」を調べてみると、なんと「IV 法人が必要と認める事項」に、平成24年6月29日時点の各国立大学における給与引下げ状況(あるいはその進捗状況)が記載されていました。
 全ての国立大学が一律に記載しているところから見ると、恐らく総務省等から今年度分の作成にかかり、給与引下げ状況を必ず記載するよう指示があったのだと思います。具体的な指示がどこから出たのかは分かりませんが、なかなかいい仕事です!

 という訳で、今回のエントリーは国家公務員給与削減法の成立を受けて、国立大学法人及び文部科学省管轄独立行政法人等がどのくらい給与引下げを実施しているかの一覧です。
 情報は全て「文部科学省所管独立行政法人、国立大学法人等及び特殊法人の役員の報酬等及び職員の給与の水準(平成23年度)の公表について」に掲載されている各法人のデータから直接引用しています。「IV 法人が必要と認める事項」に載せてある文言は全て下記の一覧に載せたつもりですので、少なくとも給与引下げに関する情報は本エントリーに記載されている以上には存在しないはずですが、第一次情報源を調べたい場合は上記リンクより文部科学省のサイトへ飛んでください。

■「役員」と「職員」の区別について
 実施状況については「役員」と「職員」に分かれています。一部で「役員に準ずる職員」のような区分もありましたが、そのようなものは全て「役員」に含めました。
 どうして「役員」と「職員」で実施時期や進捗状況が異なるかというと、これには「労働条件の不利益変更」という、労働法上の問題が絡んできます。その具体的な内容は以前に作成した「【メモ】独法・国立大学もやっぱり国家公務員に準じて給与が引き下げられることになるのだろうか?」に載っていますが、簡単に言うと「経営陣にあたる「役員」は自分たちの給与引下げを決定するのに自分たちだけが合意すれば良いが、「職員」の給与引下げを決定するには「労働組合」等、職員側の合意を得る必要があるため、「職員」の給与引下げは「役員」の給与引下げよりも難航する」というのが主な理由です(未実施の状況において「役員」が「検討中」、「職員」が「労使交渉中」となっているのも同じ理由による)。
 逆に言えば「職員」の給与引下げを実施あるいは決定している機関は、既に労働者側との給与引下げの合意が得られているとも言え、まだ実施が決定していない機関はもしかすると労働組合が頑張って交渉している最中なのかも知れない訳です。
 今回の給与引下げについては自分の大学でも珍しく「今回ばかりは組合頑張れ」みたいな声が聞こえてくるので、今回のエントリーはもしかすると滅多に日の目を見なくなってしまった組合員さんたちの栄光と挫折の記録とも言えるのかも知れません。


■国立大学法人(及び文科省管轄法人)の給与引下げ実施状況の一覧







■一覧の詳細データ















■月別の実施機関割合









■終わりに
 以上、このエントリーを書いている時点で最新の国立大学法人等の機関における給与引下げ状況でした。
 一覧の最後にある月別の実施状況のグラフによれば、7月開始時点で大体半分の国立大学で給与引下げを実施しているようです。8月は現時点では7月とほぼ変わらずですが、恐らくこのエントリーを書いた後に「8月から実施する」と決定する機関がいくつか出てくるはずです。個人的には遅くとも10月くらいまでには、大体全ての国立大学で給与引き下げが決定する、と見ていますが、さてどうなることやら。
 なおエントリー中ではほとんど触れていませんが、「引下げの内容」については引用した資料中に特にこれといって記載が無かったので、恐らく国家公務員給与削減法と同じ内容の引下げと見てほぼ間違いないと思います。

 最終的に全国立大学がいつから給与引下げを行ったかについては、最初に書いたとおり来年度の6月末日の報道資料発表で確実に明らかになりますが、もしそれより早くになんらかの資料を見つけたら、またエントリーを作成しようと思っています。

コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
最後の抵抗が続いてますね (等々力)
2012-07-02 23:03:06
国立大学法人は結構ばらつきがありますね。労使の力関係や財務状況の差によるものでしょうか。そう見ると、内情が垣間見えておもしろいですね。東大・京大・東工大・一橋あたりが粘っているのは順当だと思いますが、素人目線だと「番狂わせ」も目に付きます。「あの大学がこんな条件で陥落してるのかよorz」と思いきや、「え、この大学がまだ頑張ってるの!?(失礼w)」みたいな。

特に、役員・職員ダブル未決の鳥取、秋田、山形、宮崎そして帯広畜産(!)。労使一丸となって法人化理念と労働基本権の旗を守り抜いておられるわけですね。ご立派です。帯畜で組合役員をなさっていると思しき先生のtwitterアカウントは相当な人気を博しており、私もよく閲覧するのですが、“民意”に弓引く大学レジスタンスの先頭に立っておられるとは・・・。平素のつぶやきは「進歩的傍観者☆ニヒリズム」風なだけに、ちょっと意外です。
 
 
 
Re:等々力さん (管理人)
2012-07-03 07:17:56
自分は一覧を作っただけなので詳しいことは知らないのですが、やはりそういった内部事情があるようですね。

そこらへんをまとめられたら本当に面白そうなんですが、誰か書いてくれないですかねぇ。
 
 
 
誤りがあります (いち教員)
2012-07-09 23:12:16
本文で「なかなかいい仕事です!」と書かれていますが,この記事はよい仕事をされていると思います。大変参考になります。
ただ,「逆に言えば「職員」の給与引下げを実施あるいは決定している機関は、既に労働者側との給与引下げの合意が得られているとも言え、まだ実施が決定していない機関はもしかすると労働組合が頑張って交渉している最中なのかも知れない訳です。」という下りがありますが,これは誤りです。実際には多くの大学で労働者側が合意していないのに大学が給与削減を強行しています。人事院勧告のように一定の調査を行って給与水準を決めるのとは異なり,今回は単に政治の都合で給与を下げようとしているだけなので,合意する理由を探すのは難しいと思います。これから未払い賃金請求訴訟が全国で起こされるのではないでしょうか。
 
 
 
削減率 (組合情報)
2012-07-10 21:33:08
私が組合経由で聞いたところでは、大学によっては削減率を圧縮しているそうです。例えば岡山大学、島根大学、新潟大学などで、削減率を公務員のものより圧縮しているとのこと。
そういうところは、労使で妥結しているのですが、他の多くの大学では、労使の合意が無いままのようです。
 
 
 
Unknown (ray ban outlet)
2016-06-30 18:05:57
最終的に全国立大学がいつから給与引下げを行ったかについては、最初に書いたとおり来年度の6月末日の報道資料発表で確実に明らかになりますが、もしそれより早くになんらかの資料を見つけたら、またエントリーを作成しようと思っています。
 
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