栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

小さな秋

2005-09-21 22:08:13 | 雑感
 暑い暑いと思っていたが、野辺には小さな秋がしっかり顔を出していた。
群生している彼岸花もきれいだが、このように1本、2本咲いている彼岸花に限りなき美しさを感じる。

撮影日:9月11日(衆議院選挙の投票の帰り道に撮影)
カメラ:ペンタックス*istDS

 彼岸花といえば赤を想像するが、彼岸花に白い花もあることは意外に知られていない。私自身、白い彼岸花を見たのはこの時が初めてだった。珍しいので思わずシャッターを切った。


撮影日:9月19日
カメラ:ニコンD50

中国にありそうでないもの。

2005-09-20 00:31:18 | 視点
中国市場攻略の秘訣は
マーケティング


 新しいものと古いものが入り交じった国ーーそれがある意味、中国の独特の魅力にもなっている。
 中国の中では最もハイセンスで流行の発信地であり、欲しいものは何でも手に入る上海の街も、一歩裏通りに入れば古い昔ながらの風景が見られるし、ちょっと郊外に出れば道路は舗装されてないし、上半身裸で仕事をし、昼時ともなると戸口に立って丼飯を食べている男達の姿が目に飛び込んでくる。

 だが、そんな風景を見たからといっても何も驚くことではない。ほんの10数年前までは日本の各地でごく当たり前に見られていた風景である。
 しかし、我々日本人は忘れっぽいのか、それともバブル前の日本は日本でないと思ってしまったのか、自分達の昔の姿を消し去りたいのか、あるいはそのいずれもなのかもしれないが、懐かしさとはほど遠い目で眺める人が多いのは残念だ。

 中国に対する見方は生産拠点として見るか消費マーケットとして見るかによって捕らえ方はまるで変わってくるが、今後はますます中国をマーケットとして見る見方が増えていくのは間違いないだろう。
 その場合、重要なのはターゲットをどこに設定するかである。多くの中小企業が市場で失敗するのはこのターゲット設定が出来てないからで、漠然とモノを作り、漠然とモノを売ろうとしている。
 その結果、「売れない」とこぼしているが、むしろ売れないのが当たり前で、売れた時は「たまたま売れた」だけで、「売った」わけではない。ところが、この自明の理を意外に理解していない。だから相変わらず市場の分析(マーケティング)をせずに漠然と商品を流しているのだ。

オートバイ生産大国の中国で
オートバイが売れない謎


 それはさておき、中国を見る時多くの人が戸惑うのは時代の最先端的なものがあるかと思えば、随分時代遅れのものがあることだけではない。アクセルを踏みながらブレーキをかけるような政策が随所に見られるからである。これでは判断に困る。評論家なら困ったというだけでいいが、現実のビジネスの社会には結果がつきまとう。判断ミス、情勢分析の誤まりは即企業に莫大な損害を与えることになるから怖い。その好例が自動2輪、オートバイである。

 タイやベトナムでは古くからオートバイが大活躍しているのはよく知られている通りだ。渋滞で動かない車列を縫って走るオートバイは重要な交通手段である。しかも、車に比べれば価格が比較にならないほど安い。全体の所得水準が低い国の国民が最初に手に入れる交通手段としてオートバイほどピッタリなものはないだろう。

 中国でもタイやベトナムと同じようにオートバイが売れる。そう、各メーカーが判断したとしても誤りではない。
 ところが案に相違して、中国にはオートバイはあってよさそうだが、実はないのだ。
 といって、中国でオートバイを生産していないのではない。むしろ逆で、中国はオートバイの生産大国である。にもかかわらず、中国国内ではほとんどオートバイを買うことができないのだ。いや、正確に言えば、買うことはできるが、買っても乗ることがほとんどできないのである。

 実際、北京や上海などの大都市でオートバイが走っているのを見かけた人は少ないはず。せいぜい見られるのは大都市の郊外か地方都市だが、それでもタイやベトナムで見られるような光景を見ることはできない。
 なぜなのか。それは政府がオートバイの新規登録を禁止しているからだ。
では、新車には乗れないのかというと、そうでもない。新車を買って乗れないことはないが、新規登録ができないのだ。つまり、政府がオートバイの総数規制をしていると考えれば分かりやすいだろう。
 例えば日本でも普通車を買えば車庫証明が必要になる。車庫証明が取れない車は登録できないから、実際には買えないことになる。それと一緒だ。

ナンバープレート費や駐車場費用など
維持費が高くつく中国の乗用車


 中国の場合はナンバープレートの新規発行を禁止しているので、どうしてもオートバイを買いたければ現存のナンバープレートを譲ってもらうしかない。となると、需要と供給の関係からナンバープレートが高値で売買されることになる。
 しかし、高値で手に入れたオートバイも来年から上海市内では走れない。というのは市当局が来年からオートバイの市内乗り入れを禁止したからである。しかも、こうした動きは上海に限らず中国主要都市で広がりつつある。

 それにしても上海や北京市内では車の交通量が増えて渋滞解消が大問題になっているのに、渋滞解消の切り札(?)ともいえるオートバイの市内乗り入れを禁止するのだから、一見矛盾した政策のような気がする。なぜ、中国当局はこのような政策を取るのか。
 理由は環境対策である。
改革開放政策の影響で沿岸部の経済は急発展したが、その陰で深刻な環境汚染に悩まされ、最初にやり玉に挙がったのがオートバイの排ガスというわけだ。
 すでに90年代から中国主要大都市での新規ナンバープレートの発給を中止しているが、今年になって規制をさらに強めている。
 ところが、その一方で中国はオートバイの生産大国である。つまり、現在、中国で生産しているオートバイはすべて輸出用というわけだ。自国で乗用を禁止しながら輸出をどんどんする。ちょっと妙な気もするが、それが現在の中国でもある。

 いずれにしろ、環境汚染と大都市における交通渋滞は非常に深刻で、この二つの解決が最大の課題になっている。
 特に上海市は市中心部の面積が狭い上に車が多いため、朝夕のラッシュ時は東京並みの渋滞だ。仮に車を買っても駐車場不足で自宅周辺に車を止める場所も少ないし、市内の駐車場も少ない。
 車両価格そのものは下がってきているため買いやすくなっているが、その一方で車両維持費が相変わらず高い。というのはオートバイと同じように乗用車の場合も高いナンバープレート費がかかるからだ。
 上海、北京市などの当局はナンバープレートの発給を毎月一定数に限定し、車の増加に歯止めをかけることで、排ガス規制をしようとしているのだ。しかし、国民の車所有意欲は増すばかりで、ほとんど効果を発揮していないというのが実状だ。

スクーター似の電気自転車が急増
背景に厳しい排ガス規制


 しかし、徹底した排ガス規制は市場に新しい産物ももたらしたようだ。
最近、中国でスクーターが急増しているのだ。オートバイは規制してもスクーターは別なのか、それとも渋滞緩和のため2輪車に対する規制を緩めたのかと思ったが、そうではなかった。
 実はスクーターと思ったのは電気(電動)自転車だったのだ。
外観はスクーターそっくりで、前カゴもあれば後の荷台には荷物入れまで付いている。どこから見ても日本で見かけるスクーターだが、注意してよく見ると、なんと自転車のペダルが付いているではないか。
そう、スクーターと見えたのは電気(電動)自転車で、いま、中国ではこの電気自転車が大流行なのだ。
 見るからに電気自転車と分かるものから、ペダル部分を外してしまいちょっと見た目には電気自転車と分からないものまで種類は様々だ。
 最近、価格が安いものなら1,800元前後(というから日本円で25,000~26,000円)まで下がったので非常に買いやすくなり、急激に普及しつつあるようだ。
 といっても彼らの収入に比べれば、決して安い買い物ではないが、乗用車は買えなくてもこれなら買える。しかも、便利だ。おまけに政府からとやかく言われはしない。というわけで、周辺都市では自転車を電気自転車に乗り換える人が急増しているというわけだ。

 環境問題でもう一つ注目されているのが電気自動車だ。中国では08年の北京オリンピックに向けて電気自動車の実用化に向けた動きが急ピッチで進んでいるが、電気自動車の実用化では中国が一歩先を行くかもしれない。
 このように遅れた部分と最先端が混在している中国だが、今後、中国を見る上で「環境」がキーワードの一つになるのは間違いなさそうだ。


リエゾン九州の考え方

2005-09-14 11:27:51 | 視点
 「リエゾン九州」は九州の中小企業・ベンチャー企業の技術・商品とマーケットとの懸け橋(リエゾン)をすることを通じて九州経済の活性化を目指して活動しているボランティア組織である。
 日常活動は毎月第3土曜日の午後に、誰でも自由参加できる例会という名の会合(毎回25、26名参加)を開いている。
 内容は勉強会と企業発表の2本立てで、企業発表では開発中の製品に対するアドバイスや、商品の販路開拓に対するアドバイス、商品の完成度をより高めるためのアドバイスを求める内容になっている。
 いずれの場合も参加者がユーザー、消費者の視点から、ブレーンストーミング的に意見を出し合うのが特徴だ。

 ところで先頃、ある方からリエゾン九州の知恵を貸してもらえないだろうかという以下のようなメールが届いた。
 リエゾン九州の例会に参加したことがある人でも同会の目的や、取り組み方法をよく理解していない人もいるので、この機会にリエゾン九州の考え方・取り組み方を、上記メールに対する私の返事を載せることで紹介しておきたい。

-------------届いたメール-----------------------
私の知人の会社がクールビズに向けての商品開発をされておられます。
来年に向けて色んな角度から検討するということで、
既に商品も試作品を作りテストをしておられます。

出来れば多くの方の知恵を借りたいということで私にも相談が来ております。

栗野さん自身が新しいものへの関心や技術的にも、
営業的にも憧憬も深くておられますし
出来ればリエゾンさんのお力もお借りできればと思ったり致しております。
このことは先方には全くお話しをしていないことで、
そのようなことが可能であれば持ちかけてみたいとも思います。

ご検討賜りますれば幸甚です。

まずはお尋ねまで。
-------------------------------------------------------------

 以下は私が送った返事です。


 おはようございます。
今日も残暑厳しい1日になりそうですね。

> 私の知人の会社がクールビズに向けての商品開発を
> されておられます。

> 出来れば多くの方の知恵を借りたいということで
> 私にも相談が来ております。

> 出来ればリエゾンさんのお力もお借りできればと思ったり致しております。

 もともとこのようなことをするためにリエゾンを設立したのですから喜んでお手
伝いします。
 そのための方法としては次の4通りがあります。

1.例会方式
   リエゾンの例会で企業発表し、その場で皆が知恵を出し合う。
  例会で経験されているパターンです。
   時間はたっぷりとっているつもりですが、それでも問題を解決するためには
  時間は少な過ぎるかもわかりません。

2.プロジェクト方式
   当初からメンバーを絞って、そのためのプロジェクトチームを発足させ、
  頻繁に意見交換・議論をし、企画・開発へと進む。
   この方式の場合はメンバーの時間を拘束することになるので最低限の実費
  負担が必要になりますし、契約に基づくビジネスとして取り組みます。

3.Mix方式
   例会での発表とプロジェクト方式を組み合わせた形態になります。
  実はリエゾン九州を発足させたときのやり方がこの方法です。
  ボランティア部分とビジネス部分の線引きをし、最初の話し合いで
  ここまではボランティアでしますが、これ以上になるとフィーが派生すると
  いうことをきちんと双方が納得し取り組む。
   例えて言うとシェアウェアソフトやソフトの体験版の利用みたいなものです。
  気に入ってこれ以上使いたいときは使用料を払ってくださいという。

4.例会での発表を継続利用
   例会で発表し意見交換しアドバイスをもらうだけで結構ヒントになったと
  言われる方もいます。
  ただ商品開発や販路開拓では段階、段階で、あるいは非連続の連続的に
  知恵を借りたいという場面が出てくると思います。
  そのために例会での企業発表を何度も利用するという方法です。
  この方法の利点は経費がほとんどかからないことです。
  (非会員の企業発表の場合は、参加費1,000円のほかに発表費3,000円が必要)


「自動車王国」・中国の悩みは世界最多の交通事故

2005-09-12 00:44:06 | 視点
横断歩道でも車優先

 中国は「自動車王国」である。
と書くと、自転車の間違いではないかと感じる人がいるかもしれないが、紛れもなく中国は「自動車王国」なのだ。それも随分昔から。少なくとも私が最初に中国を訪れた1978年以降はまさに自動車が王様で、「そこ除けそこ除け自動車が通る」とばかりに自動車が最も威張っていた。

 もちろん1980年前後の主役は自転車で、朝夕の通勤時ともなると道路に押し寄せる銀輪の波が中国の風物詩であり、美しくさえあった。
 しかし、そんな時でさえ自動車は威張っていた。うるさいぐらいにクラクションを鳴らし続け、信号が赤でもお構いなしにスピードを緩めずに突っ走るから乗っているこちらの方がヒヤヒヤしたものだ。
その頃からの習慣(?)か、中国の道路はいまでも車優先である。

 中国に行って一番怖いのが信号を渡る時である。
日本と違って車は右側通行だから、右左折して来る車の感覚がうまくつかめない。その上横断歩道の手前で一時停止して歩行者が通り過ぎるのを待つなどということがなく、「そこのけそこのけ車が通る」とばかりに突っ込んでくるから危なくて仕方ない。
 一度などマイクロバスが私の胸スレスレに通り過ぎていった時には本当に肝を冷やした。
ボーとして横断歩道を渡っていると間違いなく事故に遭う。日本では携帯のメールを見ながらノンビリと道路を渡る若者が多いが、彼らはとても中国では歩けないだろ。

交通事故死亡者数は年間10万4000人
世界ワーストワンの不名誉な記録


 2000年以降、中国では乗用車が激増している。
上海では写真を撮ると必ず車が写っている。歴史的な建造物や古い裏通りを撮影したい時には、この車が邪魔になる。あの車が通りすぎてから撮ろうと待っていたらとても写真など撮れない。それぐらい車が増えている。
 しかも、上海の車は乗用車もタクシーもスピードを出す。市内が渋滞するからか、それとも少しでも早く目的地に着き、次の客を乗せようと考えるのか分からないが、高速道路ではビュンビュン飛ばす。さらに、前後左右の車間距離を詰めて走るものだから、私などはタクシーに乗ると生きた心地がしない。急がなくていいから、安全運転で頼むと言いたいのだが・・・。

 こんな運転の仕方で事故が起きないはずはないので、03年の交通事故死亡者数は10万4000人に上っている(中国衛生部の発表)。自動車1,000台につき2人、1日285人が交通事故で亡くなっていることになる。もちろん世界ワーストワンだ。
 こんな不名誉な記録を保持しているのは恥以外の何ものでもないとばかりに、今年5月、中国政府がやっと重い腰を上げた。「道路交通安全法」を施行し、厳しい罰則を課して事故の抑制に乗り出したのだ。
 しかし、まだ期待できるほどの効果は上がってない。ただ中国は日に日に進歩しており、交通ルールやマナーが守られるようになる日もそう遠いことではないだろう。

米国、日本、ドイツに次ぎ
自動車生産台数は世界4位


 中国の乗用車保有台数は急増しているが、同じように自動車生産台数も急増している。04年の自動車生産台数は507万台で、フランスを抜き米国、日本、ドイツに次いで世界4位である。05年上半期(1~6月)の生産台数は281万台、販売台数は279万。
今年はドイツを抜いて世界3位になるに違いない。
 もちろん国内販売台数の大半は北京、上海などの大都市に集中しているから、上海は朝夕のラッシュ時は大渋滞。いまや渋滞解消が最大の自動車対策になっている。
 30年近く昔、中国でよく見かけた乗用車は国産VWとトヨタ自動車。いまもタクシーは圧倒的に国産VWだが、一時のVW・サンタナ、それも車内外とも汚れがこびりついたガタガタの中古車がきれいなサンタナ2000に替わっている。とはいえ地方都市に行けばまだタクシーは古いサンタナが幅をきかせている。
 タクシー以外の乗用車ではVW・サンタナはABS、エアバックが付いてないのが嫌われ台数は減少している。代わりにクラスアップのVW・パサートが売れているようだ。

 乗用車で最も人気があるのはBMW。不動産バブル長者、成功したベンチャー企業家は皆BMWに乗っている。
 上海でよく見かける外国車はベンツ、BMW、アウディ、韓国の現代。日本車では広州ホンダ、トヨタ、日産。
 最近、伸びているのが韓国・現代の車で、月間シェアトップになったこともあるほど。人気の秘密は豪華な内装、高級感を感じさせる外観だ。