国立大学職員日記
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国立大学職員日記:記事一覧




■はじめに
 この前国立大学法人等職員採用試験の第一次試験(筆記)の監督員をやりました。うちの大学では大体総務・庶務系の係長・主任クラスが監督員を勤めることが多いんですが、自分はセンター試験等も含めてこういう監督員業務が好きなので毎回やらせてもらってます(監督員業務はやりたがる人があまりいないので立候補すれば大体やらせてもらえます)。しかも今回はさらに無理を言って試験方法の説明や試験開始の号令をやる役もやらせてもらいました。別にここまででしゃばる必要も無かったんですが、7年前に試験を受けた際に「もし採用されたら自分もいつか「試験始め!」とか言うような役をやらせてもらえるのかな」とか考えていたので、この疑問への回答を与える意味においても、今回の監督員業務はなかなか有意義だった気がします。

 さてそんな国立大学法人等職員採用試験ですが、試験案内の勤務条件の項目には大体「初任給17万円から20万円くらい」という表記がなされます。人によってはもっと具体的に、さらに採用数年後の給与についても知りたがる人が多いかと思います。しかし、上記のような書き方は試験実施側としても決して意地悪で曖昧に書いているのではなく、給与というのが受け取る人の経歴や勤務状況によって千差万別に変わるため、どうしても曖昧にならざるを得ないという事情があるのです。
 とは言えやはり、受験者にとってこれから就こうとする職業の給与というのは非常に関心があるところだと思います。そこで当ブログでは自分が受け取った給与を全て公開し、これから国立大学事務職員になろうとする方への情報提供を行っています。あくまで「もらい得る給与の可能性の一つ」なので、仮に本エントリーの閲覧者が国立大学事務職員になったとしてもこれと全く同じになる保証はありません。しかし、国立大学は国家公務員の給与体系を引継ぎ、どの国立大学でも似たような給与体系を持っているため、抽象的な給与体系というものから生み出された具体的な結果の一つとして、本エントリーの情報は何らかの役に立つのではないかなと思っています。
 また国立大学は法人化しているので国家公務員と全く同じ給与体系になる保証はありませんが、現時点では両者の給与体系は(特に基本給の部分で)「ほぼ同じ」と言いえます。国家公務員試験は今年度より「国家二種」等の区分が変更になったのでこことの兼ね合いがやや不透明ではありますが、自分の給与は昔で言う「国家公務員二種」で採用された場合の給与の参考にもなるはずですので、この点参考までに申し添えておきます。

■給与情報について
 具体的な内容は見れば分かると思いますが、少し注釈をつけておきます。
 給与の詳細は毎月受け取る「基本給・手当」と、6月と12月に受け取る「期末手当・勤勉手当(いわゆるボーナス)」に分けてまとめています。またそれらをあわせた「年収」も作成しています。
 毎月の給与において、「手当」は「時間外手当(残業代)」以外は今回から全て「その他手当」で統一しました。基本給や期末・勤勉手当は昇給や成績率によって変動するため、それら変動要因が分かる情報も併せて表記しています。
 「控除」とは所得税や共済年金など、いわゆる「法定控除」されるものの総称です。ここには損害・入院保険や積み立て貯金など、任意で引き落とされるものは含んでいません。














 数字のデータは「正確」ではありますが、「視認性」には欠けると思うので、今回は「手取額」を各月ごとにまとめてみました。パッと見ると横這いの印象も受けますが、「最低もらえる額」は緩やかに右肩上がりになっている気がします。










■おわりに
 一般運営費交付金は年々約1%削減されています。このことについて自分は特に反対していません。合理化してから予算を減らすよりは予算を減らしながら合理化を図る方が効率的ですし、そうでもしないと既存の体制は中々変えられないと思っています。国家公務員給与法案削減についても、それが国会で承認され、司法としてもこれを取り消す程の違法性を認めないのであれば、行政機関はこれを実施し、また各国立大学法人も各々の判断で給与引下げを行うかそれ以外の財源を削減してこれに対処すれば良いと思います。一時期非常勤職員の雇い止めが問題となりました。有期雇用の存在是非はともかく、既存の法律・裁判判例を遵守しルールに沿って厳格に運用しようとすることそれ自体は評価していいと思います。運営費交付金削減とも絡み、各国立大学は外部資金の獲得努力を以前にも増して行おうとしています。科学研究費補助金や公的資金による研究費に限らず、産学官連携や海外との共同・受託研究を行えるような体制、また学内においても選考するプロジェクトをより競争的にし、個々の質を高める努力が進んでいる気がします。
 これらの推進や問題解決のために、国立大学事務職員に求められるものはこれまで以上に大きく、また今後もさらに大きくなると思います。自分はその期待に応えたいと思い、そして応えるために必要なことはどんな障壁にぶつかったとしても実行していきたいと思っています。しかし抽象的な目的は例えそれを実現したとしても何も応えてくれません。ただ「沈黙」を守るだけの存在に向かう時、その道のりがあまりに孤立無援でたまに心が折れそうになる時があります。
 そういう時に、つくづく給与がきちんと支払われることはありがたいものだと感じることがあります。「労働にはそれに見合った報酬を与えなければならない」というのは法律上では遵守して当たり前なのかも知れません。しかし、それを当たり前に実行するためにも払われている犠牲があることを思えば、給与というものはただ漫然と受け取って良いものではないということを改めて認識させられます。

 このエントリーはこれから国立大学事務職員や国家公務員を目指す方々もご覧になるかも知れません。別に全員が全員、自分みたくくだらないことにダラダラ悩めとは言いませんが、ただ単に受け取れる額を知りたがるだけではなく、「給料を受け取る」ということが働く上でどういう意味を持つのかも、併せて考えてみることをお勧めいたします。

コメント ( 11 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
その他手当 (常連客)
2012-06-07 10:37:15
国立大学職員日記を楽しみにしております。また、色々と参考にさせていただいてます。
その他手当に毎月幅がありますが、時間外手当に幅が生じるのはわかるのですが、その他手当について詳しく教えていただけませんか。
自分の給与袋では考えられません。
某国立大学の技術職員をやってます。


 
 
 
Re:常連客さん (管理人)
2012-06-07 20:00:57
そういわれてみると手当金額が変動するのは珍しいかもしれませんね。自分の場合の手当変動要因は大体次のとおりです。

1.引越しや異動をしたため、通勤手当・住居手当の額が変化したもの
2.昇給や調整で基本給が変化したために、地域手当がそれに連動して変化したもの
3.寒冷地手当(11月~3月)が支給されて変化したもの
4.入試業務従事手当のように従事するたびに支給される手当によって変化したもの

大体こんな感じです。
 
 
 
国2よりは恵まれていますね (ちょび@国家公務員)
2012-06-07 21:43:54
国2よりはいいのかなというのが
正直な感想です。

私は今年の給与を概算で計算してみました。
参考にならないかもしれませんが見てください。
 
 
 
忘れておりました (ちょび@国家公務員)
2012-06-07 21:44:40
すみません、ブログのurlを忘れていました。
 
 
 
Re:ちょび@貧乏公務員さん (管理人)
2012-06-08 07:25:57
ブログを拝見させていただきました。

年収ベースだと確かに自分より低い数字になっていますが、ただ自分も「住居手当で30万円くらい」「寒冷地手当てで6万円くらい」と、実際には消費して手元に残らないものもありますし、また残業が結構多い部署にいるので、ちょびさんと同じ環境(さらに国家公務員なら給与引下げがなされていますので)なら案外ちょびさんと同じくらいの金額になるんじゃないかなと思います。

ここらへんは給与を受け取る人間の個別事情に左右されるので、給与受け取り額の比較というのはなかなか難しいですね。
 
 
 
ありがとうございます ( ちょび@貧乏国家公務員)
2012-06-10 09:27:58
見ていただいてありがとうございました。

極力消費を抑えて生きたいですね。

5月下旬に「国家公務員賃下げ違憲訴訟」が提訴されましたが
あとは司法の判断を待つしかないですね。
 
 
 
初めまして (某帝大施設系職員)
2012-06-16 15:08:35
こんにちは。今年から適用される(?)俸給表を探していたらここにたどり着きました。よろしくお願いします。

私は平成17年4月採用なので、給料とかは管理人さんのデータに結構近いです。

色々と分かりやすくまとめられていてすごいと思いました。

またちょくちょく見に来ます。
 
 
 
Re:某帝大施設系職員さん (管理人)
2012-06-16 21:57:24
応援のコメントをどうもありがとうございました。

>今年から適用される(?)俸給表

改定された平成24年度の俸給表については給与法の別表第一で確認することが出来ます。国立大学は給与引下げについては実施しているところとしていないところがありますが、人事院勧告に基づく俸給表・給与表の改定は多分全ての大学で実施していると思うので、常に給与法で確認できるはずです。たぶん。

【給与法】
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO095.html
 
 
 
ありがとうございます (某帝大施設系職員)
2012-06-17 12:51:12
リンク貼っていただき、ありがとうございます。

>改定された平成24年度の俸給表

ここに載っているのは平均7.8%の引き下げ前のものですね。引き下げ後の俸給表を探しているのですが、

http://www.soumu.go.jp/menu_hourei/s_houritsu.html

上記の総務省のWebサイトに載っているような引き下げ幅しか見つかりませんでした。まあ、大体の引き下げ幅は管理人さんが2月に書かれているもので分かりますが、ちょっと正確な数字を掴んでおきたいもので。
 
 
 
はじめまして。 (春から大学職員)
2013-03-31 02:31:42
はじめまして。春から新卒で国立大学の大学職員になる者です。色々と興味深い記事が多く、更新を楽しみにしています。
一つ質問なのですが、表中にある勤務成績はどのように評価されるのでしょうか?
 
 
 
Re:春から大学職員さん (管理人)
2013-03-31 14:02:50
明日から初出勤な訳ですね。初心を忘れずに頑張っていただきたいと思います。


>表中にある勤務成績はどのように評価されるのでしょうか?

勤務成績は、現在は「人事評価」というものに基づいて行われています。「人事評価」は期末・勤勉手当のためだけに行われる評価では無く、むしろ逆に、「人事評価」を行って、それを期末・勤勉手当の成績率や昇給の際の評価に使用する、という形態をとっています。

この「人事評価」について、詳しくは下記のエントリーで触れていますので、参照ください。

http://blog.goo.ne.jp/la_old_september/e/f0bc17bef14b8ed2a5da07b8181621fb


評価は最初の年からさっそく始まりますが、最初の内はあまり気にしない方が良いと思います。というのも、評価を気にかけすぎると失敗しないことばかり考えて、ろくに経験を積まないまま貴重な最初の数年を棒に振るからです。

これは個人的なアドバイスですが、最初の2~3年間はひたすら失敗して、ひたすら怒られまくってください。一度失敗しておけば、必ず次の時にその経験を生かしてより良い業務を行うことが可能になります。よく「他人に迷惑をかけたくないから」とできることだけしかしていない新人がいますが、絶対にやめてください。そうやって経験を積まないまま勤続年数が増え、もうそんな失敗をすることが許されないような年になってしまうと、今度は「それは私の仕事ではありません」と逃げまわる羽目になってしまいます。こうなるともう本人も周りも、それを直す手段はありません。これは双方にとってとても不幸なことです。「鉄は熱いうちに打て」というのは、本当に根拠があって残っている言葉なのだと自分は信じています。「春から大学職員さん」は新卒とのことで、新卒のメリットは「他人よりも失敗する機会と時間が多めに与えられていること」だと思います。精神的には決して楽ではありませんが、「失敗は必要なんだ」ということを決して忘れないでください。
 
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