ふわふわ気分で

舞台、シネマ、藤原竜也くん、長谷川博己くん、成河くんのことなど気ままに・・・

「タイタス・アンドロニカス」大人向・きれいな残虐劇

2006-05-06 | 演劇

「タイタス・アンドロニカス」5日マチネの感想です。
ネタバレありです。あしからず。


作者はシェイクスピア。ローマ帝国が舞台で殺戮が続く復讐劇です。
演出、蜷川幸雄。会場は彩の国さいたま芸術劇場。

開場すると、すでに舞台ではおけいこする人たちが数名いました。
なにやら楽しそうにお喋り。発声練習なんかもしていました。
めずらしいので、とりあえずパチリ。

どこやらの文化劇場と違って、血相変えたおねーさんが、とんできたりはしませんでした。よかった~

時計係(?)のおにーさんが「15分前」・・・「10分前」・・「5分前」と、アナウンスが続き、なんだか緊張感も高まってきます。
最初の場面に登場しない役者たちが、客席通路を通って出て行き。
彼らの衣装が巻き起こす風で、肌がちょっとあわ立つ感じがしました。
ドキドキです

最初のシーンのふたりがスタンバイして、
さあ、はじまるぞ。という気合が観客にも伝わってきます。

おにーさんの「そろそろ行くよ。用意はいいかい。行きます。」みたいな呼びかけで、始まりました。
正確な言葉は忘れてしまいましたが(声もステキでしたね
客も観客という役を与えられて、芝居が始まった気分でした。

         

舞台は白一色で、大きな白い狼像が据えられていました。
ローマ建国にちなんだ雌狼の像をまねて作られたそう。
狼に育てられた子供が、ローマ人の始まりだって。
写真は暗かったのでグレー狼なんだけど、ホントは真っ白できれいでした。

はじまりから、首はころがるは、立ち回りの刀の音が激しいわ、でいかにも肉食ヨーロッパ人芝居だと感心しました。
刀を持った方々が通路を走るたびに、通路ぎわ席で、ちょっと怖かったです。
シェイクスピアって私、恥ずかしながら、こんなに激しいとは知りませんでした。
この「タイタス・アンドロニカス」はシェイクスピア中で最も残虐な戯曲だそうです。なるほど・・・

主役の二人、吉田鋼太郎さん、麻実れいさん、迫力ありました。
お二人がゆるぎないので、安心して芝居を見てられるという感じですね。
タイタスの鋼太郎さん、さすがですね、貫禄ありました。
台詞回しの声が堂々として、ローマ軍の将軍にイメージぴったりでした。
タモーラの麻実さん、捕虜から皇后になるのですが、汚れた感じからどんどんきれいになって夫を操る声音もぞっとするきれいさでした。
ロングドレス姿にも見とれてしまいました。

エアロンの小栗旬くんは、若くてしなやかな黒い肢体が魅力的でした。
蛇か蔦のような黒い刺青が上半身にらせん状に描かれてます。
黒い背中に刺青って超セクシーです。
赤い衣装と眼つきの鋭さで、悪オーラ全開。
最初の、首に鎖を巻かれた登場シーンから、びっくりでした。
わたし、何度かエアロンに睨みつけられました。お~こわっ(でも、ちょっとうれしかった)
台詞回しも「間違いの喜劇」よりも、上手だったと思いました。
悪役でこれからも行くのかな、楽しみです。

白で統一された舞台は、蜷川幸雄さん特有の華麗な祝祭日空間が広がっていました。
最初の場は、華やかな白ですが、続く狩りの場面は、陰気な白へと変化します。
タイタスに不幸が始まる将来を暗示するような、白です。

ここでは、狼の像がなくなり、森の中の設定なのに白い蓮の葉が茎だっています。
きれいだけれど、白い蓮の葉の繁みはどこか不安感が漂います。
蓮の生えているのは本来、大地ではなく、濁った水面の底からの、せいかもしれませんね。

白い舞台に血の赤がぴんぱんに出てきますが、赤い糸で表現された血は、きれいで、リズミカルな美しさがありました。
また、衣装もほとんどの者が白のなかで、エアロンの悪を象徴する赤い衣装、タミーラの息子達の青と緑の衣装がアクセントになってきれいでした。

タミーラと息子達がタイタスに会って、悪巧みをする場面では、息子達が高下駄をはいていました。
白い打掛風ガウンで顔をかくしたり、鳥が羽根を広げたような仕草をしたり、楽しかったです。
衣装の青と緑の分量感もきれいで、絵画風、あるいはパントマイム風。
おしゃれで、かわいかったです。
蜷川さんアイデアいっぱいでしたね。

最後の場面で少年ルーシアスがエアロンの赤ん坊を抱いて叫ぶところでは、涙が出てきました。
次世代の子供たちに希望を託すという、蜷川さんのメッセージでしょうか。

         

劇場のロビーには、蓮の葉(まん中の丸いの)やよろいが展示されていました。
四角いガラスの棺(プラスティック?)に入っているのは、戦場で死んだタイタスの息子。
始めの場面で登場したものでした。

この日の、カーテンコールは客席総立ちのスタンディング・オベーションで、大感激でした。

血まみれの話だけど、さわやかさが残った舞台。
みなさまお疲れさまでした