栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

技術革新はメーカーに何をもたらしたのか(3)~ソニーのジレンマ

2014-10-28 10:47:46 | 視点
ソニーのジレンマ

 スマホ市場の中で唯一売れているのがアップル製品。
iPhoneが支持されているのはユーザービリティー(使い勝手)のよさだが、その中にはカメラ性能のよさも含まれる。
 スマホやタブレットのカメラ性能がアップしたため、人々は日常撮りはカメラではなくスマホで行うようになっている。
その影響をモロに被ったのがコンパクトデジカメ(以下コンデジ)だ。
5インチ程度の小さな画面で見るならスマホやタブレットの内蔵カメラで写した画像でも十分きれいに見えるが、等倍かそれに近い拡大表示画像で見れば写真のブレやアラが目に付く。
以前、友人がタブレットで写した写真を送ってくれたがPC画面で見るとブレブレで全く見られなかった経験がある。
 高性能コンデジや一眼レフで写した写真とスマホやタブレットで写した写真にはそれぐらいの違いがあるのだが、スマホやタブレット画面でしか見ない人はその差を実感することがない。
差が実感できなければコンデジでなくてスマホでいいということになる。
スマホならいつも持ち出しているから、わざわざコンデジを持ち歩く必要もない。
かくしてコンデジが持ち出されることも、買われることもなくなり、カメラはスマホに取って代わられコンデジ市場は急激に縮小している。

 ところでiPhoneの写真性能向上に大きく貢献している企業はどこかご存知だろうか。
ソニーである。
ソニーはデジタルカメラの心臓部とも言えるイメージセンサーを作っており、キャノンを除く多くの企業にソニー製イメージセンサーを供給している。そしてアップルにも。
 ソニーの技術革新のお陰でイメージセンサーの性能はどんどん向上し、その結果、コンデジは一昔前のデジタル一眼レフと同程度の性能になっている。
 普通に考えればデジタル一眼レフの代わりにコンデジが使えるわけだから、コンデジの売れ行きがアップしてもよさそうだが、結果はよく知られているようにデジタルカメラは二極化どころか、コンデジの一人負けになっている。
そして本来コンデジが占めていた地位にスマホが座ったのだ。
 このことはカメラの位置付けが変わったことを意味する。
従来のハレの舞台に登場する記念撮影的な特別な存在から日常の記録撮影ツールへと変わり、カメラのカテゴリーも大きく変化した。
 撮影専用機だけでなく撮影機能を持ったモノまで広く「カメラ」と捉えられるようになってきたのだ。
もちろん従来からのカメラファンやプロはこうしたカテゴリーを認めはしないだろうが、カメラを日常の記録撮影ツールとしか捉えていない人々にとってはカテゴリーなどはどうでもいい話で、常時所持していて、ボタンを押せば写るスマホの方が便利なのは間違いないだろう。

 「スマホにコンデジ市場が食われている」
いま公然とこのことが語られている。
そしてその犯人はソニーに他ならない。
それでもコンデジ市場でソニーの一人勝ちならまだ納得行くだろうが、当のソニー自身もコンデジの売り上げが縮小しているのだから心中穏やかではないだろう。
 ソニーのジレンマはもう一つある。
アップル依存率のアップだ。
2013年度には約30%程度だったアップル向け出荷が2014年度には50%超とアップル依存度が高まっている。
これはアップルのお陰で稼いでいるとも言えるが、アップルのスマホ、タブレットの売り上げが減少したり、同社からの注文が減少すれば経営に影響を及ぼしかねないリスクも高まっているということだ。
 アップルに限らずスマホ市場全体で見ても、ソニーのイメージセンサーは世界市場で44%のシェア(2013年度)を確保している。
今後さらに70%にまで高めたいと同社では考えているようだが、すでに見たようにタブレット市場はいま「クラッシュ」しており、今後買い替え需要が起こるか、それともいままで現れては消えた多くの情報家電と同じ道を辿るのかがまだ見通せない。
 またスマホも先進国では成熟製品になり、成長率が鈍っている。
頼みは新興国需要だが、その市場で高性能センサー需要がソニーの希望通りあるだろうか。
 果たしてソニーの経営判断はプラスだったのか、それともマイナスなのか。
最悪の場合、自らの技術で自らの首を締めることになるが、そうならないことを祈るしかない。

ニコンの悩み



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崩壊するニッポン(3)~技術革新はメーカーに何をもたらしたのか(1)(2)

2014-10-22 16:31:45 | 視点
 一時、世界をリードした日本のメーカーが苦戦している。
特にコンシューマー(一般消費者)を相手にした「メード・イン・ジャパン」の商品が。
 苦戦の原因は新興国メーカーからの激しい追い上げが1つ。
もう一つは自らが開発した技術が自分の首を絞めている。
これは皮肉としか言いようがないが、歴史を振り返れば過去にも同じことが繰り返されている。
果たして「メード・イン・ジャパン」に未来はあるのだろうか--。

凋落著しいソニー

 「市場シェアや台数を追う規模拡大でなく、リスクを認識して収益性を追っていく」
 2015年3月期の連結業績予想を発表した席上、平井社長はこう語った。
そう、量より質、売上高より利益だ。
規模の拡大を追った企業は薄利多売傾向になる。
そして気が付けば栄華を極めた頂上から転落し、やがてひっそりと社名が消えて行き、人々の記憶からも消えていく。
 栄枯盛衰は世の常。驕れる者は久しからずは歴史の証明するところ

 今期最高益を出したトヨタの豊田章男社長は社長就任以降「いいクルマづくり」「ワクワク、ドキドキ」するクルマづくり、ということを何度も口にしている。
直近の決算会見でも「持続的成長、もっといいクルマづくり が一番の目的だ」と語り、規模の拡大を追うのではなく、品質や車の魅力を重視する姿勢を鮮明にするとともに、「再び成長拡大局面に入りつつある今こそ、実は危機的状況だ」と、気を引き締めている。
 そういえば、このところソニー製品に「ワクワク、ドキドキ」がなくなっている。

タブレット市場はクラッシュ

 世界最大の家電量販店「ベスト・バイ」のトップ、ヒューバート・ジョリーCEOは「タブレット市場は今はクラッシュしている」と7月30日のITニュースサイトのインタビューに応えている。
 「普及が急速に進んだため、驚くほどの普及率に達し、買い替え市場となった」が買い替えが進まず、成長は早くも鈍化しているというのだ。そしてスマホも成熟市場になり、買い替えに移っている、と。
 ただ、そういうスマホ市場にあってもアップルだけはまだ健闘している。
とはいえ、そのアップルでさえ出荷台数は前年減になっている。

 デジタル化は社会を大きく変化させたが、プロダクツの面から言えばリスクを大きくしたのも事実だ。
 多くの部品がジグソーパズルのピースのようになり、しかもそれらのピースはコモディティ(日用品)化され、一つひとつピースを埋めて行けば最終製品が出来上がるようになった。
 このことは2つのことを招いた

    (以下略)



 ☆全文は「まぐまぐ」内の下記「栗野的視点」ページから
  http://archive.mag2.com/0000138716/20140930115116000.html

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崩壊するニッポン(2)~壊れやすくなったデジタル製品(1)(2)(3)

2014-10-05 16:30:21 | 視点
毎回2008年に戻るPCの内蔵時計

 この頃よくモノが壊れる。昔は(アナログ製品時代はという意味)そんなことがなかった(少なかった)のにと思うが、最近のデジモノ(デジタル製品)は本当によく壊れる。
 まずビクターのDVD録画装置が壊れた。VHSビデオ装置と結び、昔VHSで録画していたものをDVDにダビングしようとしていたが、DVD装置が壊れたのでダビングどころかTV番組の録画もできなくなった。ビデオ装置は使えるがTVがデジタルになったので、結局観られない。
 お陰でTVをあまり見なくなったのは怪我の功名か。まあもともとレンタル店との付き合いもなかったので、DVD装置が壊れたからといってほとんど困ることはないし、新しい装置に買い換えもせず10年近くが経過している。そういえば、このDVD装置、一度修理に出した記憶がある。確か修理内容はコンデンサーの交換だった。

 相前後してCDプレーヤーが壊れた。恐らく結露が原因だろうと思うが、音飛びがするようになり、いまではCD部分は全く使えない。ただ、ラジオとテープの録音・再生の方は使えるので、CDの代わりにテープを聴いている。

 PCはOSが新しくなることもあるが、大体寿命は6,7年と考えて、それぐらいのサイクルで買い替えてきた。ところが、最近、立て続けにノートPCが壊れた。

 問題は後者のメーンPCの不調である。Windowsが起動しない。いや、全くダメというわけではなく、BIOSのチェック段階でストップし、その先に行かないのだ。
 で、どうしているかといえばF1キーを押してWindowsを起ち上げている。Windowsさえ起ち上がれば後はなにも問題ないのだが、PCを起動させる度にこの作業をしなければならない。
 しかもPCの内蔵時計が狂う。それも大幅に。大抵はこのPCの出荷日時と思われる「2008年6月11日」になるが、ある時など「2075年」になった。こんなに未来に進むとウイルス防止ソフトが「期限切れ」表示を出し、効かなくなる。内蔵時計を正確な時間に設定し直せば問題ないのだが、毎回この作業をするのは結構煩わしい。

 それにしても、なぜこんなことになるのか。原因は電池切れだ。といっても、バッテリーのことではない。ボタン電池。マザーボードのところに取り付けてあり、この電池が切れるとマザーボードが正確な時間を認識できなくなり誤作動を起こす。
 ひどい時は勝手に電源を入れてPCを起ち上げたり、電源を切ったりということも繰り返す

    (中 略)

メンテナンス部門の撤退・廃止

    (中 略)

高性能・複雑化で壊れやすく

    (以下略)



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