栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

まだ行われていた偽装表示

2013-12-24 12:09:14 | 視点
 今年一番の話題は食材の「偽装表示」だろう。
まず範囲が広かった。
北から南、上から下まで皆偽装していたのだから、まさに偽装列島。
だが、偽装表示を認めて頭を下げたのは大手や老舗のみで、その他のところはそっと表示を芝エビからバナメイエビに替えていたのは見事というほかない。

 偽装されていたのは食材だけではない。
ありとあらゆるものが偽装されていたに違いないが、たまたま発覚したのが食材だったということだ。

 これだけニュースになった偽装表示だから、もう行っているところはないだろうと思ったが、
その考えは甘かった。

 つい最近(1週間前)、私自身が偽装現場を目にしてしまった。
全国ネットの某大手スーパーの惣菜売り場で、夕食のおかずを物色していた時のことで、時間は夕方5時30分頃。
惣菜売り場の従業員が店頭の唐揚げを1列、調理場に持ち帰ったので、その瞬間「おやっ」と感じた。
値引きシールを貼る時間にはまだ少し早いし、値引きシールは店頭で貼っている。
にもかかわらず、商品を1列調理場に持ち帰るという行動にいつもと違うものを感じた。

 廃棄処分にでもするのかと思い、それとなく様子を窺っていると、調理場の中で奇妙な行動をしだした。
その時、惣菜売り場には調理場の中外を含め従業員は女性1人しかいなかったが、
その女性が新しいパックを取り出して店頭から引き上げた唐揚げを移し替え出したのだ。

 なぜ、そんな面倒なことをするのか。どこかに持っていくつもりなのか、という疑念が過り、
さらに注視した。

 すると、移し替えた商品を再び店頭に並べたから、何がどう変わったのか見てみた。
なんとそのパックには「この商品は4時以降に作りました」というシールが貼られていたではないか。

 調理時間の偽装をしたのだ。
4時以降の調理なら、7時過ぎの値引き販売の対象から外れる。
その分、歩留まりがよくなる。
利益に直結する。
会社にとっては御の字かもしれない。
だが、こうした行為はいずれ発覚し、客離れを起こす。

 かの女性はこの一連の作業を平然と、慣れた手つきで行っていたから、
調理時間の偽装をしたのは今回が初めてではないだろう。
このスーパーの惣菜売り場ではこうした偽装が常態化していたということだ。

 目先の利益を追求した結果、致命的な打撃を受けたのが、今回の食材偽装だ。
それを目の当たりにしてもなお、こうしたことが平然と行われていることに驚いた。

 組織ぐるみとは思いたくないから、本社にメールで知らせ、内部調査をするように伝えた。
翌日「該当店舗の調査を厳格に行い、適正に対応いたして参ります」と返信メールが届いた。
後はその組織の問題である。
本当に「調査を厳格に行い、適正に対応」するかどうかは。
蟻穴にならないことを祈る。
きちんと対処すれば蟻穴にはならないだろうが、内部調査もせず、その場しのぎの消費者対応だったら
小さな蟻の穴から堤防が崩れることになる。